叶わない恋に奇跡を【7話】

5 2023/05/20 08:38

-「やっと見つけた。非検体001。よくも逃げ出しやがって。」

嘘だ。なんで。違う。嫌だ。

「さっさと研究所に帰るぞ。手間取らせやがって。」

降ってくる大嫌いな声。

「ーアリア…どういう…こと…?」

カリム…。

「ああ?何がアリアだ。こいつは非検体001。ロボットだぞ。」

バレて…しまった…。

ずっと隠し通してきたのに。

「…アリアが…ロボット…?嘘だろ…。」

もうカリムと一緒にはいられない。カリムにも迷惑がかかってしまう…。

だから、私は…

「ごめんね。私本当はロボットだったの…。」

「でもっ…!」

何か言おうとしたカリムの言葉をさえぎって、私は首を横に振った。

あぁ…この言葉を言ってしまったら二度とカリムに会うことはできない…。また地獄のような日々が待っている。

でも、私はカリムのことが大好きだから…。

せめて、最後ぐらい笑って…

「…さよなら。」

そう言ってカリムに背を向ける。

その瞬間、ほおを温かいものが伝った。 

これ…。涙…?

私…なんで泣いてるの?

これが一番良かったはずなのに…。

「アリア!待って!…僕はっ…アリアのことが好きだ!ロボットだろうがなんだろうが関係ない!だから…行かないで…!」

…あぁ…もう。なんでそんなこと…言うの?

私だってカリムのことが大好きだよ。

でも私はロボットだから一緒にはいられないんだよ…。

「私もっ…カリムのことがっ…好きだよ…。離れたくない。ずっと一緒にいたいよっ…!」

自然と口から溢れ出る言葉。

とめどなくほおを涙が伝う。

「ほら、さっさと行くぞっ!」

そう言って私の腕を強引に掴む。 

「カリム…っ!」

その瞬間、カリムが私の腕を掴んだ。

「アリア!」

ドンッ!

鈍い音がしてカリムが地面に倒れ込む。

研究所の人が突き飛ばしたのだと分かった。 

私の…せいだ…。

「行くぞ!」

強引に車に乗せられる。

嫌だ…嫌だ…!

けれど無情にも車は走り出し、どんどんカリムとの距離は開いていく。

「アリア…!」

もう二度とこの声は聞けない。

大好きな人の声が遠ざかっていく…。

「カリムっ…!」

溢れて止まらない涙。

「研究所へ戻ったらあんなガキとの記憶は削除するからな。」

追い打ちをかけるように響く言葉。

「…嫌だっ!」

あの楽しかった思い出まで奪わないでよ…。

「うるさい!わがままを言うな!お前は人間のために存在しているただのロボットなんだよ!」

…わかってるよ。そのぐらい…。

急激に眠気が襲ってくる。

何か薬のようなものを嗅がされたのだと悟った。

…もう私は、記憶も無くなって、「アリア」じゃなくなるんだ…

「カリ…ム…。」

そう言って、アリアは眠りに落ちた。

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ー私の名前は非検体001。

人間の変わりをするためのロボットの開発の被検体だ。

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