ヒーローと巫女さん 第十話:巫女はいつもみんなの為に、ヒーローもいつもみんなの為に。その1
「上鳴〜、暇じゃね〜、静かじゃね〜、退屈じゃね〜」
「空から女の子が!!!
みたいな展開があれば退屈しないんだけど、室内なんだよなぁ」
峰田と上鳴は何処かの建物の二階で二人まとめて、ロープで縛られていた。
そのフロアの窓に人影が映り、一瞬で消える。
「な、なぁ、い、いま、一瞬だけ人影が高速移動する。人影が映ってたんだが、、みたか?」
「ウンソンナハズハナイヨ」
「棒読みだな おい!」
そんな話をしていると、階段から五段飛ばしでもしているのかというくらいの間隔で、大きな音が聞こえる。反応しようと思ったら、少し立て付けの悪い扉が素早く開く。
「峰田、上鳴! 八百万のチームの情報を教えなさい!」
「「おぅ!?うえぇぇ?!!」」
二人を落ち着かせたところで、霊夢はその前にあぐらで座る。
「・・・・・・」
「なんで喋んないのよ」
「・・・・・・」
「恥ずかしいのか、私をただまじまじと見つめていたいだけなのか」
何処からかギクッという声が聞こえるような気がする。確かに、喋らなければ女子と同じ空間に入れる時間も増えるし、見切りをつけられたら、話して時間を引き延ばせる。そのことに、流石、雄英に入ってきただけあるという関心と、気持ち悪さに驚いた。だけど、そんな策略に引っかかっている時間はない。
「いいわ、どれだけ二人が話すべきかを懇切丁寧に教えてあげるわ
一つ、ここに縛り付けられてるってことは八百万か轟のチーム、まぁ、ほぼ確実に後者だろうけど、そのどちらかに縛り付けられたってことだから今からだいたい、ゲーム開始15分より前ってことつまり序盤。こんなふうに捕まってるんだから大したことも出来てないように見えるわ。実際ジャージもさほど汚れてないし瞬殺だったんじゃない? だから、何も出来てない二人は先生にまとめて除籍にされるってのがオチね」
「ちょっと待てよ! 除籍は最下位だけだろ!じゃあ俺か上鳴のどっちかだろ!」
「そ、そうだ! しかも他のチームも? こんな俺達みたいな人がいるかもしれないし?」
焦る二人に対して笑みをこぼしながら霊夢は答える。
「残念ながら、それはないわねぇ。だってな〜んにも出来てないんなら、どっちも0で"最下位タイ"だし、他のチームはしっかり戦闘してから散ってる、だから"確実に"二人は"最下位"だけど、八百万のチームの情報を話すことでそれも解消できる。戦うだけがヒーローじゃない。情報の伝達もヒーローの役目だからね」
「・・・・・・じゃあ話す。ただし、条件付きで」
「却下、碌なことにならない。それに私が決めるの。二人に決める権利はない」
「うぐっ。じゃぁいいよ!話せばいいんだろ!」
霊夢は無邪気な笑みで、にっこりと応答する。
「「守りたい、この笑顔!!なんかちょっと憎いけど!!」」
「で、まず八百万からだが、あの体つ────
霊夢は素早くポケットに入っている石の一つを捕球し、峰田の顔面スレスレに投球! 二人を縛り付けていた柱に亀裂が入りました! まさに豪速球!
「・・・・・・あぅっ」
「峰田、ここは真面目に行こう。お、おふざけはなしだっ。そうしないと命がも゛ったいだいっ!」
それを先ほどと機械のように一致しているように見える無邪気な笑みを再び繰り出すことで、もう峰田と上鳴にはトドメがさされた。
「「ハイ、すんません・・・・・・」」
「じゃぁ、いえ、では、僭越ながら、この私、峰田実と」
「上鳴電気が」
「「八百万百のチームと戦闘を行った時のことを事細かくお伝えいたします」」
「ふざけないでよね?」
「「はい!! 霊夢様!!」」
その話をまとめると、上鳴のは戦闘についての話で、こんな感じであった。まず八百万のチームと戦闘した時、峰田、上鳴は八百万、蛙吹、葉隠と対峙した。そして閃光手榴弾─この会場にそんなものはないので、八百万由来のもの─を投げつけられて、視界を奪われ、女子を見るために最前線にでしゃばっていた峰田はあっさりと捕獲され、口をガムテープで封じられた。上鳴と切島は一瞬逡巡しながらも、一度、その場から、元々いた、後方のビルの隙間へと引き、その後の四叉路で逃げようとしたが、閃光で隙が出来たその間に縦横5m、深さ3.5mほどの穴が空いていて、穴に飛び込んだら協力しても二人の内どちらかしか出られず、かと言って立ち向かっても二対四なので負けが濃厚。個性が使えるのは上鳴だから、捕えられるのはまずい。爆豪が何されるか判らない。そんな状況で、切島が上鳴を掴んで穴に飛び込んで、さらに自分が土台になり、上鳴を助けた。だが、それも虚しく、四叉路では、穴に入っていた十数秒の、道の先が見えない時間で蛙吹、芦戸、葉隠の三人が、それぞれ別の道を守っていたので、必然的に誰かと当たることを知らなかったので、対峙した蛙吹の舌で触れられ"捕獲"はされずに拘束されて、何処かの離れた建物に監禁され今に至るということらしい。
峰田の話は八百万のチームをまじまじと観ていたための観察結果だった。
まず、八百万は一瞬だけだったがジャージのポケットから閃光手榴弾を取り出し、投げつけた。その理由は峰田曰く、八百万の個性は皮膚からものを出すことが鉄則ということを、みんなが八百万の話でない話題で盛り上がっている時に、八百万が話に参加しようとする予備動作をねらった時のバス内での質問(セクシュアルハラスメント)で知っていたので、戦闘中に作るのが難しいからだそうだ。次に蛙吹、八百万のチームの中で一番と言っていいほど機動力が高く、実際、四叉路に人を配置したのは自身の舌と機動力を活かしたものらしい。上鳴からの補足で舌で巻かれたあと、少しヒリヒリするから肌荒れ注意だそうだ。これは結構危険だ。そして芦戸、酸であの穴を作っていた。それだけでも個性は強力だが、何かしらの薬品なのかはわからないが液体を撒いてから、自身の酸で溶かしていたらしい。最後に葉隠、特に透明であること以外はあまりふざけていない特徴は無かったらしい。
「ありがとう。今回はそれだけだから」
そう言って霊夢はあぐらから立ち上がって、二人が縛り付けている柱の面とは反対面へと周り、音を出してロープが切れる。
「どうせ、ルール上動けないだろうけど、窮屈そうだったから、切ってあげたわ。じゃあこれで」
窓を開けてそこに足をかける。その時、峰田と上鳴が
「ありがとうございます霊夢様ぁ!」
「・・・・・・頑張ってくれ、霊夢さm、霊夢さん。
あと、本当に俺達は除籍から免れるんだよな?これで」
「お前霊夢様を疑うのか!!?」
「峰田、その喋り方、やっぱこれ以降禁止で、そして上鳴。それは心配いらないわ。自分に素直になって、ルールを破って敗北にならなければ、ね」
そう言って、霊夢は飛び降りる。霊夢が過ぎ去ったその建物の二人のいるフロアには再び静かな時間が戻った。だが、峰田は女子の想起と想像で、上鳴は考え、少なくとも暇ではない時間であった

