叶わない恋に奇跡を【7話】
-「やっと見つけた。非検体001。よくも逃げ出しやがって。」
嘘だ。なんで。違う。嫌だ。
「さっさと研究所に帰るぞ。手間取らせやがって。」
降ってくる大嫌いな声。
「ーアリア…どういう…こと…?」
カリム…。
「ああ?何がアリアだ。こいつは非検体001。ロボットだぞ。」
バレて…しまった…。
ずっと隠し通してきたのに。
「…アリアが…ロボット…?嘘だろ…。」
もうカリムと一緒にはいられない。カリムにも迷惑がかかってしまう…。
だから、私は…
「ごめんね。私本当はロボットだったの…。」
「でもっ…!」
何か言おうとしたカリムの言葉をさえぎって、私は首を横に振った。
あぁ…この言葉を言ってしまったら二度とカリムに会うことはできない…。また地獄のような日々が待っている。
でも、私はカリムのことが大好きだから…。
せめて、最後ぐらい笑って…
「…さよなら。」
そう言ってカリムに背を向ける。
その瞬間、ほおを温かいものが伝った。
これ…。涙…?
私…なんで泣いてるの?
これが一番良かったはずなのに…。
「アリア!待って!…僕はっ…アリアのことが好きだ!ロボットだろうがなんだろうが関係ない!だから…行かないで…!」
…あぁ…もう。なんでそんなこと…言うの?
私だってカリムのことが大好きだよ。
でも私はロボットだから一緒にはいられないんだよ…。
「私もっ…カリムのことがっ…好きだよ…。離れたくない。ずっと一緒にいたいよっ…!」
自然と口から溢れ出る言葉。
とめどなくほおを涙が伝う。
「ほら、さっさと行くぞっ!」
そう言って私の腕を強引に掴む。
「カリム…っ!」
その瞬間、カリムが私の腕を掴んだ。
「アリア!」
ドンッ!
鈍い音がしてカリムが地面に倒れ込む。
研究所の人が突き飛ばしたのだと分かった。
私の…せいだ…。
「行くぞ!」
強引に車に乗せられる。
嫌だ…嫌だ…!
けれど無情にも車は走り出し、どんどんカリムとの距離は開いていく。
「アリア…!」
もう二度とこの声は聞けない。
大好きな人の声が遠ざかっていく…。
「カリムっ…!」
溢れて止まらない涙。
「研究所へ戻ったらあんなガキとの記憶は削除するからな。」
追い打ちをかけるように響く言葉。
「…嫌だっ!」
あの楽しかった思い出まで奪わないでよ…。
「うるさい!わがままを言うな!お前は人間のために存在しているただのロボットなんだよ!」
…わかってるよ。そのぐらい…。
急激に眠気が襲ってくる。
何か薬のようなものを嗅がされたのだと悟った。
…もう私は、記憶も無くなって、「アリア」じゃなくなるんだ…
「カリ…ム…。」
そう言って、アリアは眠りに落ちた。
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ー私の名前は非検体001。
人間の変わりをするためのロボットの開発の被検体だ。
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