【夏の思い出総選挙】小説・最後の風鈴 ―涙の夏―
最後の風鈴 ―涙の夏―
夏のある日、咲(さき)は古い縁側に座っていた。
風鈴が、涼しげに揺れて、かすかな音を立てる。
「ねぇ、今年も夏祭り行こうね」
小さな声は、もう二度と返ってこない。咲の前には、もう誰もいない。
でも、咲は覚えていた――幼い頃、兄が作ってくれた風鈴のこと。
今年の夏も、風が吹くたびに、あの笑顔が耳元で笑うような気がした。
咲は風鈴をそっと握りしめ、目を閉じた。
「来年も…絶対、会おうね」
風鈴が鳴る。
夏は、終わるけれど、心の中のあの人は、まだここにいる――確かに、そばにいる。
そして、涙をぬぐう咲の頬に、夏の光が温かく降り注いだ。
消えない思い出が、風と一緒に胸に響く――永遠に。
夜になり、縁側に残された風鈴が、静かに一度だけ大きく鳴った。
その音に、もう帰らぬ兄の声が、はっきりと――「さき、ずっと待ってるよ」と重なった。
いいねを贈ろう
いいね
6
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する 
