【小説】マイ・リトルレナ第3話③

2 2023/01/28 23:51

レナと出会って数日がたった。

私は今、廃墟に住んでいる。

壁の隙間から吹く風。その風の度揺れる柱。抜けた天井からこぼれる月明かり。

すべてにおいて調和のとれている空間。

ネズミやゴキブリが床を張っていようと、目の白くなった老犬が息絶えていようと、私はここが好きだ。

あの家が、いや、あの牢が地獄ならここは天国だ。

今思えば私はこの頃から感覚が麻痺していたのかもしれない。

レナという存在が現れたことによって私の価値観が、感覚が、思考が変わってしまったのかもしれない。

それでもよかった。

レナがいれば。楽しかった。

すべてが、、、レナ一色になってしまったようだった。

そういえば、私の小さい頃の記憶がない。あるのは小3辺りから。それでもポツポツとしかなかった。

今まで気にしたことがなかった。歪みに記憶が消えていくような、溶けていくような、そんな感じだった。

“私“という存在に違和感が生まれる。思い出せそうで思い出せない。

ナニかが引っ掛かる。いや、ナニかが私の記憶を塞き止めている。

私が、私の存在が、浮いているようだった。

私は、、、存在していいのだろうか。

その夜。私は夢を見た。

ここは・・・加々美沢海岸・・・?

私とレナは加々美沢海岸の岬に立っていた。

いや、私じゃない。

顔も声も体も私のモノだ。

だか、何かが違う。

私は、、、今どこにいる?

何も聞こえない。触れない。声を出すこともできない。

私の中・・・?

変にリアルで不気味な夢だ。夢には思えないくらい繊細だ。

こわい

私じゃないナニかが私のレナとしゃべっている。

手の届かない、喉の奥の方がむず痒い。

ナニかが、レナに触れる。

触れたところから、レナが腐ってゆく。溶けてゆく。

こわい。

そこで私の記憶は、意識は止まっている。

目が覚めたらそこは、廃墟じゃなかった。

加々美沢海岸の岬の下、海水で抉られ、部屋のようになっている場所だ。

ふと、下に目をやる。

ここで初めて私は座っていたのか、と自覚する。

だいぶ感覚がやられているようだ。

道理で目線が低い位置にあると思った。と、納得する。

ぬるりという微かな感覚と共に、頭の霧が晴れる。

レナが、私の膝の上で頭から血を流しながら横たわっていた。

そこでまた、私の意識が途切れた。

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タグ: 小説 マイ リトルレナ

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その他2023/01/28 23:51:08 [通報] [非表示] フォローする
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