ELGAMA #17 ルミアナ編 #5
朝早く、エリントは外の騒がしさで目が覚めた。
「なんだなんだ?こっちはぐっすり寝てるってのに…」
毒づきながら窓の外を見たエリントは目を疑った。
外には、逃げ回る人々がいた。
________何かに怯えている…ということはエンペラント•スケーラーが来たのか?
エリントはそう直感した。
「起きろ!レイス!」
エリントは寝ているレイスの顔を思いっきり張った。
「痛っ!」
レイスは頬を押さえて飛び起きた。
そして、訳がわからない様子でエリントの顔を凝視した。
「エンペラント•スケーラーが来たみたいだ。逃げるぞ。」
「えっ?ここにも来たの?」
エリントは緊張した面持ちでコクリと頷いた。
二人は宿の階段を転げ落ちながら出口へ向かった。
出口には、受付の人が立っていた。
「何事なんですか?」
「あ、ああ、どうやらエンペラント•スケーラーが来たみたいでして…」
「やっぱりか…」
道に出て見ると、町はかなり荒れていた。
店や家はなぎ倒され、人々はパニックだった。
「こりゃあ大変だぞ…」
すると、背後から大きな騒音が聞こえた。
その音はだんだんと二人に近づいて来る。
恐る恐る後ろを向くと、ちょうど地面が盛り上がってできた波が迫ってくるところだった。
「危ない!」
エリントはレイスに飛びかかり、通路脇に転がり込んだ。
「危ねえな…あんなに強い風の光雑法は見たことねえ…」
「え?あれが風なの!?」
すると、崩れた道の影から、人影が現れた。
黄色い短髪の女性だ。
「エンペラント•スケーラーに女性なんかいたっけな。」
エリントが言った。
「お前、やけに強いな、なんて名前だ。」
女性は黙ったままだった。
と思うと、無表情のまま話しだした。
「…ミア•アリス•マーガレット。」
その声が聞こえた瞬間、エリントの顔は真っ青になった。
「ミア•アリス•マーガレット、い、今そう言ったよな?」
「何回も言わせないで。」
ミアは無表情の顔で冷たく言い放った。
ミア•アリス•マーガレット________レイスはこの名前をどこかで聞いたことがあった。
________ミア、そうだ、ミアはプレク村人だ。
「マジかよ…」
エリントは頭を抱えた。
「どうしたの、エリント。」
「どうしたもなにも、アイツは今、名前を全て名乗った!エンペラント•スケーラー内では位が高くないと全て名前を名乗れない、ファースト、ミドル、ラストネームを言うにはよっぽど強かないとダメなんだ!俺は、フデレスト•エリントまでしか名乗れないんだ…」
「と、言うことは…」
レイスは息を呑んだ。
「俺よりも、強いってことだ。」
戦闘が始まる。
ミアは、剣を振るい、風の光雑法を繰り出した。
「うおっ!?」
エリントは咄嗟に他の場所に飛び込んだ。
エリントの立っていた地面が抉れた。
「ひ、ひぇぇ…」
エリントは腰を抜かしたようだ。
「か、か、風であれなんだぞ、闇とか電気なんか食らったら、死んじまうよ!」
エリントはブルブル震えた。
それでもミアは攻撃をやめなかった。
ミアは、レイスの家を出て、右に曲がり、左に曲がり、まっすぐ進み、右に曲がった所に住んでいた。
母と朝の散歩をする時、会うことがあった。
その時はいつも、「おはよ、レイス!」と声をかけてくれていたし、一緒に遊んだこともあった。
でも何故ミアが敵軍にいるのだろうか。
答えは簡単に予測できる。
ミアは洗脳されているのだろう。
目が虚ろで、無表情だ。
17話↓