短編集.1「春の恋」

7 2023/06/24 20:49

フラれた。

ずっと好きだった、幼なじみの男子に。

◆◇◆

「あーっ、何でよっ!」

「桜良、声量落としなさい」

親友の未海に呆れたように言われる。私は口をとがらせた。

「未海、もうちょっと慰めてくれてもよくない?私フラれたんだよ?」

「え、ふつうに元気そうじゃん」

「これでも落ち込んでるの!」

ぐびっとオレンジジュースを飲み干した。心の傷に染み渡る。うまい。

「でもさ、明日から気まずいねー」と未海。

「だよね……。よく一緒に登校してるし、あいつ後ろの席だから」

はぁ。私は重いため息をついた。

◆◇◆

「未海ーっ!」

登校してすぐ、未海の姿を見つける。抱きつこうとしたけど、すっと真顔でよけられてしまった。

「ひどいよ未海……」

「そういうのは好きな子にやってよ」

「いじわる」

わいわい未海とやり合っていたとき。

「おはよー、桜良、市川さん」

思わず私はぽかんと口を開けた。未海は一瞬面食らったような顔をする。私も同じ顔をしていたと思う。

「お……おはよう、春希」

声をやっとしぼり出す。

春希___昨日私をフッた幼なじみは、いつものように席に座った。

◆◇◆

休み時間、珍しく鼻息を荒くして未海が私のもとに来た。

「許せない」

「え、どうしたの未海」

むすっとした顔のまま、私を廊下に引っぱる。

「あいつ、桜良をフッたくせに何事もなかったように……。桜良の努力はどうなんのよ」

「私?」

そこまで考えていなかった。

確かに、春希はいつも通りだった。笑顔で私に話しかけてきたり、消しゴムを貸してくださいと頼んできたり。

だけど、私にはそれが嬉しかったなぁ。余所余所しくしてこないから、ホッとした。

「そういうところが好きだった、のかも」

まあ失恋しちゃったけど、と呟くと、未海は。

「まだ失恋じゃないでしょ」

「え……、どういうこと?」

「桜良はまだ、恋心を失ってない!好きって気持ちが消えるまで、失恋じゃないよ!」

力強く言った後、おどけたようにペロッと舌を出してきた。

「なんつって、私、すっごくいいこと言ったわ!」

「ばーか、今の言葉で台無しだよ!」

でも。

「ありがとね、未海」

未海が私の親友でよかった。

◆◇◆

「春希」

人気のない校舎裏。この前私が告白した場所。でも、前みたいに手汗はかいてない。

「……なんだ?」

戸惑ったような顔で春希が聞いてくる。すぅっと私は息を吸い込んだ。

「やっぱり私、春希が好き」

「……桜良、前も言ったけど」

「分かってる」

春希の言葉をさえぎって、私は微笑む。

「でも、諦められないから、絶対に振り向かせてやる!って、今日はそれだけ。来てくれてありがと」

自分のいった言葉に恥ずかしくなって、逃げ出そうとする。そのとき背後から、ぼそっと声が聞こえてきた。

「春希、なんか言った?」

「……楽しみにしてる、って言ったよ」

私たちの間を、春風が吹き抜ける。

まだ恋は、始まったばかり。

【挨拶】

読んでくださりありがとうございます。駄作ですが感想待ってます。短編というわりには長いですね……

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その他2023/06/24 20:49:15 [通報] [非表示] フォローする
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めっちゃいーやん!

青春!!

わぁ!!


>>1
ありがとう〜(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)


やっぱヒマちゃんは小説うまいよね


>>2
嬉しいです!ありがとうございます


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