吹奏楽×恋愛小説 「クレッシェンド・ラヴ」
こんにちは!!ミスチル大好き女子中学生リカリンです。
この度は、デクレッシェンド・ラヴを手に取っていただき、(手に取っては無いか...)誠にありがとうございます。
このお話は、世界で一番ノンフィクションに近いフィクションです。
中学生、唯ちゃんの、恋、音楽、成長のお話です。
それではどうぞ!
吹奏楽は突然に
自分の立っている床が、グラグラ揺れるほどの大音量。形、音色も様々な楽器たちが織り成す、美しいメロディー。
すごい、これが吹奏楽部。
私も、やってみたい。
ここに入って、演奏したい。
「あおはちゃん!音楽室に行こう!」
「え、良いよ。私、もう吹部入る予定だし。唯、一人で行ってきなよ。」
「えー、どうして⁉️あおはちゃん、吹奏楽部のことなんでもおしえてくれるって行ったじゃん!」
「一人で行きなよー。あんた、『一人じゃ怖くて行けない!』ってタイプじゃないでしょ。」
「えー、でも、あおはちゃんは小学校でも吹奏楽部だったでしょ⁉️頼れるのはあおはちゃんしかいないの!」
「!?んー、まあ唯がどうしてもついてきてほしいって言うなら、行ってやらんでもないけどさ。」
「ホント⁉️ほいじゃ、レッツラゴー❗」
「え?ちょ、待ってよ!腕いたい‼️引っ張んないで💢」
小学校からの親友、あおはちゃんは、小学校のころから吹奏楽部でトランペットを吹いていた。
いつもは明るくて、はっちゃけた性格のあおはちゃんだけど、トランペットを吹くときは、表情が変わる。
いや、表情だけじゃない。中身も凄く変わる。
吹奏楽部の発表会、あおはちゃんは、同じトランペットの子にファーストをとられて、大泣きしていた。
いっつも泣いてばかりの私を慰めてくれてたあおはちゃんだけど、このときばかりは、私が背中をさすってあげた。
あおはちゃんが泣いて、びっくりしたのもあるけど、私はそのとき、衝撃を受けた。
こんなにいっぱい涙を流すほど、あおはちゃんは真剣だった。全力だった。
私に、そんなものある?私に、全力で挑んで、泣き叫べるものがこの世にあるの?
ない。でも、ほしいな。
中学生になったら、できるのかな。そんな素敵なにかが。
吹奏楽部に入れば...?
私のなかで、生まれて初めての、「憧れ」が芽生えた瞬間だった。
たくさんの、初めて!
音楽室の扉を開けると、入ってくる者を押し返すほどの、それでいて、包み込むような音色が私の体を駆け抜けた。
あ、これ、前やってたドラマの主題歌だ!
そう思い、あおはちゃんのほうを見ると、彼女はうっとりと、その音色に聞き入っていた。
まるで、帰ってきた、というような表情だった。
「フフ、あおはちゃん、嬉しそう!」
「...うん。嬉しい。なんか、落ち着く。」
あおはちゃんは、珍しく素直な感想を述べた。
素直なあおはちゃん、レアだなあ(笑)
「新入生の皆さん、こんにちは。吹奏楽部、部長の新川です。今の曲は、ドラマ、『タダコイ』の主題歌、『いつまでも君に』です。吹奏楽部では、JPOP、クラシックなど、様々な曲を演奏します。興味があれば、是非、入部してみてください!このあとは、それぞれの楽器を体験してもらいます。部員の指示に従って、指定された部屋へ移動してください。」
部長さんが挨拶をしたあと、私たちは中野先輩という、副部長さんについていった。
「あっ!見てみて!あおはちゃん、トランペットあるよ!」
「そうだね。」
「ねね、あの黒い楽器なぁに?」
「あれはクラリネット」
「あっ、あれ見たことあるよ‼️ほら、こーうやってシュポシュポ動かすやつ!」
「トロンボーンね」
「あの大きい楽器はなに?」
「チューバだよ」
「あの横の一回り小さいのもチューバ?」
「あれはユーフォニウム」
「なにそれ、UFO ?」
「シーッ!ほら、ついたみたいだよ。」
このときの私は、知らなかった。この扉の向こうに、私の青春の全てが詰まっていることを。
はじめまして、カタツムリ
部屋に入ると、そこにはなんと...まさかのカタツムリ。
これ、見たことある。カタツムリみたいな、ぐるぐるのやつだ。
「こんにちは、ようこそホルンパートへ」
「こんにちは。よろしくお願いします。」
「こっこここんにちは...」
私は、緊張して舌が回らなかった。
「どうぞ、ここに座って」
優しい笑顔。女神みたいだ、と思った。
先輩。この人が私たちの先輩になるひと。
「はじめまして。ホルンパート、パートリーダーの小野はるかです。二人は..楽器経験とかあるの?」
「えとっ、私は無いです...」
「私は、小学校でトランペット吹いてました。」
「おー、トランペット吹いてたなら、ホルンいけるんじゃない?ささ、マウスピースをどうぞ。これが、ホルンのマウスピース。ここに唇を当てて、唇を振動させて、音をならすの。やってみて」
「ヴーーーーー」
すごい、あおはちゃん音が出てる。
「唯ちゃんも、どうぞ。」
「ぷスッ、スーーーーーー」
おっ、音がでない...
「あはは、最初はみんなそうだよ。唇にしっかり当てて、軽く口を閉じる。それから、ぶどうの種を出すイメージで、もう一回やってみて。」
口を軽く閉じて、ぶどうの種を出す...
「ヴーーーーーーーーー」
「おっ!すごいすごい、音出たね!その調子、その調子!」
すごい!音が出た‼️
もしかして私、すごい才能ある感じ⁉️(笑)
「次は、楽器を持って、音を出してみようか。このベルのとこに、手を突っ込んで..そうそう...」
「ターーーーーーー」
「すごい!唯ちゃん、音でたね!」
「すごいじゃん、唯!私、初めてホルン吹いたときは音でなかったよ。」
あおはちゃんとはるか先輩に誉められて、私は嬉しくなった。
私、ホルンやってみようかなぁ。
そんなことを考えていた、そのとき。
ガラガラッ
扉が開いて、男の人が入ってきた。
「ホルン、これ、消毒液と、トイレットペーパーです」
私がその人をじっと見つめると、目があった。
「どうも~。吹奏楽部の顧問の野村義明です。男だけど吹奏楽部の顧問やってます」
「どっ、どうも...」
「んー、なんか変質者を見るような目で見んといて。」
私は最初、それが冗談だとわからず、硬直していた。
すると、先輩が笑いだして、
「もー、先生、一年生をいじめないでください(笑)」
と言った。
すると、先輩はとんでもないことを言い出した。
「あっ、野村先生、この唯ちゃん、初めてなのにすごく吹けるんですよ!聞いてください!」
えっ!?この先生の前で⁉️
「へー、すごいな。聞いてみたい。」
えー...そんな...ハードル上げないでよ...
困ったけど、二人の期待の眼差しに耐えきれず、思いきって吹いてみることにした。
お腹に空気をためて...
「パウッ!パパパパーーーーー!」
なに今の音⁉️
ゾウの鳴き声が、部屋中に響き渡った。
どうしよう、音はずしちゃった...
どうしよう、かくなるうえは、かくなるうえは...
「ぞっゾウさんの鳴き真似!です‼️」
いった直後に、もう後悔。ああ、しくじった。なに、ゾウさんって。
イヤな沈黙が流れたあと、誰かが大声で、うわははっ!と笑った。
野村先生だった。
「そうかそうか、ゾウさんの鳴き真似かぁ。あはは、そうか。うんうん。面白い。おとなしい子かと思ったけど、案外面白いやつなんだな。
そんだけの音量が出せたら、練習すればもっときっとうまくなるよ。」
そういって、私を慰めてくれた。
さっきまでずっと無表情だったのに、私のゾウさんで、急に笑いだした。
変な先生だな、と思った。
笑った顔が、ちょっぴりかわいかった。
素敵な楽器と、変で、ちょっとかわいい先生
「楽しかったね~。」
「うん。」
「あおはちゃんは、やっぱり、変わらずトランペット?」
「うん。第一希望はね。唯は?」
「私は...ホルン、かな。あの、カタツムリの。」
「ふーん、ホルンかぁ。いいんじゃない?唯、上手かったし。てか、ホルンで会った顧問の野村先生、面白かったね。」
「うん。かわいかった。」
「え⁉️かわいい?」
「かわいかったじゃん。笑った顔が。」
「うーん、やっぱ唯は独特な感性の持ち主だわ。」
「そうかな?」
今日は、楽しかったな。
素敵な楽器に出会えて。
素敵な...笑顔の人に出会えて。
素敵ですね!心理描写が細かくて、素敵です。登場人物の表情や、仕草が目に浮かんで、とてもよくできた文章だと思います。
>>3
ありがとうございます!
クラリネット吹いてらっしゃるんですね!