青春に夏を乗せて
——「何でそんなこと言うの?私の気持ち、全然分かってないじゃん!」
兎海の大きな声が教室に響いた。
蒴亜は、兎海の言葉に胸を締め付けられる思いで兎海を見つめている。その顔には、汗が浮かんでいた。
最近兎海と雨愛との関係がギクシャクしていて、三人組が崩壊してしまわないか蒴亜は心配だったのだ。
兎海と雨愛は、蒴亜の知らないところで遊んだりしている。
「私は心配なの!今まで仲良し三人組、って感じで仲良くしてたけど最近兎海と雨愛が二人で遊んだりしてるのが!!」
蒴亜は、兎海に負けじと反論を心がけてみる。だが、それは無駄だった。兎海は相変わらず鋭い目つきで蒴亜を睨みあげ、怒鳴る。
「私が誰と仲良くしようが私の勝手でしょ!私には私の友達もいるわけだし、蒴亜に干渉される筋合いはない!」
頭が真っ白になる蒴亜。怒りなのか悲しみなのか、それとも悔しみなのかよく分からない感情が込み上げてくる。
「でも、私は三人で仲良くしたいよ…。だって、三人組は、三人組は……。」
「一人が余ってしまう可能性があるんだとん」。そう言い終わる前に、兎海は近くにある机を叩き、勢いよく立ち上がった。
「それは蒴亜の思い込み!!私がどうするのかは、私が決めるべきでしょ?!」
今までずっと仲良くして保ってきた友情が、こんな簡単に崩れてしまうだなんて思いもしなかった。
「はあ…もういいよ、兎海…。言い争うのも疲れた。私たち、一旦距離を置いた方がいいのかもね」
そう言って、蒴亜は自分の席に戻っていく。後ろから兎海の声が聞こえてきたが、聞こえないフリをした。
数日後、待ちに待った夏祭りがやってきた。兎海な雨愛と喧嘩する前に「一緒に夏祭り行こうね!」と約束していたので、喧嘩をしても一緒に夏祭りに行くことになったのだ。
蒴亜は浴衣を着て、夏祭り会場に着く。だが、それは楽しみからの晴々とした表情でなく、不安な気持ちが詰め込んだ暗い顔だった。このまま、仲直りできなかったらどうしよう。だとしたらあの二人で仲良くなるのかな。そんな思いが込み上げてくる。
周り見渡すと、提灯の明かりが辺りを照らしている。
しばらくすると、向こう側から兎海と雨愛が楽しそうに喋りながら歩いてきていた。
「あ、兎海…雨愛…」
蒴亜は気まずそうに二人の名前を呼んでみるが、二人は反応せずに通り過ぎた。
楽しく過ごすはずだった夏祭りは、虚しい気持ちでいっぱいになった。
そんな時、二人が蒴亜に近づいてくる。
「蒴亜…ごめんね。私たち、友情が割れちゃいそうだったのに放置しちゃって、壊れたら怖いと思ってて、勇気が出なくて…。」
突然の謝罪に蒴亜は戸惑うが、兎海の手をしっかりと握った。
「うん…私こそ、ごめん。兎海の気持ち、考えてなかったよ…。三人組は一人余っちゃうのにね……」
暖かな気持ちがまた心の底から湧き上がる。
そのときだった。
蒴亜たちの仲直りを祝うかのように、大きな花火が空に飛び散ったのだ。
——蒴亜たちの『友情』が本物だと言い聞かせているみたいに。
「………」
突然の花火の音に、沈黙が降りる。ギクシャクして凍ってしまった関係は元通りになり、新たな友情として生まれたのだ。
変化も生まれるものだろう。
「一緒に屋台回ろうよ」
雨愛の静かな声が、沈黙を破った。
友情に喧嘩は付きものだが、それによって仲がより深まるという言葉は本当だったようだ。花火が夜空に溶けていくのに対し、三人の友情は新たな光で輝いていく。
それが友情であり、親友なのだと。
蒴亜は、感じたのである。
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