叶わない恋に奇跡を【4話】
エプロンをつけ、後ろ手に紐を結ぶ。
「よし!」
と呟いて、調理場へと急ぐ。
「アリアちゃ〜ん!まずはそこにあるポトフ用の野菜切っておいて〜!」
料理を運びながら、マーサさんが早速私に言う。
「は〜い!」
ポトフ用の野菜ってこれかな?
トン、トン、トンとリズミカルな包丁の音がひびく。
ジャガイモ、ニンジン、ソーセージ、タマネギ、ブロッコリーを切り終えた。
「マーサさ〜ん!終わりましたぁ〜!」
また遠くで料理を運んでいるので、大声でマーサさんに向かって言う。
「もう終わったの?はやっ!すごいねアリアちゃん。」
やったあ 褒めてもらった。 今まで誰かに褒めてもらったことなんてあったっけ?
「じゃあ次は、そこにあるトマトとレタスとタマネギ、あとレモンを使ってサラダ作って、そこのボウルに入れておいて!ドレッシングは冷蔵庫に入ってるから!」
わあ、仕事多っ
「は〜い!」
えっと、まずはタマネギを切って〜…
普通の人間なら目が痛くなって涙が出るところだけど、私は大丈夫。だってロボットだから。
こういうところは人間そっくりにしないでよかったと思う。まあ、涙を流すようにする技術がなかっただけだろうけど。
私は悲しくても涙は出ない。
そんなことを考えているうちに野菜を切り終わった。
次はレモンか〜 どうしようかな?
とりあえず皮を刻んで野菜と混ぜる。あとはレモンを絞って、ドレッシングをかけて… 完成!
「マーサさ〜ん、サラダできました!」
「アリアちゃんほんとにすごいね!私より早いかもよ〜?」
マーサさんが笑う。
「あははっ、そんなことないですよ〜」
つられて私も笑う。マーサさんの笑顔って、あたたかいなあ…
今まで私はずっと、厳しい目で怒鳴られるだけだった…
それからはお客さんがどんどん増えてきて、本当に目が回るような忙しさだった。
食堂が閉まる時間。でも仕事はまだまだ終わらない。
「じゃあアリアちゃん、そこのお皿をそこの食洗機に入れといて〜!」
「はーい!」
やっと仕事が終わって、ご飯だ!
「はい、アリアちゃんの分!いっぱいお手伝いしてくれたから、大盛りだよ!」
「ありがとうございます!」
じゃあ、
「「いただきます!」」
…美味しい!
今までは研究所の食事…と言ってもロボットが調理したパンとスープだけだったけど…を食べていたけど、今まで食べたどんなものより美味しい!
思わずどんどん口に運ぶ私を見てマーサさんがニコニコ笑っている。
そういえば、今はロボットが自動で料理してくれるのに、なんでマーサさんはわざわざ全部手作りなんだろう?
「あの、マーサさんってロボット、使わないんですか?」
思い切って聞いてみる。
「こんな忙しいのにって思ったのかい?」
「はい。」
「確かに自分でやるのは大変だけど、人が心を込めて作った方が、美味しいと思うからだよ。」
心を込めて…かあ
「そうなんですね。」
ご飯を食べ終わって、自分の部屋に戻り、ベッドに入る。
今日はいろんなことがあったな… 研究所はどうなっているんだろう?追いかけてきたり、しないかな…
そんなことを考えているうちに、いつの間にか私は眠りについた。
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