ELGAMA #4 エルガマ辞典
レイスの前には、燃え上がる村があった。
逃げ惑う人々、親もいない…レイスは孤独だ…
誰もいない、暗い空間にレイスはいた。
目の前に、両親が微笑む姿が現れた。
手を触れようとして手を伸ばすと、2人は霞となって消えてしまった。
目を開ける。
レイスは冷たい床に横たわっていた。
レイスは少しの間状況を理解できなかった。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
「なんだここは…知ってる場所じゃなさそうだけど…」
外からの陽を完全に拒絶したこの空間は、とても耐えられるものではないほど寒い。
体温を逃がさないようにゆっくりとした足取りで歩き始める。
だが、その作戦も水の泡。
その空間は、突如氷に覆われたよう寒くなってゆく。
足が震え、歯ががちがちと音を立て始めた。
視界も歪んでいく。
歩くのに疲れ、レイスは壁にもたれた。
そのまま休もうとずるずると背中を壁に擦りながら地面にへたり込むと、果てしなく続いている空間の先で、(どうやら洞窟のようだ。)光が揺れていた。
その光はこちらにやってくる。
宙に浮いているのかと思っていたが、その光は地面を這っていた。
「な、なんだこいつ…」
だが、その光(よく見ると生物のようだ)はレイスの目の前を歩いて行った。
なんとなくその生物は一つの場所に向かっているような気がした。
レイスはもう一度立ち上がると、生物の後をつけて進んだ。
10分ほど進んだだろうか。
遠くに光が見え始めた。
「もう少しだ。」
そこでレイスは走り出した。
外に出た瞬間、目の前が真っ白になった。
目の前が見えるようになった時に広がった光景に、レイスは圧倒された。
そこには、果てしなく続く草原、大きな森林、そして、遠くにはかろうじて建造物があるのが見えた。
胸がドキドキするのがわかった。
レイスにとっては久しぶりの平和な世界だったのだ。
草の香り、土の香り、花の香り、それら全てが、レイスにとっては幸せの香りだった。
先程のプレク村のように、辺り一面焦げ臭くなく、平和だった。
何気なくポケットに手を入れると(少し寒いのもあったかもしれない)、なにか固いものが入っているのが分かった。
「なんだこれ。」
それは本のようなものだった。
表紙には、「エルガマ辞典」と書いていた。
5話↓