ヒーローと巫女さん 第八話:チートは外部的なもの。ズルは内部的なもの
「同盟を組む」
「・・・・なんかだんだん驚くのにも慣れてきたかもしれない」
「飯田天哉、緑谷出久、麗日お茶子のチームとね」
「うん。まぁ、結構優しそうな人達だし、人数も少ないから、ワンチャン行けるかもね。で、場所は?」
「ざっと見てハイドできそうな建物を絞って、最初に方向を参照するに、多分、会場中心方向」
「合ってるの?それ」
「勘よ、勘。女の勘は当たるって言うでしょ。特に私」
2人はそこへ、なるべく建物の隙間を移動しながら、全力で向かう。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ」
「2回目の全力疾走お疲れの所だけど」
霊夢は建物に囲まれて薄暗い周りを見渡す。
「う〜ん。いるなら緑谷だけってところかしらね」
霊夢の耳には何も聞こえないが
「霊夢、後ろ方向からなんか...」
「素の耳の良さも半端ないわね、やっぱ音楽できる人は」
「.....なかなかやるわね、反応しないなんて、まぁでも安心して、そっちの人数は3人、こっちは2人、他は全て4人以上。私と緑谷。どっちのチームも"退学者なし"を目指してる。目標、戦力差、利害の一致。ここまでいえばわかるわね?」
「・・・・同盟」
後ろから緑谷がひょっこりと現れる。
「ええ、正解」
「同盟を組めば5人、チームでの規模はクラスで2番目になる。そしたらブツブツブツブツブツブツブツブツ─────────
「やっぱ喋り出すと止まらないタイプなのね....」
「それな」
「まぁ、これは同盟成立と言うことでいいの?他2人にはどう説明してるかわからないけど」
「ブツブツブツブツ...うん」
「それなら」
霊夢が握手するために手を前に出す。
「裏切りはもちろん」
「「ヒーローに相応しくない行為」」
緑谷も手を出して、握手と共に同盟が成立した。
「それで、僕以外の2人の場所だけど」
緑谷はポケットから石を一つ取り出して、霊夢に渡す。
「おお、無重力みたいに軽いわね。もしかしてお茶子の...」
「うん。一応、予備でもう1つあるから僕の分は大丈夫。それで、2人場所だけど、うん。もう3つ先のビルらしい」
「なるほど、これで通信を。よく考えたわね。こっちからの情報は石に力を加えて、お茶子のキャパ限界まで近づけたり遠ざけたりを繰り返してモールス信号的に通信ってとこかしら。大変ね。あっちからの情報は...ちょっとよくわからないわ」
「それはブツブツブツブツブツブツブツブツ」
「なるほど、わからんと思わせてわかった。」
「ええ...なんでこの2人、通じ合えてんの?」
─────────────────────────
場面と時は轟が氷壁で攻撃を防ごうとしたところまで進む。
「爆発しない...?」
そう思い、一瞬だけ目が泳ぐが、視界の端に捉えたもののせいで、それに目を合わせる。博麗霊夢が、空を飛んでいる。
「お取り込み中、失礼〜(のんき)」
「博麗か... 面倒な相手だ」
その瞬間、ビルが傾き、軋む大きな音を鳴らす程の大質量の氷が霊夢を襲う。が、飛んでいる霊夢にはちょいとばかり足りず、当たない。轟は、霊夢が"待ち"を選択するならば
「そんなに飛んでても、捕獲は出来ねぇぞ?」
と霊夢に背を向け、瀬呂、障子を追いかけるように氷の橋をビルにかけ、走る
「タイマンじゃ油断も誘えにくいし、好機を伺っているのよ」
霊夢がそう言い、轟を引き止めようとするが、霊夢をも見ずに
「知ってるか?"好機は2度君のドアをノックすると思うなよ"って言葉があんだぜ」
「私は東方の人だから、果報は寝て待つ主義なの」
霊夢はジャージに手を突っ込む。
(私が飛んでいる限り膠着状態。八百万のチームが今の所目立った参戦がない気になるけど。今は眼前の敵に集中した方が良さそうね)
思い立ったら即実行と、浮遊するのを辞めて轟が出した氷塊を滑り台の様にしてビルに多少転けながらも、勢いを残しつつ着地し、轟を追いかける。轟は、体格的にもインファイトならいけると思い、その追跡に対して真っ向から立ち向かおうと今決めた。轟は待ち構え、霊夢は滑り降りた時の勢いを消しながら、元のビルとは二つ先のビルの屋上で、互いに睨み合い、喋りながらだんだんと距離を縮めていく。
「お前が弾幕を打ってこようと氷壁で防げる。遠距離でチマチマやんのは無駄だ」
「それと同時に、あんたは私を凍結させることができない。なんせ炎を"使えない"からね。」
「チッッ!! "使えない"じゃなくて、"使わない"だ」
「腐った宝は宝じゃないのよ」
あと3メートルとなった刹那、霊夢が轟へと、素早く踏み込むが、その体勢のまま足ごと、屋上の床一帯を凍らされた。だが
「こんなので止まると思った?」
幻想郷で鍛えた脚力(普段飛んでいたはず)で無理やり凍らされた足元の氷を破壊してみせ
「化け物かよ」
「いや、これ、けっこー痛いわ」
轟を驚かす、もはやインファイトでも勝ち目はないと暗に示し。こうなると、もはや逃げるか、調整は難しいが、ジャージの一部分だけを出して、凍結させるしかない。
(博麗との距離、2m弱。一回広範囲のをやったが、震えはまだない。息を調えろ。ジャージの一部分でも出てたらいいんだ。)
轟はそれを狙うために、屋上を分担するほどの幅での高さ2.5mの薄い氷壁を貼った。
「悪いが、また逃げさせてもらう」
「あらそう。無理だけど」
目の前の氷を、フィジカルだけで、拳だけで砕き、穴をあけて、またぎ、向かってくる途中の霊夢に右手を合わせ、規模は最小限に、最大限精密に凍らす。霊夢は理解した
(なるほど、私のフィジカルを信じて、穴を開けてくれると信じて薄い氷壁にして、動きを制限する作戦かぁ、)
霊夢の体は、捕獲できる様に左脇腹は凍らせず、呼吸できる様に顔と肺周りは比較的薄めに凍らせ、関節を強力に凍らす様に、ほぼ全身が氷に包まれた。
「なかなか、やるじゃない」
霊夢は身動きが取れず、凍らされ、仰向けに倒れた。
「また、力技で解決しようとするなよ。身体中が痛むから」
「それは、私にならできるって励ましてくれてる認識でいいのかしら」
「本当にしそうだな... なんだか... もうちょい分厚く重ねがけしとくか...」
「アッ、それだけはご勘弁を... すでに自重と氷の質量で、体が結構痛んでるから...」
「それはすまん」
「筋力を見せつけなければよかったわ...」
轟はハッと我に帰る。
「もしかして時間稼ぎしようとしてるのか?」
「ばれちゃった(のんき)」
「でも、これでそっちのチームも脱落だな」
轟が霊夢のジャージにタッチし、袖が赤く光るのを確認する。
「・・・意外と疲れるもんだな」
「意外とね。あっちで拘束されてる爆豪の方が疲れてそうだけど。」
「流石に解いてやるか」
轟は霊夢とは反対方向、元のビルの屋上にいる爆豪のテープを解こうと、そちらへと体を向ける
「ああ、そうそう」
「なんだ博麗」
轟が霊夢の方へ振り返る
「"王手"ってところかしらね」
「は?」
その瞬間。
「轟すまん!」
響香が轟の氷の攻撃によって、増えまくった死角から迫り、轟をタッチし捕獲する。
「───────?」
そして、開始から15分18秒、轟は捕獲され、轟チームは敗北となった。
「ふふふっ。やっぱりパターンつくりごっこは楽しいわね♪」

