『ぬ』を買った話。

80 2024/06/01 12:51

「…なんだ?これ…」

俺は何時ものようにフリマアプリを眺めていた。『何時ものように』とは言ったが、偶に掘り出し物があれば買う程度の物であった…が、今日は何やらへんちくりんな物を見つけてしまった訳だ。商品名は『ぬ』としか書いておらず、説明文にも『ぬ』の一文字。それでいて、価格はなんと10万円。普段の俺なら買わなかっただろう。しかし、その時の俺にはそれなりに金があった。ここで好奇心に負けて、買わなければこんなことにはならなかったのかもしれない。しかし、俺は買ってしまったのだ。『好奇心は猫をも殺す』という諺があったな。

――――――――――――――――――

そしてその『ぬ』を購入したのだ。どんな物なのか知りたかった。ただ、それだけであった。『好奇心の為に10万円捨てたのか?』という者もいるかもしれない。だが、その時俺には好奇心に勝つ方法が見つからなかった。

買ってから1週間。その『ぬ』が届いた。『ぬ』とは何なのか。それが早く知りたかった。急いで、しかし中身を傷つけないように。箱を開けた。中に入っていたのは…紙切れ一枚であった。何か書いている。地図?の様な物だった。ご丁寧に住所?まで付いている。『〇〇県✕✕町大字△△△44-3』…そこに行けば、『ぬ』の正体が知れるのだろうか。少し遠いが、このまま辞めれば10万円の無駄だ。旅行だと思って行くことにした。

――――――――――――――――――

行く途中、コンビニで休んでいると『893筋の人』っぽい人に話しかけられ、「『ぬ』を買ったやつを知らねえか?」と聞かれた。ここで俺はビビって「しっ、知らない!」と答えて、さっさと車を出した。これがいけなかった。その893っぽい人は黒塗りの車に乗り、追いかけてきやがった訳だ。クソ怖かった。捕まったら死ぬだろう。そう思った俺は全速力で車を走らせた。警察がいなくてよかった。なんとか893を撒いた俺は、さっさと目的地に向かうこととした…。

――――――――――――――――――

ようやく目的地についた俺はそこにあった山小屋に入ることにした。「…おーい!誰かいないかー!」…と呼んでみたが、誰も来ないし、返事も返ってこなかった。結局『ぬ』ってなんなんだろう。そう思っていると、床に妙な取手がある事に気がついた。「…ここに、『ぬ』が…あるのか…?」そう思い、開けてみると、地下室への階段であった。迷うことなく降りる。ここに『ぬ』があるだろうと、確証もなく。そして…地下室には、1台のパソコンのみがあった。これが『ぬ』なのか?パソコンを起動すると、中にファイルがある。ファイルを開いてみた。「『ぬ』の購入、ありがとうございます。私は『に』です。貴方のお陰で地下室から出ることが出来ました。」

入ってきた所が塞がっている。どうやって出ればいいんだ。四、五十分考えてから、ようやく分かった。俺のおかげで出れたということは、俺が『ぬ』を買った事で出れたということだ。ならば、俺も『ぬ』を売ればいいのだ。ただし、『ぬ』ではもう売れない。ならば『ね』にすればいい。…俺は、23人目の被害者のようだ…。

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テクノロジー2024/06/01 12:51:00 [通報] [非表示] フォローする
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ん にいったらどーなるんだろ


「ぬ」でこんなにもすごい小説が作れるとは…


え、めちゃ好き!


発想が天才的。

この小説好きすぎる、笑


あの893は助けようとしていたのか......?


なんか 好き これ


すごい

めっちゃ好き


さすがに天才か


16: りつ. @ritu122 2024/06/10 19:44:42 通報 非表示

すげ。すき


17: @naroya 2024/06/10 21:14:03 通報 非表示

めっちゃ面白い!


星新一み感じて好き


>>20
星新一に失礼すぎて草


>>21
そうかい 悪かったね


>>21
それはそう

星新一様の足元にも及びませんわ


.1位おめでと.


今読み返すと改善点しかないなこれ


この話なんか既視感あるような…


>>29
なんのことかなー


>>30
普通にこの話すげえな


な  に   こ    れ


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