「未来視とIFで学園無双 〜転生魔王、正体を隠して妹と日常を守る〜」
第1章:転生魔王、初めての学園で違和感を抱く
「ふぅ……学園なんて、何百年ぶりだろうな」
朝の陽光を浴びながら、ナツキ・レオンは制服の襟を直した。魔王として世界を焼いた日々が、まるで遠い幻のように思える。
「お兄ちゃん、緊張してる?」
横で笑う妹、リアはまだ無邪気だった。
この世界に来てから十数年。彼女は、本当の妹ではない。だが、血より濃い絆がそこにはある。
(この世界では、リアだけは絶対に守る。それが俺の選んだ“IF”だ)
通い始めたのは、名門・エルステラ魔導学園。
貴族や才能ある者たちが集まる学園で、ナツキ家もその一端を担っているという設定らしい。魔王だった頃のカリスマと知識をベースにした詐欺みたいな適応能力で、入学はあっさり決まった。
「初日は身体検査と適性試験だけだって。頑張ろうね、お兄ちゃん!」
リアの声が、ナツキの中に温かく響く。
だがその温もりの中に――不穏が、あった。
(……未来視)
ナツキの目が細められる。時の流れを断片的に覗き見るその能力は、さっきから何か“妙”な像を何度も映し出していた。
「黒い霧……封印……そして、リアが……!」
脳裏に焼き付く映像。
校舎裏の旧魔導塔。開かれた封印。赤い魔眼と、崩れる地面。
その中心に、リアが泣き叫びながら立っている――。
「やはり、この学園にも“魔の遺産”が残っていたか」
ナツキは決意する。
(俺の存在が目立てば、いずれ過去に繋がる。だが……動かねば、リアが死ぬ)
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「……いや、なんでもない。リア、先に教室に行っててくれ」
「うんっ!」
妹が去った瞬間、ナツキは誰にも気づかれぬ速度で屋上へと飛び上がった。
彼が動けば未来が変わる。未来が変われば、IFが増える。
ならば――選び続ければいい。
最も“妹が笑っていられる未来”を。
「旧魔導塔、だな。さて、最初の介入といこうか」
魔王はまだ、影にすぎない。
だが、学園の平穏は――その日を境に、静かに歪み始めた。
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