【未玲亜小説大会】 ほきょうき
「大丈夫?」
涙で潤んでいる私の目を自分の手で擦って顔を上げたらショートカットで艶っとした髪をしていた子がいた。
「大丈夫じゃない…」
そう私は言った。そして君は
「もう、犬さんは消えたから大丈夫だよ。可愛いお姫様?」
お姫様…私のあだ名と一緒。でも可愛いとは言われない。だって…「シンデレラ」だから
知ってた?シンデレラって「灰かぶり姫」っていう意味でもあるんだって。因みに私の名前は米野姫愛。傍らから見ると小説で言うとぶりっ子につけられそうな名前。だから、嫌い。小学校高学年になっても幼い男子は「よっ!シンデレラ、掃除しとけよ!」とかそんな巫山戯たことを言う。私はおとぎ話のシンデレラじゃないっうの。先生に言いつけたいけど、私はそんなに勇気のある子じゃない。
「おーい」
「そういえば誰なの?あなた」
「え、僕?めのひめあだよ」
めのひめあ?同じ名前じゃない。
「漢字は?」
「えっとねー、書くね。」
そうやってメモ帳を開くとたくさんの文章が書いてあった。
〝はじめまして、僕の名前は芽敍媛空(めのひめあ)です。好きなことはゲームです。よろしくお願いします〟
なんかテンプレみたい。
それを見て私は媛空くん、と言い出した。
親のいる所まで連れて行ってもらったけど、媛空くん、って話しかけても気付かなかった。時があった。
なんでだろう、無視してるのかな?
まぁ、私『シンデレラ』だしね?無視されるの当たり前だもん。
あー、でも、媛空くん、なんか耳に変なの掛けてるしなー。なんだろ、音楽聴いてんのかな?そうだとしたら辞めさせなきゃ。
「媛空くん、音楽聞きながら歩くのはダメだよ。」
「え、あぁ、これ?これね、ほきょうきって言うんだよ。」
ほきょうき、変な形。でも耳にフィットされてる。痒くなんないのかな?
「痒くなんないの?」
「最初はたくさん無くして親に怒られたりしたけど最近はそんなのなくなったよ。それに痒くないからね。」
へー、不思議なの。でも、私はそれが妙に気になってずっと触ってた。それで親に会った。
「またね」
って言ってくれたけど、ほちょうき返し忘れた。どうしよう。また会った時に返そうかな…でも会えるかも分かんないし…そんな気持ちを抱いて早5年。私は高校3年生になりました。そして今は耳が聞こえません。
そして媛空ちゃんに会い、補聴器を返し、仲良くなりました。
ああ、あんなことが起こらなければ、私も耳が聞こえられたままだったのかな?
あんなこと、それは中耳炎。
中耳炎になって聞こえにくくなった。発音もままらない。てがけになったり、声で話せなかったり。
でも、私は今とても幸せです。