プラスα #2まさかデートに行くのを忘れていたとは思わなかった後編
雫は店員を呼んで注文した。
最初はちょっとした恋心で、叶うとも思わなかった片想いが、付き合うまでに発展したのだ。
今、その幸せを噛み締める。
どうせなら、ずっと続けば…
高校生で付き合ったからといってずっと関わるわけではない。
大学もある、すれ違いも起こるかもしれない。
「知弘くん、来たよ。」
考え込んでいる内に温かな湯気を立てたコーヒーが机の上に置いてあった。
「ああ、ありがとう。」
コーヒーを持った瞬間、かじかんだ手が復活した。
コーヒーを口に入れ、飲んだ。
体が温まる。
「おいしいね。」
「あぁ。」
この時間がずっと続けば…
気付くと、知弘はカフェの外に出て、水族館への道を歩いていた。
「ほら早く!」
「分かった分かった。」
雫に急かされ、知弘は足を早めた。
「あ!あったよ、ほらあそこ!」
建物の陰からかなり大きな建物が出てきた。
「おお、意外とでかいな。」
入場券を買い、中に入る。
水槽の水に光が反射し、青い空間が出来ていた。
滑らかな水に乱反射した光が、あちこちを照らしている。
「綺麗だね。」
「そうだね。」
雫の方が綺麗だよ、なんてキザ発言が出来るはずもなく、ただ輝く雫の瞳を見つめていた。
「でも、どんなにカッコいいものでも、知弘くんには敵わないですけど、ね。」
雫がそんなことを言うと、さすがに照れる。
そっちがそうならこっちも言ってやろう。
「水槽に差し込む光よりも雫の方が輝いてるけどな。」
「そ、そんな、こと言わないで…」
生憎雫にはそういう耐性が付いてないようだった。
青く反射した光に負けず劣らず顔を赤くしていた。
「水族館より、知弘くんの方が、ずっとずっと…」
「好きですよ。」
そう言ってニッコリ笑いかける。
知弘の顔が熱くなる。
「そんなの、俺もに決まってるだろ。」
仕返しをする。
「ハハハ。」
「ふふふ。」
2人で顔を合わせて笑う。
「これからも、ずっと、よろしくな。」
気付けば言おうとも思わなかった言葉が口を突いていた。
「……」
雫はしばらく黙っていたが、突然笑みを浮かべて言った。
「はい。」
これからも、ずっと幸せにしていけそうな気がした。
〜End〜