【短編読み切り小説】余命3ヶ月の思い出
医者「結衣さん…あなたの余命はもう…」
結衣「…はい」
医者「長くても3ヶ月しか残っていません…」
母「…結衣」
私は悲しくはなかった。
どうせ生きていても、ずっとこんなに狭い病室の中で寝ているしか無いんだ。
それなら、死んだ方がいい。
医者「後3ヶ月…できるだけ人生を楽しんでください。」
母「先生、ありがとうございました。」
母親と私は、先生の部屋を出た。
病室に行くまでの5分ちょっと。
会話をする気にはなれなかった。
母は私を病室まで連れて行って、すぐに私の弟のいる家に帰ってしまった。
仕方がないとは思う。
6歳の弟だ。
しかもすぐに死んで未来のない私と、まだたくさんの未来が残された弟とでは、弟のことを大切にするはずだ。
でも、まだ少しだけ、最後の3ヶ月くらい一緒にいてほしい、母から愛情を貰いたいと、小さな小さな願望が残っていた。
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余命を告げられたあの日から、1週間が経った。
あれからも母親は、1週間で2回しか来てくれていない。
この1週間、ずっとベットに寝て長々と日記を書いている。
今日は日記に書くこともないので、病院にある中庭へ行くことにした。
肺炎を疑われ、この病院に来てすぐの時は、中庭に行くくらいなら30秒ほどしかかからなかった。
でも、今になるとゆっくり歩かないと苦しくて倒れてしまうほど病状が悪化しているので、5分はかかる。
中庭についた。
今日は誰もいなかったので、木の陰に座って、木苺をこっそり摘んで食べた。
そのあとは花を積んで、花束を作っていた。
すると、後ろから足音がした。振り向くと真っ白な綺麗な髪の女の子がいた。
結衣「妖精みたい…」
その子に見惚れてずっと見ていたからか、その子が話しかけてきた。
?「どうしたの?」
結衣「あ、ごめんなさい。あの…仲良くしてくれる?」
?「いいよ!あなた、名前なんていうの?私は華奈。」
結衣「私は、結衣。よろしくね。」
今日、初めて病院で友達ができた。
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華奈と初めて会った日から1ヶ月が経った。
あの日から毎日、10時に病院の鐘が鳴ったら、華奈と私で中庭に来ている。
最初の日に華奈が花をくれたのには驚いた。
毎日私と華奈は花を交換している。
ある日はチューリップ。次の日はたんぽぽ。
華奈は、いつも花の名前を教えてくれる。
あの日から私に、毎日楽しみができた。
私の余命はあと2ヶ月。
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華奈と初めて会った日から2ヶ月が経った。
その日、初めて知らない名前の花をもらった。
名前は、アイビーというらしい。
白色の花に赤紫の線が入った綺麗な花だ。
なんだか、華奈の髪の色に似ている。
綺麗な花だから、部屋に飾った。
いつも、華奈からもらった花は飾っているけどね。
私の余命はあと1ヶ月。
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アイビーをもらった日から2週間が経った。
その日は、とても名前の長い花をもらった。
名前は、キスツス・アルビドゥスというらしい。
紫と黄色が鮮やかで綺麗な花だ。
なんだか、今日は華奈がいつもに増して嬉しそうだった。
私も、嬉しい。
私の余命はあと3週間。
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キスツス・アルビドゥスをもらった日から、1週間が経った。
あれから中庭に華奈は来ていない。
どうしたんだろう。
体調が悪くなったなら、心配だ。
明日、華奈の部屋にお見舞いに行こう。
私の余命はあと2週間。
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キスツス・アルビドゥスをもらった日から、2週間が経った。
華奈はまだ来ない。
華奈の病室は閉まっていて、入ることができないままだった。
名前を初めて知った二つの花のことを、本で調べていた。
花言葉が書いていた。
私は久しぶりに泣いた。
明日、中庭で二つの花を積んで、華奈に渡しに行こう。
私の余命は、あと1週間_
終 わ り__
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