光は波か、粒子か?
世界で初めて光速の計測に成功したのは1676年、デンマークの天文学者オーレ・クリステンセン・レーマーでした。
19世紀に入ると、フランスの2人の物理学者、アルマン・フィゾー、レオン・フーコーが光速をさらに正確に測ろうと競い合います。
実はこの2人より先に、光速の計測を考えていた人物がいました。フランスの物理学者フランソワ・アラゴです。ところがアラゴは1840年代から視力が極端に落ち、自ら実験することは不可能な状態になっていました。そこでアラゴはフーコーに計測を託しました。
光の性質についてニュートンは「光は粒子だ」としました。一方、アラゴは1811年から1816年に行った実験の結果から、「光は波だ」と主張しました。その後、1818年には、アラゴの盟友でフランスの物理学者、さらにはフレネルレンズの開発者でもあるオーギュスタン・フレネルが「光は往来言われている縦波ではなく偏光する横波だ」と発表しました。
しかし、光の速度については謎が残っていました。光の波動説では、光の速さは、光が屈折するぶん光路長が伸びるので、空中より水中で遅くなると考えらました。ところが粒子説では、光の粒子が水に入るときに下向きの力が働く(加速される)ため、光は空中より水中のほうが速く進むはずだというのです。
フィゾーとフーコーには、光速計測の実験でこの点を調べることも期待されました。フィゾーは実験装置として、高速回転する歯車と鏡を用いました。光は歯車に垂直向きに入射され、歯の間を通るように進みます。鏡で反射されて十分長い距離を往復して光が戻ってくる間に、歯車は何枚かの歯の分だけ回転します。
すると、戻ってきた光は、再度、歯車の歯の間を通ろい抜けます。光がちょうど通り抜けるように歯車の回転速度を調整し、その回転速度と光が往復する間に回転した歯の枚数を測定することで、光の速度を求めるのです。
この結果、フィゾーは光速を秒速29万8000±500kmと算出しました。
一方、フーコーは、アラゴが考案した装置(高速回転する反射鏡)を用いました。原理はフィゾーが使った装置と同じようなものです。
光は回転する鏡で反射され、さらに固定された球面鏡で打ち返されます。光が往復して戻ってくる間に回転鏡はさらに角度だけ回転しています。
その後、光は元の方向に戻っていきますが、その進む角度は鏡の回転角の2倍だけずれています。鏡の回転速度を知っていれば、この角度を測ることで、光の往復時間を知ることができます。
1850年4月、フーコーがフィゾーに6週間ほど先駆けて、計測に成功しました。そして光は空中より水中のほうが遅く進んだのです。
それはすなわち光が波だという証明でした。そして20世紀になると、フランスの理論物理学者ルイ・ド・ブロイに代表される量子力学とアインシュタインがすべてを和解させました。光は同時に波でも粒子(光子)でもあり、光は真空中でもっとも速く進むのです。
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