【小説読んで!!】思い出のパンを、半分こ。

10 2026/03/22 00:12

石造りの小洒落た街に、どこからか香ばしい匂いが漂っている。

細い路地を抜けると、小さなパン屋がある。

木の看板は色あせ、窓辺には焼きたてのパンが並んでいた。

客は多くない。だが、毎日必ず訪れる少女と、男がいた。

ある日の昼下がり、少女は栗色の髪を揺らし、扉を押して入ってくる。

「今日も、ひとつだけ。」

少女はそう言って、決まって一番小さなパンを選ぶ。

代金を置き、静かに去っていく。

ある日、老人は声をかけた。

「どうしていつも、それだけなんだい? もっと食べた方がいい。」

少女は少し考えてから、微笑んだ。

「約束してるの。半分こするって。」

「誰とだい?」

少女は答えず、パンを抱えて店を出た。

店主は、いつも店に来てくれる年端もいかない少女が、苦しい生活をしているのではないかと心配になった。

少しの罪悪感を抱えつつも、その後をそっと追う。

石畳を抜け、街外れの丘へ。

やがて少女は、小さな墓の前で立ち止まった。

風に揺れる草の中、彼女は腰を下ろす。

パンを二つに割り、片方を墓石の前に置いた。

「今日も来たよ」

やわらかな声で言う。

「ねえ、もう少しだけ待ってて。」

店主は遠くから、その光景を見つめる。

ご両親が、亡くなっているのだろうか...

胸の奥が、わずかに痛んだ。

そのとき、背後から声がした。

「優しい子でしょう。」

振り返ると、もう1人の常連の男が立っていた。

「......あの子を知っているのか?」

男は静かに頷く。

「ええ。この子と私は...結婚する予定でしたから。」

「......失礼、あの子とあなたでは親子ほど年齢が離れているように見えるが...」

店主は聞いた。

風が強くなり、草がざわめく。

「ええ、――あの子は私が16才のとき、病気で亡くなったんです。」

店主は息を呑む。

再び墓の方を見る。

少女は、誰もいない空間に向かって笑いかけている。

そして次の瞬間――

その姿は、夕焼けの光の中にすっと溶けて消えた。

残されたのは、割られたパンがひとつだけ。

男の腕には、袋いっぱいのパンが抱えられていた。

「約束したんです、半分こするって。」

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タグ: 思い出 パン 半分こ

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暮らし2026/03/22 00:12:42 [通報] [非表示] フォローする
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めっちゃ良かった!!悲しい話…

投票したよ👍


4: K三郎 @evangelion1 2026/03/28 00:07:54通報 非表示

総選挙2位おめでとう!!


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