【夏の思い出総選挙】小説・最後の風鈴 ―涙の夏―

6 2025/08/24 18:04

最後の風鈴 ―涙の夏―

夏のある日、咲(さき)は古い縁側に座っていた。

風鈴が、涼しげに揺れて、かすかな音を立てる。

「ねぇ、今年も夏祭り行こうね」

小さな声は、もう二度と返ってこない。咲の前には、もう誰もいない。

でも、咲は覚えていた――幼い頃、兄が作ってくれた風鈴のこと。

今年の夏も、風が吹くたびに、あの笑顔が耳元で笑うような気がした。

咲は風鈴をそっと握りしめ、目を閉じた。

「来年も…絶対、会おうね」

風鈴が鳴る。

夏は、終わるけれど、心の中のあの人は、まだここにいる――確かに、そばにいる。

そして、涙をぬぐう咲の頬に、夏の光が温かく降り注いだ。

消えない思い出が、風と一緒に胸に響く――永遠に。

夜になり、縁側に残された風鈴が、静かに一度だけ大きく鳴った。

その音に、もう帰らぬ兄の声が、はっきりと――「さき、ずっと待ってるよ」と重なった。

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