産移ツギハギ細工・産移屋に聖夜来たる(3)
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産移屋から二駅ほど海と反対に進んだ街。すっかりライトアップされた道路を、真っ黒なバイクが走っていた。運転している顔を隠した女性の背中に、タンクらしきものを背負った少年が掴まっている。
「…ザンくん、こっち側に来たのソラにバレたんだって?」
「やかましいわ。」
しばらく無言。目的地の路地裏に着くと、女性はバイクから降りてヘルメットを取った。艶やかなストレートがこぼれ、一瞬宙を舞い、ストンと重力に従う。溶けずに残った雪で縁取られた細い道をランウェイにして、カチャリカチャリと歩く。レザージャケットを脱いで小脇に抱え、代わりにウサギの耳を装着する。ボディースーツにはウサギの尻尾もついている。
異様にメカニカルなハイヒールを除いて、ホクロは所謂『バニーガール』の衣装を着ていた。
「いやー、流石に寒いね。」
「ならまともな服着ろや!」
「これはホクロさんの戦闘服なんですー。」
そこで待っててねとザンに告げ、白い腕をさすりながら古びた一軒家へ向かって歩いて行く。
コンコンコンコン、扉を叩く。
「失礼、倭原組に依頼された者ですが。」
誤って壁にぶつけたのだろうか、中からは何か重い物の音がした…
刹那、扉が銃声のような音で開く。絶対に野球目的で作られていない大きさの金属バットを振りかぶって、大男が出てきた。
「テメェゴラァ、何者だぁ⁈」
ガツン、バットが地面に振り下ろされる。間一髪で避けたホクロは顔の布を取る。
…切れ長の黒い瞳を持つ、当たり障りのない美人。整っているのだが、何故かどうしても『普通』と形容したくなってしまう。出会って数日後にはぼんやりしてきそうなパーツの優等生具合だろうか、それとも化粧によってコロコロ変わるタイプの顔だからだろうか。
そんな彼女の顔にも一つだけ、誰が見ても忘れない特徴があった。左目の下にある正五角形の黒子だ。定規や分度器で測っても、完璧な正五角形。
何故その黒子を見せたのか?
答えは、見られた以上お客様を絶対に生きて帰さないためである。
「初めまして、最初で最後の挨拶になりますね。私は産移屋の者です。貴方方と敵対されている倭原組から『樫尾のボスの隠れ家を探って、殺してくれ』との依頼がございましたので、誠に無礼ながら貴殿を殺害しに。」
ハイヒールに付いている、花びらが五枚の花型をした歯車をカチリと回す。
五。
「はぁ?テメェに俺が殺られるわけ…」
四。
「おい、聞いてんのか⁈」
三。
「クソ、全然当たら…」
二。
「やめろ、俺に近づくな!」
一。
「おいコラ、踏みつけてんじゃ…」
ドン…
くぐもった発砲音。ホクロはヒール部分から感じる反動に満足しながら、これをザンに作らせたことでソラから受けるであろう処罰と寒さの両方に身を震わせた。
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シャカシャカシャカ。
産移屋では、第二回クリスマスケーキ作りが開催されていた。ちなみに第一回はソラとフタバが真剣な話をしている間に材料が全てなくなっており、代わりに口の周りを真っ白にした幸せそうなリクがいたため失敗したのだ。
なので今回はナナオとカイ…仮面の男を除いた全員で臨む。
「ねえねえアノマエ、生クリームにこれ入れてくれない?隠し味。」
「俺が貴様から物質を受け取る阿呆だとでも?」
「チッ」
二人は軽口を叩き合いながらも、気づいていた。自分たちへチラチラと冷たい怒りが向けられていることに。
「…ソラ、どうしたの?今日怖いよ。アノマエと、フタバの事、ずっと睨んでる。飴さん食べる?」
「リクはほんまあばばいわ…」
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