小説「冬の遠い日」
季節はおそらく冬か秋。うん。
______________________________________
これは私の物語。
丁度人生がが2度、3度巡るくらい前のお話。
あの冬の日、私は何時もの様に、2階の小さい自分の部屋から庭を眺めていた。少し広い庭にはイチョウの木が1本。さっき使いの者が持ってきたお茶を飲む。長い長い時間を、私は1人でずっと過ごすのだ。
私はいつも自由に憧れていた。
お父様は私を隠し子だと言い、この離れに閉じ込めた。私と同じ血が流れる母は遣いの者だった。そしてお母様は私の事を孤児と罵り、それから顔を合わせていない。
私が閉じ込められた日から。
そんな「自由」に対して思いを馳せる私が唯一、面白いと感じられるのは、私を可愛がる遣いの者が買ってくる本だった。頁をめくる事で描かれる色鮮やかな物語に、私は胸を焦がしていた。その日もまた、何度も読み返したあの本を読んでいた。物語の重要な場面に差し掛かる、その時だった。
カツン、外から音が鳴る。
私はかちりと固まってしまった。
今の音は、窓に何かが当たった音に聞こえた。
私はするりと立ち上がり、寒さで少し震える手を伸ばし、窓を開けた。下のへりを見ると、小枝が挟まっていて、これが当たったのだ。
「どなた?」
問いかけ、辺りを見回す。
「ここだ!」
いいねを贈ろう
いいね
2
コメントしよう!
トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する