最弱スキル【鑑定】で始める、最強魔王の後継者
第一章 追放と覚醒
「……はは、見ろよ。“鑑定”だってよ。魔法も剣も使えないってさ」
騎士たちの嘲笑が神殿に響く。
王都リュミエール、召喚の間。
金と大理石に彩られた荘厳な空間の中、結城晴翔は一人、床に座り込んでいた。
目の前に浮かぶ青白いウィンドウには、無慈悲な文字列が並んでいる。
結城晴翔(ゆうき はると)
Lv:1
職業:鑑定士(Apprentice Appraiser)
スキル:鑑定【EX】
魔力量:E
筋力:E
敏捷:E
知性:C
運:?
(……ふざけんなよ。これ、俺一人だけ明らかに弱すぎるだろ……)
同時に召喚された他のクラスメイトは、炎の剣士、雷の魔導士、風の暗殺者……と、いかにもRPGでチート級の職業とスキルを与えられていた。
晴翔に向けられる視線は、同情、侮蔑、そして──無関心。
「結城くん、君は……王都にいても足手まといだ。しばらく辺境で暮らしてもらう。神の加護があるなら、生きていけるだろう」
無表情な王の宣告。それが、異世界における“死刑宣告”であることを、当時の晴翔はまだ知らなかった。
三日後。
王都を出て、最果ての村「ルヴェナ」に追放された晴翔は、崩れかけた倉庫のような小屋を住処にされ、ろくな装備も支給されず、野宿同然の生活を送っていた。
「……クソみたいな世界だな。勇者って、もっと歓迎されるもんじゃないのかよ……」
冷え切った床に座り、晴翔は空腹に耐えながら、ただ一つのスキル【鑑定】を試し続けていた。
木の葉を鑑定すれば「薬草(ランクF)」
石を鑑定すれば「ただの石ころ(無価値)」
虫を鑑定すれば「小型毒虫(微量の神経毒)」
(──でも、これ。異常な精度だ……)
晴翔は気づき始めていた。
【鑑定】の視点は、“表面の情報”ではなく、“真の本質”を暴くものだと。
そしてその夜。
彼は村の廃墟の中、封印された古びた石碑を見つける。
スキルを発動する──
【対象:封印石碑】
鑑定結果:魔王アスヴァルトの魂封印核
状態:極限封印中
解放条件:魔王適合者との魂融合
「……魔王?」
その瞬間、晴翔の目に闇の文字が浮かび上がる。
黒き炎が石碑から立ち昇り、彼の身体を包んだ。
魂融合開始──適合率:100%
魔王スキル【奈落の支配者】を継承します
そして、世界が静かに変わり始めた──。
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)