ヒーローと巫女さん 第十一と五分話:クイズ大会はお茶の間で
バスに乗って帰るまで、少し休憩時間があった。当然だろう。40分間も動き回ったのだから。霊夢は女子トイレ、奥から3番目の個室に入った後、手を洗って出ようとしたら。周囲の木の葉が中空で止まっており
「また紫か」
霊夢自身は落下していた。いつの間にか、花弁は止まっているのに春風が吹いており、景色も変わっていた。そこは騒がしく穏やかで紅い、いつもの紅魔館だった。
気付けば椅子に座っていた。周りの景色は丁寧に整備されており、季節の花である石楠花や花金鳳花などが花壇を彩っている。いつのまにか座らされていた美しい白色の丸テーブルと椅子と館や花壇の紅の対比が、いつ見ても美しい。
「試験、お疲れ様〜」
「でぇ、なんの用?」
日傘をさしながら、周りの景色を楽しんでいる紫とは対照的に、一瞬のうちにいつもの巫女服になった霊夢は怪訝、面倒、その他諸々の感情を乗せた顔で応対する。
「なぞなぞ、いやまぁ、そっちの現代風に言うならクイズ、かしらね。あぁ、景品付きよ」
「そんなことの為に呼んだの? 私がトイレから帰って来なくて怪しまれないのは長くて10分。3分程度の手短に済ませてくれるなら、考えなくもないのだけれど。しかも私、結構疲れてるし」
「咲夜に頼む為に紅魔館に来たの。だから心配しなくて良いし、もう時は止まってる。時間はもちろん、体もきっと気にしなくても良いくらい、もてなしてはくれるわ」
「ワンチャンいけるかもと思ったんだけどなぁ」
そう霊夢が言い切ると同時にカタンという食器があたる音─不快どころか綺麗な音─が響き、いつのまにか紅茶とソーサー、茶菓子とデザートスタンドが出されており、咲夜が霊夢の隣─さっきまで椅子すらなかった所─に座っていた。
「ありがとう咲夜。なんだかこうやって喋るのもなんだかんだ久しぶりね」
「ほーんと、どこ行ってたんだか」
「え? ちょっと待って、私が何処行ってたか伝えてなかったの?」
「何か問題でも?」
(そういえばこいつ、胡散臭くて、嘘吐きだった!!)
「まぁ、私に教えてもらえないってことはとても大事か、全く重要でないかのどちらか。でも、そんなこともその辺にして、とりあえず、お茶の時間にしましょうか。3人で」
少し間が空く、全員が紅茶を飲んでいたからだ? また、春風が吹く。
「いつ見ても、幻想郷は綺麗ね」
「そうでしょう? だから私は守りたいの幻想郷を。その創設者としても、住人としても」
「あら、そう? 私は途中から来た身だけど、綺麗って言うより奇麗って思うわ、意味は同じだけど」
まだ4月なのに、外の世界は暑かった。私がそこに慣れていないだけかもしれない。でも、幻想郷は涼しかった。私が慣れていたからかもしれない。霊夢はふと思い出す。
「そういえば、紫の言ってたクイズって?」
「あー。霊夢が出題者、私と咲夜が回答者で、あの試験の霊夢の計画と戦略等々をクイズにして出してもらおうかと思って」
「その試験って何?」
「そうだなぁ、咲夜は不利だから、ちゃんとハンデをつけるわ。って!! なんで、私が執り行う前提で話てんのよ!!」
「「まぁまぁ」」
「意外とあんた達って、変なところで共通点があるわよね」
咲夜と紫が口を揃えてそう言った言葉に霊夢は言い返す。久々の幻想郷でもあるので、時間は引き延ばせるし、お茶もあるならとクイズを引き受けることにした。
「じゃあクイズのルールは
全部で四問
咲夜に一問でも正解させられたら私と咲夜の勝ち。
出来なかったら紫の勝ち。
さらにハンデとして紫は3回、問題を最後まで聞く。
で、2人が勝ったらさっき言っていたように""報酬""をちゃんと譲渡すること。
でどう」
「やっぱり聞き逃してないのね。そういえば報酬はそっちが決めても良いわ。お金でも情報でも構わない。」
「お金!」
「一日休日」
「・・・・・・」
紫は少し引き攣った笑みを一瞬見せたが再び柔らかく胡散臭い笑みに戻る。そして霊夢はクイズを開始した。
「こんなに言ったのにクイズをどんな感じに出せば良いのか判らないけど。とりあえずやってみるわね、
第一問。先生の性格を読めたのはどうして?」
ピンポーン。といつのまにか紫と咲夜の前に設置されていた押しボタンのうち、紫の方から音が鳴る。
「茶番みたいね。バスの移動中の観察と、ちょっと質問でカマをかけてみたから。それで、分かりやすく動揺してたし、でも、1/4くらいはあなたの勘じゃない? このままだと。お金も何にも手に入らないわよ?」
「ぐぎぎ、正解。意外と簡単だったかしら。紫も茶番って言ってたし。」
「多分そうなんでしょうね。でも、私にとっては、なんの試験か、皆目検討もつかんわ」
「ふふっ。咲夜もがんばってね。
第二問。四択問題よ、私が轟チームと八百万チームの同盟を確信したタイミングは、
い:準備時間のチーム決めの時
ろ:先生が"スタート"の宣言をしてから試験開始までの間
は:轟と瀬呂と障子が爆豪を捕獲しないよう気をつけてキャッチした時
に:なんだかんだブラフで言ってみたら当たっ─────
ピンポーン。と今度は咲夜が押す。
「紫が3回、最後まで聞くハンデがある以上、最後から一文字前くらいで押すのが最適解。だけど、何がなんだか判らないから、ここは勘で行くわ。とりあえず、確信って言ってるんだから"に"じゃないことは確か、うーん。"い"?」
「不正解。正解は"は"、確信したのはね。疑い始めたのは"い"。人数上位2チームが組んだら単純な数の暴力で殴れるし。確信した理由としては、爆豪がキャッチされた時、同じ轟チームの口田達はそれを知らなかったのか、とても驚愕していた、そしてそのあと、瀬呂と障子は何か説明しているように見えた。だから、別動隊がいたことは明らか、別働隊が何故いるか考えた時に、8人のチームで、3人の別働隊。見つかりにくくしたいから、そして、あの規模の氷を出せるなら、発汗して爆発させる爆豪の個性をすぐに完封できる轟が別働隊になっていたことは何か代表がいないといけない何かがあったのでは? って言う読みから同盟の締結かなってのを。まぁ、ちゃんと必殺する為かなとも思ったけど勘がそれを否定したわ。さらにいうなら、一層確信が強まったのは轟との戦闘で、そいつが何処か明後日の方向をみた時ね」
「あなた それ、一般人からしたら"確信"じゃなくて"疑念"じゃない?」
「私が確信って言ってるんだからそうなのよ。ちなみに同盟組まれたのは意外だったのよ? ルールへの質問で個人戦になるよう誘導したってのに、同盟組まれると面倒くさいから」
霊夢が一口お茶を飲んで話し始めようとするが紫が割って入る。
「四択問題と解答後の解説で情報を渡しまくってるけど。それで、私も正解しやすくなってるのも忘れないで頂戴ね」
「うげっ、まぁ、流石に判るか。気を取り直して
第三問。この中で私が誘導せずに予測していたことは?
た:轟チームと爆豪の対戦
ゐ:爆豪の予測ミス
に:同盟含む私のチームメンバーの成績を等しくしたこと
い:私の計画の一部を八百万が予測したこ──────
また咲夜の押しボタンが鳴る。
「"いろは"の次は"たゐに"にするのね。わざわざ選択肢にそれを選択したんだし、前回私は"い"を選択している。おそらく正解は"ゐ"か"い"。そして、後半二つはわざわざ"私"って入れたことから誘導のしやすさをアピールしているように思えるから"ゐ"ね。」
「正解よ。厳密にいえば4/5正解ってところだけど。ああ、ちなみに"た"も正解ね。こっちは5/5正解。別に正解は二つ、とも言ってないし良いでしょ? さ、紫。報酬、報酬、お金か?」
「うーん。それじゃダメじゃないかしら?」
「へぇ?」
紫ではなく咲夜に否定されて変な声がでる。
「だって、"正解≠4/5正解"係数が1の時は1だけ省略するじゃない」
「いやまぁ、確かに紫は数学好きだけど。普通の会話じゃそうはならんでしょう。いや普通じゃなかったら成立するのか? じゃあ4/5正解って言わなきゃ勝てたのか。いや、そう言う問題じゃなくて・・・・・・
なんだか、わからなくなってきた・・・・・・
まぁ、いいやその解釈は有効ってことで。楽しみたいし。てか、どっかで誘導されてたか?」
「正解。紫ちゃんポイント1点」
「いらんわい。で、何処で誘導されてたの?」
「そこを答えられたらもう1点あげるわ〜」
少々、霊夢は考え込む。その隙に咲夜が答える
「"お金"で判断力を鈍らせ、"1/4くらいは貴方の勘"と言うことで、"ちょっと正解"のような、曖昧なものを封じて自分の罠である分数に誘導したってことかしら?」
「正解。はーい。紫ちゃんポイント1点贈呈!」
「わーい。やったぁ」
「普通よろこばないって! いや? 喜ぶか普通? 段々判らなくなってきた・・・・・・
まぁいいわ
第四問。五択よ八百万の能力は試験では
あ:使えた
め:使えなかった
つ:使わなかった
ち:使えなかったが使った
の──────
ピンポーンと咲夜の押しボタンの音がなる。紫は押し負けた。
「"の"」
「正解。"の:準備時間中に使った" 正解よ」
パチパチパチと緩慢な拍手が紫から送られる。
「勝利おめでとう。私との勝負で勝ったけど。報酬は何にするの? 紫ちゃんポイント1点消費につき一つね」
「意味あったんかい!!」
あっさりと負けた紫に霊夢は少々驚く、が今度は真面目に報酬は何にするか考える。先に咲夜が結論を出す。
「この質問は報酬じゃないのだけれど
紫って暇?」
「大抵いつも寝てて忙しいの」
「じゃあ良かった。暇ね。一日くらい一緒に仕事しましょ。それが報酬。基、お願いね」
「・・・・・・一日の時間でも弄ろうかしら」
「月や太陽を止めて一日を永遠にしてくれるのね。仕事熱心だわ。で、霊夢は何にするの? お金? 酒? はたまた犬?」
「そんなの八つ集めれば良い話よ。そうね。咲夜が話している時も考えてたけど・・・・・・・・・・・・
"紫が3回だけ、私からの質問に正直に答えてくれる義務"かしらね」
「私はいつも正直よ?」
「嘘つけ。じゃあ。質問一つ目。どうして負けた?」
「・・・・・・なかなかにアバウトな質問ね。私が調子に乗って余計なことまで喋ると思っているのかしら。そうだけど。で、それに応えると、まず私がクイズを提示した時点で負けは濃厚だった。咲夜が時間を遅くしたら、押しボタン式なんだから私は絶対に押し負ける。多分、二人もそのことに気付いてたんでしょう? だから、そのことを余計な情報を喋ること、選択肢"い"、誘導の話だとか色々で隠そうとしてたんだろうけど。提示した本人が気付いてない訳がないじゃない。まぁ、だから、その欠点で、私の負けが濃厚になった。つまり、始まる前から私はとんでもないハンデを背負っていたの。さらにそのことも"咲夜は不利"や二問目で咲夜に厳しくしたことで隠そうとした。
まとめると、そもそも負けが濃厚だったから負けた。以上よ」
「どうして、わざと負けたか。その理由も聞きたかったんだけど。そっちも聞きたかったから、良しとするわ」
そう言いながら紅茶を飲み終わる。最後まで同じ暖かさだった気がする。気がつくと今度はジャージに戻っており、再び落下していた。私が座っていた椅子はいつのまにか片付けられていたようだ。
「またねー。霊夢」
「じゃあね。咲夜」
落ちた先は時が止まる前までにいた場所、トイレの出入り口らへんだった。
「まだ休憩時間は全然残ってるのかしら。とりあえずバスに戻るか」
そうして再び、新たな日常に戻っていった。

