最弱スキル【鑑定】から始まる、最強魔王の後継者
第二章 奈落の支配者
翌朝、晴翔は目を覚ますと、己の中で何かが“根本的に変わっている”ことを直感した。
体は軽く、空腹感すら感じない。そして視界の端には、以前にはなかった黒いウィンドウが浮かんでいた。
――魂融合完了。スキル【奈落の支配者】を継承済み。
【奈落の支配者(Lord of Abyss)】
ランク:???
効果:対象の本質に干渉し、情報操作・強化・吸収・支配が可能。
補助能力:奈落視界、魂収束、封印解除、属性変換(闇)
「……チートってレベルじゃねえぞ、これ……」
心臓の奥で静かに脈打つ闇の力。だが、不思議と恐怖はない。ただ、異様なほどの“しっくり感”があった。
それが、魔王の魂と完全適合した証なのだろう。
晴翔は廃墟から出ると、村の外れの森へ向かった。昨夜まで恐れていた暗闇すら、今はまるで故郷のように心地よい。
「……試してみるか」
目の前の腐った切り株に手をかざし、【鑑定】を発動。そして、続けて【奈落の支配者】の力を重ねた。
【対象:腐朽木】
本質:精霊樹の欠片(腐敗状態)
状態変換:可能(浄化+魔力注入)
「変換……!」
晴翔は直感でイメージを叩き込む。次の瞬間、黒い霧が切り株を包み込み、腐った木材が淡い光を帯びた“魔樹の核”へと変化する。
【アイテム入手:魔樹の核(ランクB)】
「すげぇ……ゴミみたいなもんが、レア素材に……!」
この時、晴翔は確信した。【鑑定】はただの確認スキルではない。本質を見抜き、【奈落の支配者】でそれを書き換える。この二つのスキルの組み合わせは、神をも超える力になり得る。
しかし、力には代償もある。
ふと見ると、指先が黒ずみ始めていた。魔王の力は、人間の肉体には強すぎる。使いすぎれば、いずれ己が“人”でなくなる――そんな予感が胸に広がる。
(……それでも、俺は強くならなきゃいけない)
晴翔の脳裏に、王や騎士たちの嘲笑がよぎる。
「足手まとい」「無価値」「追放者」――そんな言葉たちが、今も胸の奥に棘のように刺さっている。
「見てろよ……俺を捨てた連中。今に後悔させてやる」
その時、森の奥から唸り声が響いた。
姿を現したのは、巨大な狼型魔獣――ダスク・ウルフ。牙は刃のように鋭く、唾液からは毒気が漂う。
だが、晴翔の瞳に恐れはなかった。
「鑑定」
【対象:ダスク・ウルフ】
弱点:視神経中枢(闇属性に脆弱)
隠し要素:魔核の暴走寸前(吸収可能)
「面白い……試させてもらうぞ」
手をかざし、【奈落の支配者】を発動。
黒き闇が狼の体を飲み込み、内部の魔核だけが晴翔の手の中に転送される。次の瞬間、魔獣は崩れ落ち、動かなくなった。
【魔核吸収完了:魂力+30】
ふぅ……と息をつき、晴翔は静かに呟いた。
「これが……“支配者”の力か」
まだ始まったばかりだ。この異世界には、彼を嘲る者たちが山ほどいる。そしてそれ以上に、この力を狙う者たちも。
だが今の晴翔には、それすらも楽しみに変えられる自信があった。
闇の支配者は、まだその姿を誰にも知られていない。
それでも、世界は確かに震え始めていた――。
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