小説 ピンクバレンタイン 第2話
無理やり2話につなげたからちょい変かもね、(予定は1話完結だった
楽しんでいただけたら幸いです(
前話→https://tohyotalk.com/question/275236
画像悪すぎ爆笑ww(
本庄 澪(ほんじょう みお)
乾 冬真(いぬい とうま)
冬真さん、と声をかけた。彼がゆっくり振り返る。
その瞳の綺麗さに、吸い込まれそうになる。本庄澪は思わず目を逸らした。
乾冬真──彼は昨日、澪の前に突然現れた。澪を傷つけまいとしていた彼のあの表情が、鮮やかに蘇る。胸が熱いような、苦しいような──そんな感覚になる。
澪が視線を戻すと、冬真が「さん付けじゃなくていいよ」と苦笑交じりにいった。
「というか、会いに来たの?」
冬真が少し、悪戯っぽく笑う。会いに来たというか──帰り道にたまたま姿を見かけて話しかけただけなのだが、澪は頷いた。
「あの、ちゃんとお礼を言いたかったんです。……ありがとうございました」
小さく頭を下げる。冬真がふっと笑う声が聞こえた。
「いいよ、そんなの。お礼を言うべきなのはむしろこっちだし」
冬真はちょっと考えるような仕草をした後、歩き出した。澪の方を向いて、顎をくいと動かす。ついてきて、という意味だろう。澪は少し離れて、彼について歩いた。
ぼんやりと、前を歩く冬真の姿を眺める。彼のすっきりとした黒髪が、夕暮れの光に反射して眩しい。昨日も付けていた赤いチェックのマフラーが、風にゆるくはためいていた。
暫く歩いた後、冬真がふいにコンビニに立ち寄った。外で待ってて、と言われ、澪は傍にあったベンチに腰掛けた。
五分ほどして、冬真が出てきた。はい、と何かを差し出す。コーンスープだった。
「お礼。コンビニのだけど、俺のおすすめだから」
紙容器から、じんわりと熱が伝わってくる。断るのも申し訳ないと思い、澪はお礼を言って一口飲んだ。温かさが体の中に広がる。
ふいに視線を感じて、澪は顔を上げた。冬真と目が合う。首を傾げると、冬真は「あ」と言って顔を逸らした。
どうかしたのか、と訊こうとすると、今度は別の視線を感じた。
コンビニの向かい側に、2年生の先輩女子たち、つまり冬真の同級生たちが立っていた。こそこそと何かを話している。時々、ちらちらと澪の方を窺っている。
あ──と、澪は思った。恋愛経験が殆どない澪でも、この空気ぐらいはわかる。やばい、これ、やばい──周りの空気が、急に重たくなったように感じた。ずしりと、澪の心にのしかかってくる。
もしかして、と思う。
もしかして、冬真がさっき、澪を見ていたのは、これのせいじゃないのか。同級生の女子たちに、誤解されると思ったからじゃないのか。澪を、迷惑だと感じたからじゃないのか。
澪は、即座に紙容器を置いた。
「あの、すみません、私、帰ります」
冬真が、驚いたような困惑したような顔をして、澪を見た。だが、澪は冬真に背を向けて走り出した。言うだけで精一杯だった。
コンビニから遠く離れた交差点の前で、澪は立ち止った。冬真に、申し訳ないことをしてしまったかもしれない。折角、彼がお礼をしてくれたのに。
胸の奥がぎゅっと苦しくなる。あまりの痛さに、涙が出そうになった。
「──────澪!」
叫びのような、大きな声がした。腕がぐい、と引っ張られた。強烈な既視感を感じて、澪は振り返った。
冬真が、立っていた。顔を歪め、はあ、はあ、と肩で息をしている。
「───っ、どうして」
「……傷つけたかと、思って」
え、と掠れた声が、口から漏れた。冬真が、顔を歪めたまま俯く。
「あの、女子たち。澪が、あいつらを見てたから」
ああ──と、頷く。澪の様子を見て、冬真がごめん、と小さく呟いた。
澪はかぶりを振った。耳の奥が、じんわりと熱い。澪、と彼に呼んでもらったのは初めてだ。澪は小さく、弱々しく、微笑んだ。
「ありがとう、ございます。あの、私も、ごめんなさい」
頭を下げる。冬真は不思議そうに首を傾げた。
「あの……さっき、冬真くんと目が合ったときに、その……」
冬真が「あっ」と小さく叫んだ。澪は慌てて「ごめんなさいっ」とさっきよりも深く頭を下げた。
「いや、あの、謝らなくていいから……あの、それは、俺が」
急に、冬真が口ごもった。手で顔を覆い、天を仰ぐようにして上を見ている。耳が物凄く赤くなっている。
「……あ、そうだ、LINE交換してもいい?」
冬真がポケットからスマホを取り出した。友だち追加用のQRコードを表示させて、こちらに向ける。
QRコードを読み込むと、スポーツメーカーのアイコンが出てきた。
「ありがと」
冬真が嬉しそうに微笑む。その表情に、胸がきゅんと温かくなった。昨日と同じ感覚だ。
「あ、あと、冬真くんっていう呼び方いいかも。俺、それがいい。好き」
好き、という言葉に胸が躍る。嬉しくなって、はい、と笑って答えた。
うん、長いな。
読者の方々に質問!(は
冬真視点のやつを書くか、と、ライバルを登場させるか、で迷っております(
ご意見ありましたらコメントにお願いします(