吹奏楽×恋愛小説 「クレッシェンド・ラヴ」

13 2021/04/03 00:29

こんにちは!!ミスチル大好き女子中学生リカリンです。

この度は、デクレッシェンド・ラヴを手に取っていただき、(手に取っては無いか...)誠にありがとうございます。

このお話は、世界で一番ノンフィクションに近いフィクションです。

中学生、唯ちゃんの、恋、音楽、成長のお話です。

それではどうぞ!

吹奏楽は突然に


自分の立っている床が、グラグラ揺れるほどの大音量。形、音色も様々な楽器たちが織り成す、美しいメロディー。

すごい、これが吹奏楽部。

私も、やってみたい。

ここに入って、演奏したい。

「あおはちゃん!音楽室に行こう!」

「え、良いよ。私、もう吹部入る予定だし。唯、一人で行ってきなよ。」

「えー、どうして⁉️あおはちゃん、吹奏楽部のことなんでもおしえてくれるって行ったじゃん!」

「一人で行きなよー。あんた、『一人じゃ怖くて行けない!』ってタイプじゃないでしょ。」

「えー、でも、あおはちゃんは小学校でも吹奏楽部だったでしょ⁉️頼れるのはあおはちゃんしかいないの!」

「!?んー、まあ唯がどうしてもついてきてほしいって言うなら、行ってやらんでもないけどさ。」

「ホント⁉️ほいじゃ、レッツラゴー❗」

「え?ちょ、待ってよ!腕いたい‼️引っ張んないで💢」

小学校からの親友、あおはちゃんは、小学校のころから吹奏楽部でトランペットを吹いていた。

いつもは明るくて、はっちゃけた性格のあおはちゃんだけど、トランペットを吹くときは、表情が変わる。

いや、表情だけじゃない。中身も凄く変わる。

吹奏楽部の発表会、あおはちゃんは、同じトランペットの子にファーストをとられて、大泣きしていた。

いっつも泣いてばかりの私を慰めてくれてたあおはちゃんだけど、このときばかりは、私が背中をさすってあげた。

あおはちゃんが泣いて、びっくりしたのもあるけど、私はそのとき、衝撃を受けた。

こんなにいっぱい涙を流すほど、あおはちゃんは真剣だった。全力だった。

私に、そんなものある?私に、全力で挑んで、泣き叫べるものがこの世にあるの?

ない。でも、ほしいな。

中学生になったら、できるのかな。そんな素敵なにかが。

吹奏楽部に入れば...?

私のなかで、生まれて初めての、「憧れ」が芽生えた瞬間だった。

たくさんの、初めて!


音楽室の扉を開けると、入ってくる者を押し返すほどの、それでいて、包み込むような音色が私の体を駆け抜けた。

あ、これ、前やってたドラマの主題歌だ!

そう思い、あおはちゃんのほうを見ると、彼女はうっとりと、その音色に聞き入っていた。

まるで、帰ってきた、というような表情だった。

「フフ、あおはちゃん、嬉しそう!」

「...うん。嬉しい。なんか、落ち着く。」

あおはちゃんは、珍しく素直な感想を述べた。

素直なあおはちゃん、レアだなあ(笑)

「新入生の皆さん、こんにちは。吹奏楽部、部長の新川です。今の曲は、ドラマ、『タダコイ』の主題歌、『いつまでも君に』です。吹奏楽部では、JPOP、クラシックなど、様々な曲を演奏します。興味があれば、是非、入部してみてください!このあとは、それぞれの楽器を体験してもらいます。部員の指示に従って、指定された部屋へ移動してください。」

部長さんが挨拶をしたあと、私たちは中野先輩という、副部長さんについていった。

「あっ!見てみて!あおはちゃん、トランペットあるよ!」

「そうだね。」

「ねね、あの黒い楽器なぁに?」

「あれはクラリネット」

「あっ、あれ見たことあるよ‼️ほら、こーうやってシュポシュポ動かすやつ!」

「トロンボーンね」

「あの大きい楽器はなに?」

「チューバだよ」

「あの横の一回り小さいのもチューバ?」

「あれはユーフォニウム」

「なにそれ、UFO ?」

「シーッ!ほら、ついたみたいだよ。」

このときの私は、知らなかった。この扉の向こうに、私の青春の全てが詰まっていることを。

はじめまして、カタツムリ


部屋に入ると、そこにはなんと...まさかのカタツムリ。

これ、見たことある。カタツムリみたいな、ぐるぐるのやつだ。

「こんにちは、ようこそホルンパートへ」

「こんにちは。よろしくお願いします。」

「こっこここんにちは...」

私は、緊張して舌が回らなかった。

「どうぞ、ここに座って」

優しい笑顔。女神みたいだ、と思った。

先輩。この人が私たちの先輩になるひと。

「はじめまして。ホルンパート、パートリーダーの小野はるかです。二人は..楽器経験とかあるの?」

「えとっ、私は無いです...」

「私は、小学校でトランペット吹いてました。」

「おー、トランペット吹いてたなら、ホルンいけるんじゃない?ささ、マウスピースをどうぞ。これが、ホルンのマウスピース。ここに唇を当てて、唇を振動させて、音をならすの。やってみて」

「ヴーーーーー」

すごい、あおはちゃん音が出てる。

「唯ちゃんも、どうぞ。」

「ぷスッ、スーーーーーー」

おっ、音がでない...

「あはは、最初はみんなそうだよ。唇にしっかり当てて、軽く口を閉じる。それから、ぶどうの種を出すイメージで、もう一回やってみて。」

口を軽く閉じて、ぶどうの種を出す...

「ヴーーーーーーーーー」

「おっ!すごいすごい、音出たね!その調子、その調子!」

すごい!音が出た‼️

もしかして私、すごい才能ある感じ⁉️(笑)

「次は、楽器を持って、音を出してみようか。このベルのとこに、手を突っ込んで..そうそう...」

「ターーーーーーー」

「すごい!唯ちゃん、音でたね!」

「すごいじゃん、唯!私、初めてホルン吹いたときは音でなかったよ。」

あおはちゃんとはるか先輩に誉められて、私は嬉しくなった。

私、ホルンやってみようかなぁ。

そんなことを考えていた、そのとき。

ガラガラッ

扉が開いて、男の人が入ってきた。

「ホルン、これ、消毒液と、トイレットペーパーです」

私がその人をじっと見つめると、目があった。

「どうも~。吹奏楽部の顧問の野村義明です。男だけど吹奏楽部の顧問やってます」

「どっ、どうも...」

「んー、なんか変質者を見るような目で見んといて。」

私は最初、それが冗談だとわからず、硬直していた。

すると、先輩が笑いだして、

「もー、先生、一年生をいじめないでください(笑)」

と言った。

すると、先輩はとんでもないことを言い出した。

「あっ、野村先生、この唯ちゃん、初めてなのにすごく吹けるんですよ!聞いてください!」

えっ!?この先生の前で⁉️

「へー、すごいな。聞いてみたい。」

えー...そんな...ハードル上げないでよ...

困ったけど、二人の期待の眼差しに耐えきれず、思いきって吹いてみることにした。

お腹に空気をためて...

「パウッ!パパパパーーーーー!」

なに今の音⁉️

ゾウの鳴き声が、部屋中に響き渡った。

どうしよう、音はずしちゃった...

どうしよう、かくなるうえは、かくなるうえは...

「ぞっゾウさんの鳴き真似!です‼️」

いった直後に、もう後悔。ああ、しくじった。なに、ゾウさんって。

イヤな沈黙が流れたあと、誰かが大声で、うわははっ!と笑った。

野村先生だった。

「そうかそうか、ゾウさんの鳴き真似かぁ。あはは、そうか。うんうん。面白い。おとなしい子かと思ったけど、案外面白いやつなんだな。

そんだけの音量が出せたら、練習すればもっときっとうまくなるよ。」

そういって、私を慰めてくれた。

さっきまでずっと無表情だったのに、私のゾウさんで、急に笑いだした。

変な先生だな、と思った。

笑った顔が、ちょっぴりかわいかった。

素敵な楽器と、変で、ちょっとかわいい先生


「楽しかったね~。」

「うん。」

「あおはちゃんは、やっぱり、変わらずトランペット?」

「うん。第一希望はね。唯は?」

「私は...ホルン、かな。あの、カタツムリの。」

「ふーん、ホルンかぁ。いいんじゃない?唯、上手かったし。てか、ホルンで会った顧問の野村先生、面白かったね。」

「うん。かわいかった。」

「え⁉️かわいい?」

「かわいかったじゃん。笑った顔が。」

「うーん、やっぱ唯は独特な感性の持ち主だわ。」

「そうかな?」

今日は、楽しかったな。

素敵な楽器に出会えて。

素敵な...笑顔の人に出会えて。

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その他2021/04/03 00:29:01 [通報] [非表示] フォローする
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1: 1コメさん 2021/04/03 03:49:52 通報 非表示

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2: 2コメさん 2021/04/03 13:20:31 通報 非表示

素敵ですね!心理描写が細かくて、素敵です。登場人物の表情や、仕草が目に浮かんで、とてもよくできた文章だと思います。


3: 3コメさん 2021/04/19 16:35:09 通報 非表示

面白い🤣クラリネット吹いてます!


>>3
ありがとうございます!

クラリネット吹いてらっしゃるんですね!


5: 5コメさん 2021/05/20 21:24:15 通報 非表示

面白そ。続編希望!


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