だから僕は、君の虜です。 半虎BL
一虎:もう半間君なんか大っ嫌い!!!! 半間:ごめ……ってオレ、なんか悪い事した? 一虎:オレが楽しみに取っておいてた、今日限定のアイス食べたじゃん!!!! 半間:ちょまっ、それだけでかよ?だりぃ~💜 一虎:当たり前だろ!!!!それにオマエはオレのセコム何だから、アイス買って来いよ!!!! 半間:だりぃ~💜もう分かったわ、別れるわ💜
そう言われ、ふと我に返った。
(オレは、一時の感情に任せてアイス如きで半間君に何て酷い事を……!!!!)
考えると同時に、涙が溢れ出てきた。 一虎:半間君ごめんなさい!!!!オレ、一時の衝動で、アイス如きで半間君にこんなに酷い事を……!!!!何でもするから、別れるだけはやめて下さい!!!! 半間:じゃ~ね❤
一虎:ちょっと待っ……
半間:これ出しに❤だから、これ食べて待っててね❤
そう言って半間君は、自分の手に握っているオレと半間君の名前が書かれた婚姻届を見せた後、オレの前に例のアイスを置いた。
一虎:半間君……❤
だから僕は……、
──数時間後……──
半間君は、あれから全く帰ってくる様子が無い。
流石に心配に成って来ていると、オレのケータイが鳴りだした。
──プルルルルル、プルルルルル……──
病院からだった。 もう既に嫌な予感しかしない。
「はい、羽宮です。」
『どうも、此方東京病院です。半間修二さんの婚約者の羽宮一虎様でお間違い無いですね。落ち着いて聞いて下さい。半間修二さんは、警察も尻尾を掴めないくらいの犯罪組織が開発し世界各地に広まってしまった今の私達の医療技術では分解出来ない程強力な毒を摂取してしまい、数十分後にお亡くなりになってしまいます。最後に貴女に会いたいとずっとおっしゃっているので、大至急403号室までお越し下さい。』 ──プツッ。──
「ハァ…ハァ……半間、君、今、迎えに、行くから、待ってて、ね……、」
オレは急いでバイクを出し、思いっ切り走らせた。
夏だったから汗をびっしょりとかいていたが、不思議と全く気にならなかった。
病院に着いてからも、403号室ヘ無我夢中で走った。
不思議と、此方を睨む看護士の視線は、全く気にならなかった。
一虎:半間…、君……!!!!
半間:一…、虎…。
ベッドに横たわる半間君の姿は、普段の彼とは比べ物に成らないくらいに酷く弱り果てていた。
一虎:半間君!!!!オレのせいで、ごめんなさい!!!!最後までダメダメなお嫁さんで、ごめんなさい!!!!
半間:一虎、落ち着け。オレは、オマエがアイス買って来た時から、何故か凄ぇ嫌な予感してたんだ。それがたまたま、本当に的中しちまった。
一虎:やだ、嘘……、死なないでよ半間君ッ!!!! 半間:お前さあの時、何でもするって言ったよな。
一虎:うん、言ったよ。
半間:だから、一つ頼み事、しても良いか?
一虎:うん、勿論!!!!何でも聞くよ!!!!
半間:じゃあ一虎、オレがもし死んでも、自殺しようとか自傷行為しようとか思わないでくれ。その代わり、オレが生きられなかった分、オマエが―、
“幸せに成れ!!!!”
本当に、こんな素敵な人が、オレの傍に居て良かったのだろうか。
いや、良かった悪かったじゃない!!!!楽しかった思い出を忘れずに、託された約束を守り、与えられた幸せを大切に使う。
そうすれば、いつか、またいつか……、 君に出会える日が来て、その時初めて“良かった”って、想い合える筈。
その時まで、どうか、どうか……、
半間君に、最後に贈る言葉……、
“幸せでいてください。”
半間君は、最後の力を振り絞って、オレを優しく腕で抱き締めゆっくりと包み込みながら深くて、強くて、長いキスをして、赤い夕日に照らされながら亡くなっていった。
その時、半間君は、人生で初めて泣いていた……。
それと同時に、オレも気を失っていた。
……──……──……
目覚めると、オレは中1になっていて、とてつもなく暑い公園のベンチの上に座って居た。
そう言えば、この時この場所で半間君に初めて会って、一目惚れして、同時告白して、初対面で付き合う事に成ったんだっけ……。
と、その時、中2の半間君が草むらからコーラ片手に公園に入って来た。
一虎:半間…、君……ッッ!!!!
ヤバい、喜びの余り名前を言ってしまった。
気味悪がられたら、どうしよう!?
半間:なぁんだ一虎、オマエもタイムリーパーだったのか!!!!じゃあ、話は早ぇ~な。
一虎:はっ?えっ?たいむ、りぃーぱぁー????
半間:どうやらオレと一虎は、オレが死んだときに初めて出会った時にタイムリープしちまったらしいんだ。でも、詳しい事はまだオレにも分かんねぇ。
一虎:でも、良かった。
半間:え?
一虎:半間……、君が……、生きて……、るうっ……!!!!
半間:一虎……❤
一虎:ねぇねぇ、初めて会った時の、“アレ”、やってよ……!!!!❤
半間:お前、本当にあれ好きな。よく懲りねぇ~よなぁ。
一虎:だってぇ❤
半間君は、いっつもオレの欲しい言葉をくれたから。
オレが、本当に好きな人に言われたい言葉は、「大好き❤」でも、「愛してる❤」でもなくて……、
半間君がオレに、初めて出会った時に、優しく抱きつきながら言ってくれた、あの言葉。
「一虎が、産まれてきてくれて、本当に良かった。」
だから僕は、君の虜です。