これなしね
————————5月1日—————————————-*
・食器の音をカタカタと鳴らし,私は夕飯の準備を始める.
今夜は娘が好きなハンバーグにするのだ。娘が喜んで食べることを想像するだけで,
自然とやる気が出てくる。そんなことを考えていると玄関の方から声がする.
「ただいまー」
その声が聞こえた後,リビングに娘が入ってくる。
私は娘に笑顔を向け,
「おかえり。」
と返す。娘は私の手元を見るなり目を輝かせ,美味しそう。と言う。
娘はくるくると体を回転させる.長い袖が似合っているな、なんて考えたり、
まだ生だよ、なんてたあいきをしていた。
「いただきます」
その声を合図に、お互いが食べ始める。夢中で食べ進める娘に,
「最近作ってなかったから。あんた好きでしょ?」
と声をかける。すると娘は嬉しそうに頷き,笑みを浮かべる。
その後も食べながらワイワイ喋っていた。
「そういえばさ来週ってお父さんの誕生日じゃんね?プレゼントとかどうするの?」
等、大したこともない話をしてくれている娘に思う.
いつまでこうしていられるのだろうか。と。
いつかはこの子もこんなふうに喋ってくれなくなるのだろうか.
と考えるだけで寂しくなってくる。
でも今はそんなこと考えてる場合じゃない。今を誇りにおもわなくては。
———————5月2日——————————*
・娘が家を出た後,私は娘の部屋を掃除し始める。
今となっては部屋に入るのに気を使うがあの子は本当に掃除をしない。
だから、月一で掃除をしにきているのだ.それは本人も知っていた。
まず机の上のものを一旦避け,机を拭く。そして落ちている本を棚に直す。
といつも通り掃除を進めていた。が、ある場所にふと目が行った。
そこには,娘のスマホが置いてあったのだ。私はスマホを拾い,手に取る。
(まさか学校に行くのにスマホを忘れた、、?)
と少し心配になる。もし、何かあれば危険じゃないのか、と考えてスマホを見つめる。
すると、画面に光が灯る。どうやら通知が来たようだ.焦り気味に少し覗いてみる。
それは娘の同級生からのLINEだった。通知画面に内容が表示される。
「今日も5万持ってきたーー?」
と。その1通を見ただけで冷や汗が肌をつうっと流れる。
ものすごく、ものすごく気になる。今までの内容が。画面をスワイプし、ラインを開く。
3年5組!と表示されているのを押す。それを見た瞬間,吐き気が止まらなくなる。
1番大きく目に溜まったものがあった。
「5月3日に駅に来てねー!!」
と。すぐに理解した.普通の会話じゃない.きっと何かがおかしい.
その先の会話を追う。
え、なんで
死ねよ
ころすためだから
お願いやめて
駅に来なかったらあの写真ばら撒くよ
そこで会話は止まっていた。全て私がみる前に既読がついている。
娘はもう見たのだろう。私は体全身が震えているのがわかった。本当に,だめなやつだ.
———-*
・娘が帰ってくる。いつも通り可愛らしい笑みを浮かべて私の方を見る.
その笑顔を見た途端,嬉しさと同時に恐ろしさが溢れてくる.
本当に,怖い。怖くて仕方がない。この子は本当に行くだろう。
明日,駅に行こう.この子を助けたい。なにがなんでも。
————————5月3日——————————*
・娘のLINEには、四時ごろに駅だと書いていた。
まだ、朝だ。時間はまだまだある。だが、学校での娘のことを考えるとそわそわしてしまう。
娘は,相当傷ついているだろう.
「お前は生きてる意味もなにもない。特徴もないしw」
などと言う文章を見た瞬間,私の頭にはいろんな感情が湧き上がってくる。
娘は,特徴もなんてあまりないかもしれない。でも、だれにでも素直で笑顔で
誰にも迷惑をかけないよう頑張っている.努力だってしている.
生きている価値がないわけがない。
そんな感情と共に,先ほどの発言をしたやつに殺意が湧く。
だが大の大人としてそんなことはしてはいけない.
昨日の夜は寝ないで色々考えた。だから、きっと、大丈夫。
———————-*
・3時40分を指している時計を見て,私は家を出る.
歩いて数十分ほどで駅には着くが心配で仕方がないのだ.
到着し,とうとう3時55分になる。胸がどくどくと高鳴る。
そこに、甲高い笑い声や喋り声が聞こえる.
「ほーーらついたー」
「はやくはやくもうすぐ電車来るって。」
「ねえはやく行って!?電車来るって!」
2人の女の子の間に娘がいる.今にも泣きそうな顔で。
足を動かそうとした瞬間,電車が向かってくる。娘が突き飛ばされる。
地面を蹴り,手を伸ばし走る.
「ともか!!!」
そう声をあげてすぐ,背中を強く押された感覚と共に私は意識を失った。
———————**
・お母さんが亡くなって1週間が経った。
花を添え,仏壇に向かい手を合わせる。5月3日のことを,思い出す。
あれは全て,友達と計画したことだった。わざとスマホを忘れたのも。
私が線路に出たのを合図にお母さんの背中を友達に押してもらう.
そして私はすぐもう1人の友人の合図で転がる.命懸けでしたことだ.
そう。そんなことをしてでも私はお母さんに変えて欲しかった。
昔から大っ嫌いだった。
なんでもかんでも出来ないと決めつけられた.完璧を求められた。
私は常にそう感じていた.苦痛だった。だからやらなかった。
でも、「それともかのこと嫌いでやってるでしょww」
その一言で決心がついた。ころしてやる。と。
確かにお母さんは私を嫌っていたと思う.今思えば。
そんな簡単な理由で私はお母さんを,殺した———
重い腰を上げ,窓を開ける。どうやら雨が降っている.ものすごく激しく。
少し心配になりつつテレビをつける。だが電気が消えると共に全てが消えた。
「え、まじ、、?」
怖い、と思いとりあえずソファーに腰をかける。スマホを使いLINEを開く.
「停電したんだけど」
そう送るとすぐ既読がつく.
「え、がちそれ」
「だるくない?w」
ふと、スマホを放し顔を上げる.どこからか足音が聞こえた。
お父さんだろうか.最近家に帰ってきていない.あのことが起こってから。
だが、なかなか部屋に入ってくる気配もしない.ついには音も消えた。
「え、、お父さん?」
と震える声で尋ねる.怖い。暗い。見えない。
スマホに電気を灯す。そこには反射したお父さんの顔が映る。
ひっ、と声をあげると同時に私は背中に激しい痛みが走り私は意識失った。
「ゴミはお前だ。今日は俺の。俺の.誕生、、」
その晩はパトカーの音が鳴り止むことはなかなかなかった.
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▱よくわかんないと思う部分もあると思いますが❗️
ぜひぜひ内容