桜の衣を変えるころ_

18 2022/03/07 18:34
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小説です笑

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私は眠る前に考えた。

この記憶を忘れる前に。

春の霧の中で、私は生まれた。

周りはきれいな色の霧で包まれていた。

私は純白の髪に、同じ色をした肌に同じく純白の衣を着ていて、白銀の色をした目をしていたらしい。

正面には、白に近い桜色をまとった女性がいた。

「あなたはね、山桜の桜の精よ。横の木を見てみなさい」

横には幹の先にきれいなもやをまとわりつかせた木があった。

私はその時、言葉というものを知らなかったが、その木を見たとたん、全てを悟った。言葉の存在と自分の存在を。

「ここは桜の森、桜の精の森。ここにある木には、それぞれ精がいるの。あなたが最年少で、私が最年長」

体を取り巻く色が白から桜色に変わっているのに、私は初めて気付いた。

「あなたの名前は、さん。山桜のさんよ」

私はここで暮らすんだ。

「よろしくお願いします」

戸惑いつつ挨拶をした。

「こちらこそ。私はよしのよ」

そう言ってよしのは歩いて行く。自分の木の方へ。

私も自分の木へ近づき、そこで1日を過ごした。

次の日からさんの日々は忙しくなった。毎日色々な桜の精が挨拶に来るからだ。

そんな日々が終わるころ、夏が来た。

さんを取り巻く色が緑に変わった。

桜の花が散ったからだよと、ある桜の精が教えてくれた。

桜の木とともに、取り巻く色も変わるらしい。

夏には緑、秋には赤か黄色、冬には銀色に変わった。

私は近所の桜の精と毎日遊んだ。春夏秋冬、春夏秋冬、春夏秋冬。

いつの間にか100年たっていた。

とある冬の日。幸せはつぶれた。

空気が乾燥している日だった。

森の端に雷が落ちた。不思議と雨は降っていなかった。

雷は炎になり、燃え広がった。木を1本、2本と呑み込んでいく。辺りは桜の森から炎の森へと変わっていった。

下に近所の桜の精がいた。こちらに向かって叫んでいる。

「あなたの木の下に桜の木の種が落ちてる。それに乗り移って逃げて。あなたは最年少なんだから」

私は種に乗り移って逃げた。ひたすら転がり、止まるまで転がる。

崖の先端で種が止まった。そこからは、先程までいた桜の森が良く見えた。さんが止まったのを見はからったかのように、大雨が降り始めた。炎は消えた。

忘れたくなかった。新たな木になって、記憶を忘れたくなかった。

でも、生き残らなければ。

決心をして、やわらかな眠りに沈みこんだ。

深い深い眠りに。

ある森で火災があった。その焼け野原に集落ができた。火災から10年後の春のことだった。

その集落からは崖の先端にある山桜の木が良く見えた。

人々はその桜には精がいるといって、祀った。山と名前をつけて。

山……さん……と呼ばれた精は、木の上で笑った。

衣を銀色から桜色に染めなおして。110年前のあの日のようだと思いながら。

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