【食べ物総選挙】とあるサイトTにおける、ユーザーHについて
72:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
ポンデうま
>僕オールドファッション派っす
>どちら様?
>ポンデリングよりオールドファッションが好きな通りすがり
>通りすがり?
>そう通りすがり
>あ、そう
あとポンデリングじゃなくてポン・デ・リングな間違えんな
>なぜ急に喧嘩腰w ポンデリング駄目でポンデはいいんか
>揚げ足取んなし
てかドーナツを種類で優劣つけんなし全部ウマい
>思ったよりガチ勢で草
253:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
フレンチクルーラーうま
>分かる
>誰かと思えばお前かよ独り言に返信すな
>覚えててくれたんか換気
>換気www
せいぜい2週間とかじゃん
>歓喜
負い笑うな
>負いwwww誤字多すぎんだろw
>くっそ腹立つなお前
27️3:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
オールドファッションうま
>僕にもちょうだい♡
>冗談キツいぞ
>辛辣だなオイ 今日ボイチャいける?
>エンゼルクリーム食べながら待機しとく
>食いすぎじゃねw
◇◇◇
サイトTでの相互フォロワー、いわゆるFFであったのはたった一人である。
ユーザーH。浮上する時間帯は主に深夜。総選挙はおろかタグさえつぶやかない。つぶやかれるのは小指をぶつけて痛いだとか買い物に行っただとか、当たり障りのないことばかり。時間帯が遅くなるにつれてつぶやきの鋭さも増す中、少し違う雰囲気を持っていた。好物はドーナツ。口調から性別は男。プロフ欄は白紙。
だから少し気になったのだ。年齢は?趣味は?どうしてこのサイトに居るの?まあ、実際は口の悪い同年代のミスドオタクだったのだが。
「オールドファッションはオーブンで表面がカリカリになるくらいに焼くのが1番なんだ。そこにはちみつとかシロップをかけるのもなかなか良い」
「へえ」
「凍らすっていう人もいるけど、俺的にはナンセンスだな。焼いたほうが良い。温めたら甘くなるし香りも引き立つ」
「はあ」
「逆にフレンチクルーラーは冷やした方が良い。中のクリームがいい具合に固まって食べやすくなる。これを踏まえるとそうだな、フレンチクルーラーは夏、オールドファッションは冬に食べるべきだ」
「ふーん。うまそう」
「ん。うまい」
「そか」
一方的に僕が返信するだけだった仲も、半年もすれば毎晩二人でボイスチャットをするようになっていった。直接会話をしていても彼の話題は相変わらずだった。
サイトで僕の声を聞いたことがあるのは彼だけだし、彼の声を聞いたことがあるのも僕だけだ。それがちょっと嬉しかった。
「で、そっちは何食ってんの」
「豆乳ドーナツ」
「コンビニのやつじゃねえかミスド食えよ」
「ハハ」
あんたの声聞いてドーナツが食べたくなったんだ。この時間帯はコンビニしか開いてない。仕方ないだろ。
◇◇◇
563:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
作った hqqts/://d.kuku.=----
>シフォンケーキ?女子力たけえ
>砂糖の配分ミスったわ。甘くないから半分パン
>レシピ見ろよw
5643:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
総選挙4位おめ
てか立候補してたん
>あざます
>ステラ惜しかったねw
>黙れ
7582:H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
今週末やることないかも
>一日ボイチャやろ
>親いるから無理
>じゃゲームとか
>おすすめの教えて
>太◯の達人
>スマホでも出来る?
>知らん
>適当すぎる
◇◇◇
毎晩のように話をしていると話題も尽きる。ドーナツ以外の話をするようになるのはすぐだった。
「そうか?俺はただの言い訳だと思うけどな」
「えー」
「だってそれ勉強したくない理由を探してるだけじゃね」
「そうかなあ」
「学歴社会の日本では武器となる。それをを放棄するってんだったら相応に別のものを用意してこそだろ」
「別のもの」
「早い話コネとか」
「なるほど」
彼は頭がキレたし、話題も崇高なものが多かった。いつもはバカっぽい声で延々とドーナツについて語るくせに、時々小難しい話を楽しそうに話した。そんな彼の姿を僕だけが知っているような気がしてちょっと優越感に浸った。僕がイマイチ理解できずに適当に相槌を打っていると分かりやすく言葉を言い換えてくれるのも嬉しかった。
「そろそろ勉強の話辞めね?」
「馬鹿、こういうのはちゃんと考えて自分なりに答えを持っといた方が良いんだよ」
「あーもうわかったから。で、今日は何食べてんの?」
「お前なあ…」
「何食べてんの?」
「…ドーナツ」
「それは知ってる」
「ショコラダマンド」
「なにそれ」
「新作」
「へえ。おいしそう」
「ん。うまい」
◇◇◇
4457:H @ h—_– 20×○/ / : : 通報 非表示
@—_– 夏休みの課題終わった?
>ギリセで。そっちは?
>余裕でアウト
>対義語で答えてくんなwてかそれやばくね
>流石に後悔してる。が、反省はしていない
>いや普通逆。反省しろよ
>えーやだ
>また同じことやらかすぞ
>なんにも変わってねえなお前は!ってか?
>進◯の巨人で草
>このネタ分かるんだ意外
単位危うくなってきたから一回控えるわ
嘘だろお前 がんばwww
嘘じゃない。から誕生日早めに祝っとくわ。おめでとう
ありがとうプレゼントは現金でいいよ
ごめん今日定期テスト終わった
辞めたかと思ったわ
ごめんて
え、もしかして浮上してる?
してるしてる
やほ
最近忙しい
辞めんの?
辞めないよ、まだ
まだ?
うん、まだ
なんかキャラ変わってね?
そ?たしかに口調忘れたかも
ふーん。そんなもんか
うん、そんなもん
10443: @ —_– 20×□/ / : : 通報 非表示
@ h—_–はぴばー。ど0なつ送りつけるから住所教えて
>ミスった。ドーナツ
@ h—_– 夏休みの宿題終わった?こっちは別の意味でオワてる
>なんか片時しろよ
>返事
7582: @ —_– 20×□/ / : : 通報 非表示
あけおめ
>あけおめー
>相変わらず誤字多くて草 そして自虐ネタ半年放置してごめんよww
5395::H @ h—_– 20××/ / : : 通報 非表示
キラキラ☆キャンパスライフ(笑)するからこのサイト卒業すっかも
10448: @ f—_– 20×○/ / : : 通報 非表示
@ h—_–はぴば。半年放置は流石に酷いwキリ番取ったのこれでお相子な
10449: @ f—_– 20×○/ /
@ h—_– おひさーー生きてる?
10450: @ f—_– 20×△/ /
@ h—_–あけおめ 今年受験?頑張れ
10451: @ f—_– 20×△/ /
フォロつぶ寂しすぎんかw
10452: @ f—_– 20×△/ /
Twitter垢作った→@ =--==
10453: @ f—_– 20×△/ /
パスワードごとク消しするわ
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# 最近ドーナツコンビ見なくね
>辞めたんだっけ
>片方はだいぶ前に辞めてる
>もう片方も最近見ない
# 最近ドーナツコンビ見なくね
確かに
#
なにそれ
#
?
#
うわなつ
#
だれ
>深夜のマシンガントークの人。お前さては新規だな?
◇◇◇
「じゃあ今月はもう浮上しないのか」
「ん。来月は浮上するよ」
「そう」
「あー、部活の合宿とかあんだよね。あと勉強の方も結構やばいし」
「…辞めるの」
「いやなんでそうなる。辞めないって。ま、辞めても時間あけて戻ってくると思うし」
彼はよく単位が危ういから、なんて言って浮上を控えていたがそれも嘘なんじゃないかと思うようになった。だって、彼は自分よりもずっと聡明で博識で将来を見据えて、大人びていたから。
時々思い出したように返信をくれたけれど、それもいつしかピタリと止んだ。
まあ、所詮はSNSである。彼にとって自分はその程度の存在だったのだろう。
◇◇◇
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7584:H @ h—_– 20×◇/ / : : 通報 非表示
@ —_– 誕おめ
>ちげーわ受験はその前の年だわ
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トングを鳴らしたくなるのは脳のガス抜きをしたいかららしい。なんて何時か見た動画の内容を思い出しながらどれを買おうかと物色する。ドーナツなんて何年ぶりだろう。歳を重ねるごとに脂っこいものはあまり好かなくなるものだ。大学を卒業してからはすっかり食べなくなった。
「フレンチクルーラーは凍らせると美味しいですよ」
急に声をかけられて思わず顔を上げた。ああ、失礼、と後から断りを入れたのはダウンジャケットをゆるく着こなす洒落た男だった。
「ハハ、気にしてませんよ。美味しいですよね、凍らせたフレンチクルーラー。やったことあります」
にしてもドーナツ好きなんですね、なんて付け足せば相手の顔はへにょりと緩む。
「そうなんですよ〜、昔からもうぞっこんで。よく誕生日とかに箱買いしてたんです」
へえ、詳しいんです?と聞くと期間限定のマグカップとかも持ってて、なんて聞いてもいない情報を長々と嬉しそうに話す。あまりに長いので適当に頷いて流した。
「んん゛、アー、おすすめとかあります?」
「ドーナツの優劣を種類で付けるのはなんというか、ナンセンスといいますか。全部美味しいですよ」
「はあ」
若干的外れな返答に気の抜けた声が出る。
「まあ気分ですよ、そういうものじゃないですか。今日はオールドファッションの気分かな、焼くと美味しいんですよ、だから冬場にぴったりで_」
へー、ほー、と聞き流しながら相づちを打つ。一旦喋りだすと止まらない様子があいつに似ていた。ドーナツ好きは皆こうなのかと呆れる。呆れてうっかり見知らぬ人相手に溜め息をを吐いてしまいそうになるけれど、その感覚がなんだか懐かしい。結局、その日はポン・デ・リングを買うことにした。
__とあるサイトTにおけるユーザーHについて。今でも彼は僕の記憶に残っている。
◇◇◇
元ユーザーHは語る。
「今考えれば馬鹿らしい話ですけどね」
――確かに当時は楽しかったですけど。サ終したら会話履歴も何もかも無くなりましたしね。連絡先も交換してないですし。夢か何かだったんでしょう、画面越しで見られる姿なんて仮初めのものですから。とりあえずそんな感じです。…まだ何か?
彼はオールドファッション片手に笑う。
「そうですね。まあ、確かにそこには友情がありましたよ」
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