ヒーローと巫女さん 六話:霊夢は意外と?
「目は覚めた?」
「んんっ・・・・・・・・・・・・・
はぁ?」
今は春、そして雄英高校初登校日。菫子宅に住み着いている霊夢は朝起きて、自身の布団から出た──────────はずだった。だが、目の前には八雲紫がいる。そして、あのスキマの空間の中だ。
「改めて、雄英合格おめでとう」
「何よ? 寝起き誘拐妖怪」
霊夢は目の前の出来事に少々動揺しながら、空間に腰掛け手の平を顎につけて見下ろしてくる紫を観察する。
数秒、無音が空間に響き、霊夢は声を発する。
「もしかして、私への頼み事が変わった?」
「というより建前じゃない方を、伝えようかと」
「もしかして、"幻想郷を救え"とでも言うつもり?」
霊夢は若干の笑みを浮かべて、冗談であることを示すが、
「そう。それ。」
「・・・はぁ?」
「外の人間たちが、これ以上個性を研究すれば、いつか妖力を発見されて、幻想郷が露呈する」
「そんなこと起こり得る? きっと何百年も後よ?」
霊夢は食い気味に言葉を返す。が紫は
「人間は舐めちゃいけないわ。特に貴方とか」
「・・・・・・・・・」
その言葉から、紫の一抹の不安と大きな責任を感じ取った霊夢は、
「ほんっと、世話が焼けるわね!」
今までより、スケールも、難易度も高い異変にワクワクしていた。
「貴方なら、きっと受けてもらえると思ったわ。不羈奔放に暴れてきなさい。そのための保険ももう用意したわ。」
「でも、私の基本的な仕事は幼魔調伏。それを忘れないでよね。」
「ええ、それは。
ああ、そろそろ私は仕事に戻らなきゃ」
「じゃ、お互い頑張りましょう」
そう紫と霊夢が話し終わるのと同時に霊夢の視界は、バサッという音と共に、布団の真上の天井へと元に戻った。
「とりあえず、最初は研究機関の追求かな、目星は雄英とぉ..... あっ、時間ヤバっ!!今日まだ菫子春休みだから、起きてないし、だから、朝ごはんもないし・・・・・間に合うかなぁ
遅刻したら理由は誘拐だわ 」
─────────────────────────────────────
予定よりは2本遅いが、霊夢は電車には乗ることができた。一応、菫子宅から雄英高校までは、電車とバスを使えば40分くらなので、電車やバスを乗り継ぎ、気がつくともうそこは雄英高校の正門前だった。
(受験の時も思ったけど、こんなに大きい必要がらあるのかしら?)
今後ともお世話になるので、改めて校舎を見上げながら霊夢はそう思う。やはり全国規模で最大級の校舎だ。正門をくぐり、霊夢はスマホなぞ、電子機器なんぞ、地図なんぞいらん。というふうに、頭に校内地図がはいってでもいるのか、ズカズカと歩みを進めていく。
(教室は1のA、1のA、こここを上がって右な気がする)
1年生用の張り紙にも見向きをせずに進むその様は、まるで校内を熟知している2、3年生ようだったとか。そんなふうに1年A組教室に辿り着けた。教室に入ろうとドアに手をかけた瞬間それを反射的に止めるほどの怒号が、はっきりと聞こえる怒号が、教室の中から響いた。
「てめ!!どこ中だゴルァッ!!!??」
(けっこう分厚そうな扉なのに、こんなにも克明に聞こえるんだ。喉にクジラでも飼ってんのかな。いやわからんわ。)
霊夢は、1人でボケながら、怒号の主をどうするか思案する。ただ単純に殴り合いは、1番手っ取り早く決着がつくが、1番後処理が面倒。ならば蹴り合いかと考えるがこれも違う。色々考えて
ドガッシャァァン!!!
教室の扉をわざと勢いよく開け、今の教室の状況を冷静に分析をする。教室へ入ると当然、教室内の全員がこちらを見るが、表情が周りと違うのが3人。こっちをすぐさま見た女子が1人─表情は驚きと安堵─アタマツンツンの奴が1人─怒りが続いている、こいつが怒号の主だろう─とメガネが1人─怒りも少し見えるが、諭すような感じがした─。その3人に注意しながら、この後の展開をしあんしているとメガネが"口論を中断して"挨拶をしてきた。
「おはよう、君は──誰だ?とりあえず B...俺は私立聡明中学校の...」
「飯田天哉ね」
「なっ、何故名前を... さては君ストーカーとやらなのか?」
若干引かれる。ため息混じりに霊夢が答える。
「いや普通に、入試科目に実技があるんだから対戦相手くらい、分かる範囲で事前に調べるでしょ?
・・・・・・そんなことより、飯田とアタマツンツンヤロー煩わしい。外まで聞こえてくる」
一層険悪な空気になる。飯田が謝ろうとしたのを掻き消してツンツンヤローが怒鳴る─おそらく、名前を知られてなかったのもあるだろう─
「てめぇなぁ!俺は爆豪勝己だ!!!どこ中だぁ?!こんなのを仲裁して、学級委員長気取りってかァ?!端役未満が!!」
「雑魚がいきがってんじゃないわよ、すっぽん未満。」
「・・・言ってくれるじゃねぇか、舞台の板材未満!!」
「喧嘩なら買うわよ?一文字の糸未満?さらに消えかかってるわねぇ、薄すぎてよ?!」
「あぁ!?────────────────────────────────
そんなような口論を霊夢は売り言葉に買い言葉、語彙を強めて、言葉を長くして、時間を稼ぐ。
(ここは学校で登校初日となれば警備も強化されている。だったら、わざわざ開けたままにしておいた扉のおかげで、怒声が聞こえて、そろそろ職員室の距離的に先生がくるはず...校内の地図覚えておいて良かったわー)
一年生用地図を見ずにズカズカ行けたのは、どうやら本当に頭の中に校内地図が入っていたらしい。そして霊夢の予想通り、だが予想外、来たのは芋虫の見た目をした寝袋を着た先生だった。というか寝袋から職員カードがみえなければ紛れもなく不審者だ。
「お前ら喧嘩なら他所でやってくれ、面倒だ」
その教室内の視線がその風貌と言葉のせいで小さな声でも大きく響き、その先生に注目が集まった。ツンツンヤローはさすがに分別?やメリハリ?はあるのか
「チッ....喧嘩はまた後だ...!」
「女だからって手加減しないわよね?」
口論は一時停止となった。互いに睨み合って、お互いが席に着くまでの間、いつのまにか先生が寝袋からでて、教卓についている。先生は2人が着席し、全員生徒がいることを確認すると
「早速だが、全員、体操服でグラウンド集合。あっちの更衣室で着替えろ。持ち物は特にいらん。貴重品は自己管理だ。急げ」
唐突。それが重なるような展開が続いてほとんどの生徒は戸惑っていたが、みんなとにかく急いで、なんとかグラウンドに全員集まった。
「集合まで、6分52秒... 君達は合理性に欠く、
おっと、自己紹介をしてなかったな、担任の相澤消太だ。
ということで今から体力テストを行う... のが例年の決まりなんだが、今年から変わってな、"体力、知能、精神の実戦実力検査"を行うことになった。」
「「「「ええ!?入学式は!?」」」」
「ない」
キッパリと担任がそう言い終わった時、キリよくバスがグラウンドに入ってきた。
「全員、バスに乗れ、入学試験の会場で検査だ」
(学校に行ってない私ですら驚くわよ... 流石に)
霊夢はそう思いながら、あの壁に囲まれた1つの町のような、そんな入試会場を思い出す。確か、地価の安い所だからまぁまぁここと離れていたような。そう思いながら、先生に何か言われたく無いために、1番乗りで、送迎用のバスへ、その入り口の階段を踏み込んだ。何か思いついたのか、そのまま後ろを向いて
「早くしないと、またなんか担任が煩いわよ〜。飯田、仕切るの向いてそうだから先導は頼んだわ〜」
霊夢が言い終わると、スッと車内へ移動する。飯田は一瞬、逡巡するが
「・・・皆!一列に並んで、つまらないように迅速に乗車するんだ!!」
(あいつアドリブ能力あるな... これからも押し付けるか、面倒事は。)
霊夢はそう思い、飯田に感謝した。そして飯田のおかげもあってクラス全員の21人がスムーズに乗り込んだ。バスの中を改めてみると、電車と同じような対面で座るような車内で、生徒たちを喋らせる目的が垣間見えるな、と思いながら若干安心した。全員が乗り込んで着席したのを見て、バスの運転手座席に近い所で相澤が
「こっから受験会場までの45分程度、自己紹介にでも使ってろ、試験の説明は会場についたらだ。んじゃ、俺は寝とく」
そう言うと、相澤は誰の邪魔にならないバスのとんでもないほどのすみっこで寝始めた。
(先生って、大変なんだなぁー)
全員がそう思ったその頃。霊夢は、入学したてクラスなので、なかなか会話が生まれずに、時間が過ぎていくことを防ぎたいので、相澤が動かなくなったのを皮切りに、バス内にある鉄の棒手すりにつかまって立ち、喋り始めた。
「・・・まぁ、先生が自己紹介をやれって言ったし、私からしようかな。名前は博麗霊夢、漢字は、まぁ後で。
好きな物は、お茶。好きな事は、寝ること。個性は、空をとべたり、弾幕を飛ばせたり、そんなもんね。入試はなんか、傷口を水で洗って応急処置だとか、怪我人の手当してたら受かったわ、勉強はあんまりできないけどよろしく!!!」
最後のよろしくの時に指の形をいいねにしておいた。のはどうでもよく、周りを観察すると、まぁまぁ、自己紹介の順番で揉めそうだなと気づいたので、
「う〜ん。自己紹介は、私から時計回りってことにしようかな。ってことで次の人よろしく」
ほんの少しだけ緊張して文が短くなっていた霊夢も喋るうちに、なんだかそれが無くなってきたように流暢になった。
そして、流れで、また1人また1人と、残り20人の自己紹介がどんどん進んでいった─────────────────────────────────────────────────
「そういえばみんなで打ち上げでもしない?」
そう言い出したのは霊夢だった。酒と宴会が日常である霊夢らしい。とそこに八百万が
「・・・ぜひお願いします! あー、場所は多分、私の家の方がいいかもしれません」
「なんかすっごいお嬢様なんだっけ。口調もお嬢様ってみんなそうなるのかしら」
「何か自分で言うのも、あれですが、お嬢様なので」
「へぇ〜。いや、まぁ、こんな天下一の学園だし、よくあることなのかしらね。だとしてもえげつないけど。じゃあ場所はそこでいいかなぁ」
「任せてください!! お茶でも、料理でもなんでもお出ししますわ!!」
「「「「なんか勝手に話進められてる〜」」」」
「あゝ、全員参加にするんだから、八百万と私だけで話するのも難よね。出欠はどうしようかな。今やるか後やるか」
その場には霊夢と八百万しかいないのかと言わんばかりに勝手に進む出来事。さっきまで、質問コーナーだったはずそれに軽く異を唱えたのは爆豪だった
「ちょっとまてやゴルァ!?開催日、持ち物、会費、八百万の家の場所もわかんねぇし!! アレルギーもあんだろ!!? ちゃんと考えろよそこもォ!!」
「・・・爆豪、意外と見直したわ。あんな口論を私としていたのに... こんなに心配できる人だったとは....」
「テメェ、なんか言ったカァ?」
「ははは、、、」

