とーと事件7章

6 2025/11/10 20:28

第七章 再起 ― うまうまレタスとの邂逅

 暗闇の中で、蓮は目を開けた。

 息を吸うと、肺が焼けるように痛い。

 身体のあちこちにひびが入り、血が乾いてこびりついていた。

「……ここは……どこだ……?」

 耳に届くのは水の滴る音だけ。

 周囲には倒壊したオメガタワーの瓦礫が散らばっていた。

 サタンの咆哮も、ガリウムの姿も、もうどこにもない。

 彼は、死んでいなかった。

 スキル《疲れない能力》がギリギリで命を繋いでいた。

 だが、今のレベルは変わらず「1」。

 体内の魔力もスキル値も、ほとんどゼロに近い。

「……ここから……もう一度だ……」

 蓮は瓦礫の上に立ち、静かに拳を握った。

 仲間たちは無事逃げた。

 あとは、再び強くなるだけ。

 そして、運営四天王──いや、“ガリウムとサタン”を倒す。

 夜空の下、ひとつの影がゆらりと現れた。

 月光に照らされて立つ人物。

 長い前髪で片目を隠した青年。

 フードの下からは緑がかった髪が覗き、

 その手には一本のレタスを握っている。

「……お前が、蓮だな?」

「……誰だ?」

「名乗るほどの者じゃないが……そうだな、呼ぶなら“うまうまレタス”とでも呼べ。」

「は……?」

 蓮は思わず眉をひそめた。

「変な名前だと思うだろ? でも俺の“象徴”なんだ。

 俺は“奪う”んだよ。力を。一時的に、な。」

 青年──うまうまレタスは静かに右手を上げた。

 瞬間、空気が歪む。

「ッ……!? 俺のスキルが……!」

 蓮の身体から光が抜けるような感覚。

 《疲れない能力》が、まるで霧のようにレタスの手に吸い込まれていった。

「なるほど……“疲れない”か。悪くない。」

 レタスの瞳が輝き、彼は腕を軽く振る。

 周囲の瓦礫が、まるで羽のように宙に浮かび上がった。

 その動きには一切の疲労の色がない。

「……どういうつもりだ……?」

「俺は敵でも味方でもない。

 “バランス”を保つために存在している。

 この世界は、今、運営もお前らも、どちらかが勝っても崩壊する。

 だから俺は、強すぎる者から一時的に力を奪い、均衡を取る。

 ……それが俺の役目だ。」

 蓮は拳を握る。

「それでも、俺は運営を倒さなきゃならない。」

「分かってる。だからお前の力は返す。

 だが、忠告しておく──お前は今、“サタン”という存在を甘く見ている。

 七つの大罪、72柱……それらを同時に制御できる者は神にも等しい。

 もし立ち向かうつもりなら、“それを超える存在”になれ。」

「……超える存在?」

「そうだ。

 この世界の“レベル”という概念すら塗り替える存在だ。」

 レタスの声が静かに響く。

 そして、再び右手を掲げる。

「試してみるか? 蓮。

 お前の“限界”ってやつを。」

 次の瞬間、周囲の空気が一変した。

 うまうまレタスの周囲に、無数の光の輪が浮かび上がる。

 その輪の中には、かつて蓮が見たはずの72柱の悪魔のシルエットが映り込んでいた。

 「……お前、どうしてそれを……!」

「“奪った”のさ。ガリウムの力の一部をな。」

 蓮は一歩後ずさる。

 ただの能力泥棒じゃない。

 この男、確実に運営の幹部クラスとも戦っている。

 だがその瞳には、敵意がない。

 ただ、純粋な“興味”と“観察者の冷静さ”があった。

 瓦礫の上で、二人が向かい合う。

「……俺はお前を倒すつもりはない。

 けど、俺の成長を試すつもりなら、受けて立つ。」

 蓮は息を整え、拳を握る。

 全身に微かな光が宿る。

「いい目だ。

 だったら──見せてみろ、“未来を変える力”ってやつを。」

 うまうまレタスの体から、再び光が弾ける。

 周囲の空間が歪み、二人の間に広がるのは、

 かつてサタンが現れた“紅い空”の再現。

 まるで、再びオメガタワーの頂で戦っているかのような幻影。

 蓮は拳を構える。

「俺は……もう逃げない。」

「なら、証明してみろ──“奪われても、奪えない魂”があるってな。」

 二人の衝突が、夜の闇を貫いた。

 爆風が巻き起こり、地面が裂け、星々が揺れる。

 その戦いは、やがて“蓮の覚醒”へと繋がっていく――。

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おもしろ2025/11/10 20:28:53 [通報] [非表示] フォローする
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