【小説総選挙】空の鮫

14 2024/06/01 19:37

私は飛行機雲が好きだ。だから普段はよく上を向いて歩いている。空の上の怪物が創るどこまでも続く飛行機雲。怪物は自分がどれだけ素敵なものを創ってるのか知らない。地上にいる人だけが怪物が創る雲の良さを知っている。自分の気付けない良さを他人は知っている。そんなことを飛行機雲は象徴してると私は勝手に考えている。今から話すのは私が体験した飛行機雲みたいなとっても不思議な物語。今でもあれは夢だったんじゃないかと思ってる。けど、きっと夢じゃない、そう信じてる。

それは爽やかな夏の日の学校帰りに起きた。

ーーーーー

その日は先生に怒られてとても憂鬱だった。ちょっと急いでたから廊下を走っていたら案の定、先生とばったりぶつかってしまった。私の心は曇り空だ。そんな私の気持ちとは裏腹に、真っ青な空には綺麗な形の入道雲が浮かんでいる。気分が乗らなく、珍しく下を向いて歩いていた。すると目の前に小学生ほどの女の子が立っていた。どうやら泣いているようだった。本音としては女の子は放っておいてすぐに家に帰りたかった。でも、女の子の涙を見ているとそれはできなかった。私は女の子に話しかけた。

「どうしたの?」

「……ふ、ふうせんが、木に、ひっかかっちゃたの……」

女の子はそう言ってそばにある木を指さすとまた泣き出してしまった。

「そうだったんだね。すぐにお姉ちゃんが取ってきてあげるからね。」

私はそう言うとすぐさま木に向かって走った。そして木に登った。木登りは小さい時に飽きるほどやっていたから大の得意だ。目的の風船を取ってそこからジャンプで地面に着地。女の子はもう泣いてなんてなかった。女の子に風船を渡した。

「おねえちゃん、ありがと!!」

女の子がスキップしながら私のそばを離れていく。元気になってよかった。私は人助けをし、気分が良くなったので空を見た。次の瞬間、バケツをひっくり返したかのような雨が私を襲った。一瞬にして私は頭から足までびしょ濡れになった。かと思うとすぐにさっきまでの爽やかな青空が広がった。なんだったんだ、今の雨は。いきなり降ったかと思うと一瞬で止む不思議な雨だった。怒られ、人を助けたと思ったらすごい雨に見舞われ、今日は変な日だなと再び天を仰いだ時だった。空に現在進行系で飛行機雲が空に続いていた。そして入道雲の先には飛行機がある。しかしなんだか飛行機の様子が変だ。その飛行機…ではない何かは悠々とあっちに行ったりこっちに行ったりと、まるで空を泳いでいるようだった。何度も見るが、やはり飛行機ではないようだ。しばらくその何かを目で追っていると私のすぐそばの空にやってきた。その何かはヒレを動かし、泳いでいる。

「あれは…サメ?」

何度も見てみるがやっぱりサメのようだ。サメが空を優雅に泳いでる。え、そんなファンタジーなことある?もしかして夢かな?そんなことをぐるぐる考えていると頭が痛くなってくる。私、疲れてるんだな。今日は早く帰って寝よう。謎に決心していると頭の上に紙が落ちてきた。そこには今、急いで書いたような少し乱雑な字でこんなことが書かれている。

『このサメに乗って空の旅に出てみない?決心がついたら目を瞑ってジャンプしてみて。』

サメに乗る?空の旅?これはあのサメが書いたの?疑問がありすぎてなにも頭に入ってこない。でも、空の旅というものにははとても興味がある。けどきっと誰かのイタズラだろう。けどどうしても気になって、ポケットに紙を入れ、冗談混じりに一回目を瞑って思いっきりジャンプしてみた。途端に風と共に私は空に飛ばされた。さっきまでいた場所がぐんぐん遠ざかっていく。まさか、本当にこんなことが起きるなんて思っていなかった。ふわっと浮いたかと思うと私は大きな何かの上に打ち付けられた。

「いてて……」

その何かの表面は少し濡れててぬくもりがあった。それがさっきまで見ていたサメだと気づいたのはすぐだった。ひどく低い音が私の頭に響いたからだ。サメは大きく鳴くと勢いよく空を泳ぎ始めた。さっきまでいた地上がもうあんな遠くにある。なんか不思議な感じだ。サメは優雅に空を泳ぐ。たまに水飛沫が上がり、気持ちがいい。ふと地上を見るともっと不思議なことが起こった。私がいたのだ。そう、さっきまで地上にいた私だ。ふう、と息を吐く。一回頭を整理しよう。さっきまで私は地上にいて、ジャンプしたらサメの上にいた。しかし今、空の下にはさっきまでの私がいる。つまり、私は今さっきまでの空の上、つまり過去にいるということだ。さっきまでの私は今、女の子の風船を取ってあげている。自分ってはたからみたらこう思われていたのか。自分を遠くから見ることなんて普通はない。こう見ていると自分って結構優しいのでは?と錯覚してしまいそうだ。向こうの私が女の子と別れて少しした時だった。サメが空の水をヒレで蹴り上げたのだ。水は空と地の境界線を超え、地面に叩きつけたれた。私はびしょ濡れになっている。なんか可哀想に思えてきた、自分なのに。あそこの私にもこの空の旅を味わってほしいという思いで私はたまたま持っていた紙にこう書いた。

『このサメに乗って空の旅に出てみない?決心がついたら目を瞑ってジャンプしてみて。』

そしてその紙を地上に落とした。紙はひらひらと上空を舞い、無事に私の元に届いた。途端に意識がなくなった。

ーーーーー

目が覚めると私は地上にいた。何事もなかったように世界は動いている。さっきまでの出来事は夢だったのかと思った。

けどポケットにはちゃんと入っていた、あの紙が。

【あとがき】

どうもこんにちは朝夜うとです

まあ本当は総選挙出すつもりなかったんですが(テスト近いので)、他の方の立候補作品読んで参加したくなっちゃいましたわ

やっぱり、わたしの原点は小説なので書くのはめちゃ楽しかったです✌️

帰り道に見えた飛行機がサメに見えたのと時空を超えた物語ってかっこいいなって思ったのでこの物語作りました

「自分の気付けない良さを他人は知っている」っていうメッセージを込めました、一応🫠

題名はなにも思いつかなかったのでそのまま空の鮫です

本当はもっとかっこいいやつにしたかった😇😇

長いんでここまで読んでくれた人には感謝しかないです

たぶんどっかには誤字脱字ある気がしますが見つけたら教えていただけると幸いです

もしよかったら感想をコメントしていただけると嬉しいです👊

以上

いいねを贈ろう
いいね
14

このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
画像・吹き出し

タグ:

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する
その他2024/06/01 19:37:02 [通報] [非表示] フォローする
TTツイートしよう!
TTツイートする

拡散用



段落入れ忘れてますよ


語彙力の塊???😁


ええなんかもうすごすぎる😭😭

過去と今が一斉に出てくる物語って言うのが天才すぎる、、

自分を客観的に見ることで、また自分では気付けない良さが出てくるんだろうなって思った🥹

気付いたら物語に入り込んでて心を動かされた小説だった…まじ投票します🫱🏻‍🫲🏻


爽やかな雰囲気好きです🫶


画像・吹き出し
タグ:

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する