【小説】1人の兵士(5)
俺達は敵地へと走って行く。そして敵のトーチカを発見した。トーチカ内には多少の敵兵はいたが、なんとか倒し、トーチカを奪い喜んでいた。その瞬間、一発の砲撃音が聞こえた。それと同時に耳を裂くような爆発音と共に現れたのは瓦礫だった。敵戦車の砲弾が直撃した。みんな怪我はなかったが、煙と共にトーチカ内へ銃弾が撃たれる。数人の兵士が水のようになだれ込んでくる。俺達は応戦し続けたが敵の猛攻が激しく、俺達は遂に捉えられて捕虜にされた。俺達は敵のトラックに乗せられ、砂利道を進んで行く。ユラユラと揺れる車内には数人の敵兵がこちらをじっと見ていた。睨むわけでもなく、興味深そうにじっと見つめていた。そしてトラックのブレーキ音が聞こえ、数人の敵兵と共にトラックを降り、敵の本拠地に連れてこられた。建物に入る際、負傷した兵士は頭や腹に包帯を巻き、撃たれたであろう部分からは血が滲んでいた。建物に入りとある部屋に連れて行かれたが俺達に対して敵兵は悪い態度を取らずに、俺達の軍の事や武器や兵器の事を聞いてきた。俺達はずっと黙っていた。
敵兵「君達の軍が秘密裏に開発している兵器などはあるかね?」
トーマス「…」
敵兵「どんな武器を作っているんだ?武器の性能は?」
いろいろ聞かれたが終始無言だった。そして俺達は捕らえられたままだったが、なんとか抜け出した。敵の本拠地を火薬で爆破し、弾薬庫には手榴弾を投げ込んだ。そして敵の車を奪い、猛スピードで走り抜けて行く。敵が撃つ弾は車にももちろん被弾した。俺達に武器はなかった。ただ車でひたすら逃げ、辺りが暗くなる頃には見方の前線にたどり着いた。司令官は俺達に何も話してないかなど聞き、正直に話してないと伝えた所、安心して部屋を出た。そして少しして戻ってくると、全員分の武器を持ってきてこう言った
司令官「お前らには辛い話になるが、敵の猛攻撃が強くなっている。前線の押し上げが難しい。だから戦うのを手伝ってくれ。」
トム「わかりました。現状はどんな感じで?」
司令官「…味方が大量に死んでいる。物資が追いついていないせいで戦車も食糧も弾薬も医療も足りない。重症の兵士は殆ど死んで、今は大体が負傷した兵士だ。それをチャンスと見たんだろうな、前線が後退しつつある。」
ボブ「それで私達に戦え、と言うことですか…」
司令官「そうだ。」
エリック「一体どうすれば…」
司令官「お前らに言わなければならない事がある。」
そう言うと司令官は帽子を深く被り、
司令官「ブライアンが死亡した、自決だ。」
トム「自決って…どういうことですか?!なんでアイツが死んだんですか?!」
司令官「私にもわからない!死んだ者は死んでしまったんだ!今更どう言ったって仕方がないだろう?!」
トーマス「そんな…」
トム「…とりあえず敵を倒せばいいんですね?」
司令官「そうだ。今から奇襲をかけるぞ、しっかりと装備を整えろ。」
そう言って司令官は机に血の付いた拳銃を手に取り、外へ出た。
トム「そんな…ブライアンが…クソッ!」
エリック「落ち着け!そんな事は後にしろ!」
トム「そんな事だと…?ふざけるな!」
ボブ「落ち着けって…」
トム「うるせぇ!あいつの顔もしらねぇ奴が言うんじねぇ!お前らは見た事ないから言えるんだ!畜生!」
俺は静かにドアを閉じた。それと同時に目に涙が浮かぶ。あいつに限ってそんな事が。頭によぎる言葉はそれだけだった。俺は銃を持つと司令官の元へ行き、
トーマス「準備ができました」
と、言った