またねとオルゴール
僕には好きな人が居た。その子は音楽室でピアノを弾いて小さな声で歌っていた。僕はその歌を聞くのが好きで、いつも女の子よりも先に音楽室に行き隠れて女の子の歌を聞いた。中学生になり女の子とは離れてしまったが時々女の子が歌っていた曲を口ずさむ。自分でも女々しいな、と思う。僕も高校生になり新しい恋を始めよう。と意気込んだが何年も想いを寄せていたから簡単には忘れる事ができない。毎日のように女の子の顔が頭に浮かぶ。そんな感じで毎日を過ごしていた。だが先日、女の子が亡くなったと手紙が来た。死因は病気と言うことらしい。手紙をくれたのは女の子と僕の共通の友達。友達は
「辛いだろうけどお前も来てくれたほうがあの子も喜ぶから」
と僕を強引にお葬式に引っ張っていく。僕は黒いスーツを着て参加する。僕は棺桶の近くに行き女の子の顔を見る。昔とは随分と変わり綺麗な女の子になっていた。女の子は微笑んでいた。僕は棺桶に手を載せて涙をこらえる。よく女の子が言っていたから。
「お別れは寂しいけど、どこかできっとまた会えるから絶対に泣いちゃダメ。またねって言ってお別れしようよ」
僕は彼女の顔をじっと見ていた。ぼーっとしていると友達が肩にポンッと手をおいてくる。
「なぁ、やっぱり途中で帰るか?」
「何いってんだよ。最後まで見届けないと...」
「自分の顔見てみろよ。ヤバいぞ。ちょっと休憩しようぜ」
「...あぁ」
友達に手を引かれ外へ出て近くの公園に行く。僕はベンチに座ると友達が缶コーヒーを買ってきてくれた。
「ほら。これ飲めよ。」
「サンキュ...」
「なぁお前に渡したいもんがあるんだが...」
「何だよ。この間貸した金か...?今じゃなくても、」
「馬鹿野郎。俺が金を返すと思うか?そんなんじゃなくて手紙だよ。あの子からの」
「手紙?...今読まなきゃダメか?」
「あぁ。あの子が言ってたんだ。葬式の途中でこの手紙彼に渡して、ってさ」
「...分かった。」
僕は友達から受け取った手紙を開く。
『〇〇くんへ
いつも私の歌聞いてくれてありがとう。いつも私の歌を歌ってくれてるって聞いたよ。そんな君へ私からプレゼントがあるんだ。きっと△△くんが持ってるから受け取って』
そこで手紙は終わっている。僕は手紙をじっと見つめた。あの子の字だ。僕は目の端から涙が流れる。友達がハンカチとともに袋を渡してきた。これがプレゼントなんだろう。袋を開けてみると中には小さくて可愛らしい宝箱が入ってた。これは何だろう。僕は宝箱の隣りにゼンマイが付いているのに気づきそれを回した。すると宝箱がゆっくりと開き音楽が流れ始める。これはオルゴールみたいだ。オルゴールの中では二人の男女が踊っている。流れる音楽は女の子がいつも歌っていた曲だった。
「なぁ俺寒いから部屋の中入ってくるな」
友達は立ち上がると部屋の中に戻っていった。僕は我慢していたものが溢れて声を出して泣いた。少し落ち着いてくると袋の中に紙が入っているのに気付いた。文字が書かれている。内容は
『ありがとう。大好きなあなたへ』
...あぁ。酷いじゃないか。僕の欲しかった言葉を言って去っていってしまった。僕があの子に言い返すこともまたあの子の歌を聞くことももう叶わない。
「ありがとう。僕も大好きだよ。またね。」
僕は空に向かって叫んだ。「さようなら」は言わない。「またね」、でお別れしよう。

