#10 デド
マーレーの何気ない一言でルーのあだ名はその瞬間から『ボス』になった。
本人も気に入ったようで気に入らなかったりするとすぐに口に出していうルーが何も言わずにこのあだ名で呼ばれることを受け入れていた。
昨夜の話し合いは今思うと意外と有意義な物だった。
ジュグラーの場所についてはたくさんの意見が出た。
途中、あり得ないようなことも真実は誰も知らないのだから否定するなと言ったルーの言葉のおかげでどんどんクリエイティブな考えが飛び出していた。
例えば植物の細胞の中とか。
でも、話し合いを進めていくうちに誰かが『そもそもデドなんか存在してなくてみんなが騙されているんじゃないか。』とまで言い出す人もいた。そしてそれは恐怖に追いつめられた際の人の心の動きの研究に使用されているのだとか。
でも確かにルーの言う通り真実はきっと誰も知らない。
だから知らないうちに無知のうちに言いたい放題やっていた方が得かもしれない。
有知になってしまったら話せなくなるかもしれないから。
今夜ももルーの部屋で開かれた話し合いの後、自室に戻るとカイが自分のベッドの上に座って何かを考えるような険しい顔をしていた。
「どうしたの、カイ?この前も何か言いかけてたけど…」
私が話しかけるとカイは派手にピクリと震えてから私の顔を見た。
「驚かさないでくださいよ、先輩〜」
「ごめん、ごめん。」
カイは手に持っていたものをさりげなく隠すようにして自分の机の上に置いた。
私はわざと気が付かないフリをしてカイに話しかけた。
「で、この前言いかけてたこと大丈夫?」
「あーえっと大丈夫です!」
カイの顔は明らかに大丈夫とは言っていなかった。
でも本人の気持ちは言いたくないのだこれ以上追及するのは彼女を疲れさせてしまうだろう。口を開きたくなったら開けば良い。
そこで私は昨夜と今夜の会合の話をすることにした。
無言で黙っているよりずっと良い。
カイはジュグラーの場所の話になると興味を一段と示し、「また会議があったら私の考えも代わりに話してください!」と言い出し、自分の考えを述べた。それは昨夜と今夜に出た意見の中で最も説得力があり、なおかつ現実味がある話だった。
彼女はジュグラーの場所は電波内にあると思う話した。だから私たちが発する電波に反応して現れるのだと。