「It can't end with an unhappy ending」
この作品は【バレンタイン総選挙】「I don't need anything but yours」の続編です。まだ読まれてない方はそちらを先に読むことをお勧めします。
【バレンタイン総選挙】「I don't need anything but yours」
https://tohyotalk.com/question/739916
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3月14日 12:46
「あいつ…マジでどこにいんだよ…話す時間なくなっちまうよ…」
俺、尾黒 葉介(おぐろ ようすけ)はそんな独り言を言いながら、昼食の時間であるのにも関わらず、弁当を入れた鞄を持ってとある人を探して廊下を歩いていた。
「いいじゃんかよー!どうせ1人なんでしょ?」
それまで俺の足音しかなかった廊下が徐々に聞きたくもない悪声が満ちてきた。その声の所には3人の男子生徒(クソども)とそのクソどもに囲まれてたじろいでいる女子生徒がいた。クソどもに見覚えはなかったが、女子生徒のほうには見覚えがあった。というか、その女子生徒こそが探していた人物である甘宮 果歩(あまみや かほ)であった。そして俺の脳内で一つの結論に至る。
(弁当ナンパかよ…)
正直そう考えた俺でさえも理解できないような馬鹿らしさだった。
「俺の後輩に何の用があるか知らねぇけど、俺のがよっぽど重要な用があっからどいてくんねぇか?」
態度は少し威圧を持たせたが、クソどもが悪い奴らだと決まったわけではないので少し優しめに言った。だが、
「あ?何言ってんだてめぇ?随分と生意気だなぁ?」
と、クソどもの中で1番雑魚そうな奴がこちらを睨みながら寄ってきて殴りかかろうとした。
「邪魔。」
(俺、3年だし明日で卒業なんだけどな…)
俺はそんなことを思いながら俺はそいつの顔に軽い裏拳を放った。その一発でそいつが倒れるともう1人がこちらを見て攻撃態勢になって、こちらに向かってきた。
「再放送かよ。」
俺がもう1人にも同じようにしようとした瞬間、果歩の近くにいた残りの1人が果歩の手首を掴んだ。
(逃げんじゃねぇよ!ドブカスが)
俺は心の中でそう叫びながら向かってきているゴミを処理しながらドブカスに向かって全力の上段回し蹴りを放った。切れた息が少し戻りそうになった瞬間、俺はすぐさま果歩の手を取って走り出した。
「え?ちょっ!先輩!?何やってるんですか!?バカなんですか!?」
「どのこと言ってんだ?」
果歩は驚きながら大声を出した。まぁ、正直言って無理もない。この一連の出来事は30秒もかからず起きたことなのだから。
「全部ですよ!全部!!ていうかこんなことやっていいんですか!?問題になりますよ!?」
「あぁ、そうだなぁ。やべぇなぁ。」
「なんでそんな落ち着いていられるんですか!?もうバカバカバカバカ!」
子供のように怒り続ける果歩に呆れながらも俺は会話を続けた。
「お前は俺のもんなんだから放っておけるわけねぇだろ。だからしゃーない。」
「…え?……ちょっ…えっ?……ズルいですよぉ…そんなの…」
「え?どした?え?なんか嫌だったか?え?……なんかすまん!」
俺は果歩の異常な反応に戸惑いながらもとある場所は向かっていた。その場所とは、
「ほら、着いたぞー!やっぱ、屋上ってのは落ち着くよなぁ」
そう。学校の屋上であった。『普通の学校は屋上は解放されていない』という意見もあるかもしれないが、俺は知らん。
「はぁ…もう…疲れました…ナンパはされるし先輩は先輩だし…」
「おうおう、どういう意味なんだおい?てか、さっさと昼飯食わねぇと、授業に遅れちまうぞ?」
「それを邪魔した人の中に先輩も入ってますよ?」
「…………なんのことだ?」
「はぁ…そんなのだから先輩はバカにされるんですよ…?」
そんな会話をしながら俺たちは弁当を食べ始めた。いつものように途中でおかずの交換をしたりしながら時間は過ぎていったが、その中にも違和感があった。今日が3月14日であるからだ。俺はそれを察して、鞄の中を探りながら少し無理矢理口を開いた。
「そういや、一ヶ月前のお返しを用意しててな…ほら、これだ。」
その言葉とともに取り出した物とは、白い手縫いのハンカチであった。
「え…なんというか…先輩らしくないですね…頭でも打ったんですか?」
「まずは感謝やろがい」
「アッハイアリガトゴサイマス…で、なんでハンカチにしたんですか?先輩1人の判断だとは思えないんですけど…」
「ひでぇなぁ…まぁ、実際そうなんだけどな。1年の生意気じゃないやつに勧められて、作るときもそいつに手伝ってもらったんだ」
「なんで生意気かどうかの情報が含まれてるんですか…ていうか、ほんとに上手く出来てますねぇ…相当手間かかったんじゃないですか?」
果歩はそんなことを言いながら、俺から手渡されたハンカチをまじまじと見つめていた。
「はっはっはっ!あんまり俺を舐めるなよ?こんくらい余裕だったわ!」
俺はそんなことを口にしたが、実際はただの強がりで大嘘であった。馬鹿にされたくなかったという理由もあるが、それ以上に、強い自分でいたかったからだ。数秒の沈黙の後、少し息を吸って俺は口を開いた。
「なぁ、付き合ってくれねぇか?」
「買い物にですか?」
「とぼけんじゃねぇよ、お前のことが好きだから付き合ってくんねぇかってことだよ…っておいおいどうしたんだ?」
俺の言葉を聞いた果歩の目からはなぜか涙が溢れ出ており、俺の膝を枕にしてゆっくりと倒れてきた。
「だって…私、ずっと先輩のことが好きで…でも、怖くて…ずっと言い出せなくって…このまま離れ離れになると思ってたから……」
(そんなことかよ…)
いつもとは全く違う涙ぐんだような声で語られた思いを聞いた直後の俺は思わずそんなことを考えてしまったが、果歩の想いを考えてみると決してそんなことを言う気にはなれなかった。言葉を受け止めた後、俺は思い出したかのように、
「で、返事は?」
と、少しそっけなく聞く。
「もう…そんなの聞く必要あるんですか…?これだから先輩はおバカさんなんですよ?」
いつものような生意気な態度に戻ってきた果歩の顔は涙で濡れていながらも少し笑みを帯びていた。
「はっは…そうかもなぁ。でも、果歩は果歩で泣き虫だぞ?」
「ひどいこと言いますね…先輩が泣かせたんですよ…!責任とってください!責任!」
「はいはい、分かりましたよー」
果歩の言葉を聞いて冷静さを取り戻してきた俺もいつものように言葉を交わそうと意識した。
(5限、サボるかぁ…)
そう思いながら、俺は憂色を晴らした果歩を膝に乗せながら明るい昼空の下で話した。
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