叶わない恋に奇跡を【5話】
マーサさんの宿に泊まらせてもらってから、もう三日が経った。
毎日すごく忙しいけど、でも、すごく楽しい。
今日も、窓から優しく差し込む太陽の光に起こされ、もう見慣れた階段を降りて行く。
「マーサさーん!おはようございます!」
「アリアちゃん、おはよう!」
もうマーサさんともずいぶん仲良くなった。
昨日は、カリムが遊びに来てくれた。
「そうだアリアちゃん、今日は、アリアちゃんに紹介したい子がいるんだ〜」
紹介したい子?
「サラちゃん!おいで!」
マーサさんにそう言われて出てきたのは、サラサラの黒髪ボブのお人形みたいにかわいい女の子。
「…サラです」
恥ずかしそうに彼女が答える。
「サラちゃん、この子、アリアちゃん。三日前からうちの宿で泊まってるんだよ。」
「あ、アリアです。」
私もあわてて自己紹介をする。
「二人とも、年が近そうだから仲良くなれるんじゃないかと思って。じゃあ、あとは二人で話しておいて!」
そう言ってマーサさんは仕事に戻って行く。
えっと…何話そう…?
「えっと…アリアって呼んでいい?」
先に口を開いたのは彼女だった。
「あ…うん!じゃあ私もサラって呼んでいい?」
私は慌てて答える。
「うん!よろしく、アリア!」
サラがぱっと笑顔になる。かわいい…
「ねえ、アリアって何才?」
わわっ、歳…?
「…えっと…じゅ、18才!」
慌てて考えて答える。
「私も!同じ年だ!」
「私たちもう友達だねっ!」
友達…嬉しい…!
「うん!」
私は答える。
「ねえアリア。隣の村におしゃれなカフェあるんだけど、今から行かない?」
行きたい!と言いかけて、思わず口を閉じる。宿の手伝いは…?
思わずマーサさんの方を見ると、「行っておいで」と言うかのように笑っている。
「うん!サラ、行こう!」
「行ってきます!」
二人で並んで商店街を歩き出す。
少し歩いたところで、カフェの看板が見えてきた。
「ここだよ!」
わあ!
そこは、外見がレトロですごくかわいいカフェ。
「こんにちはー!」
サラがそう言いながらカフェの中に入っていく。
「あら、サラちゃん!いらっしゃい。」
カフェの店員さんが答える。顔見知りなのかな?
「その子は?友達?」
店員さんに聞かれてサラが答える。
「うん!友達!」
友達だって言ってもらうたびにすごく嬉しくなる。
友達…!
席に座って、サラが何か注文する。
しばらく待って、出てきたのはフルーツがたくさんのった大きなパフェ!
「すごいでしょ!ずっと食べてみたかったんだけど、一人じゃ食べ切れなさそうだったから、二人で食べよ!」
サラが言う。
「うん!」
私たちはパフェを食べて、そのカフェを出た。
「おいしかったね!」
「うん。おいしかった!」
そんな他愛もない話をしながら、商店街を歩いていく。
「じゃあ、私の家、こっちなんだ。アリア、またね!」
サラがそう言って手を振り、小道に入っていく。
「サラ、またね!」
私も手を振りかえす。
そうして私も宿に戻った。
今日も手伝いが終わり、ご飯を食べる。
するとマーサさんから封筒を手渡された。
なんだろう?
「アリアちゃんにお給料だよ。いつも手伝い頑張ってくれてるし。友達もできたんだから、遊びに行くのにお金とか必要だろう?」
「え…でも…。」
私がもらっていいのか戸惑っていると、マーサさんが
「いいからもらって!いつも手伝ってもらって、アリアちゃんには感謝してるんだからね!」
と言う。
「ありがとうございます…!」
はじめてのお給料をもらって、二人目の友達もできて、今日は幸せだなあ…
そう考えているうちに、いつのまにか眠りへと引き込まれていた。
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