小説 / あなたは100歳まで生きたいですか。
「お前はさ、100歳まで生きたい?」
何の前触れもなく、隣にいる ”ゆうじん” に話しかけられる。
えっと、これはどんな意図を持った質問なんだろうか。
それともただ単純に思いついたから質問してきただけなのか。
読めない、分からない。
まあでも、こいつのその不気味さは、今に始まったことじゃないからさ。
『いつも通りだな』なんて意味わからないところに安堵していたら、「何お前…」と驚かれてしまった。
ほんとは僕、”分かる”んだ。こいつが過去に何かあったんだろうなっていうの、なんとなくわかる。
Q.あなたは100歳まで生きたいですか?
分かるから。分かるから触れないんだよ、それはあえて。
得体の知れない間に戸惑う ”ゆうじん” に、僕が何を考えてるか悟らせないために言う。
「答えはいえすに決まってんだろ!」
ってね!
”ゆうじん” は、僕の答えに、『やっぱりか』みたいな、どこか残念っぽく、とにかく少し寂しそうにして、僕に「なんで」と聞きかえす。
「世界が変わるのを見てみたいんだ」
僕の100歳まで生きたい理由は、はっきり言って歪んでいる。でも、分かってくれると確信しているので続ける。
「きっとこのままじゃ人類、消えちゃうよな。自滅って言うのかな、なんていうんだろ、その、より便利になってってんじゃん、今の世界。そういうものには犠牲がつきもので、結構大変なものを便利にするための努力が ”僕たちが怠けるためのもの” になっちゃうなら、退化とか、自滅?になっちゃうよね。一度始まったら止まらない、世界の退化をどうせなら見届けたいと思って」
まとまらなくて分かりずらいだろうな、聞き手は。でも今の僕の語彙力では、そう言うしかない。
伝わったのか心配で、顔色を窺った。でも ”ゆうじん” は微笑していたので、ひとまずは分かってくれたんだと思う。
口を開くなり、
「お前の100年の途中で俺がいなくなった世界線でも、退化を選ぶといいよ」
と言う。正直意味が分からなくて、凄く困った。
でも笑っている君がそこにいる。
そして、 君の隣には ”ゆうじん” がいなくなった世界線に、興味を持った僕がいた。
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