____ 儚い 。

7 2024/06/03 13:23

・こちらは小説選挙に出すものとして作ったので、実際の方々とは何も関係ありません。ご理解ください。

__________

それは、ある夜の話。

時計が10時を回った頃、突然にその話は始まった。

「ねえ、知ってた?」

そう言って、僕の方を振り返った彼女に、僕は「何が。」と返す。

すると、彼女は微かに表情を緩め、

「クラゲって、死ぬときは溶けて消えちゃうんだって。」

__何の脈絡もなく、そんなことを言ってきた。

突然のことに、何も答えることも出来なかった。

「そうだね。」とか「へえ。」とか、何かしら答えられたはずなのに。何も言えなかった。

「だからね、わたし、クラゲになりたいんだ。」

そんな彼女の願いを、僕はただ黙って聞いていた。

そう思わない?と彼女が問う。

「僕、は思わないかな、…。」

「…何で?」

少し驚いたようにして、再度問いかけられる。

「え…何で、って、なんとなく、?」

特に理由もなかった僕は、”良いと思う”と言えばよかったのに、なぜかそれを脳内が拒否した。

「でも、クラゲって2年とかしか生きられないんだよ。

 …人間って、結構嫌な終わり方ばかりするでしょ?でも、クラゲは綺麗で、それでいて儚い終わり方なの。」

うっとり、としながら話す彼女。

なぜ、そんなにもクラゲにあこがれるのだろう。

確かに、嫌な終わり方をする人間は沢山いる。

おおよそ大半がそうだろう。

でも、僕は、沢山一緒に時間を重ねて愛を求め、求められ。

そのようにして終わる方が良い。

彼女の話を聞いていて、そう思った。

「…まあ、何でもいいけどね!」

終わり終わり!と言いながら手を叩き、話を切り上げられる。

まだ聞きたい事はあったが、ここで終わりにしておいた。

「ゴメンね。急にこんな話して。」

そう笑った彼女の顔が無理しているように見えた、気がした。

時計は11時30分を指していた。

__________

次の日、朝起きると、彼女がどこにもいなかった。

お揃いで買った服も、アクセサリーも、全て、生活のまま残っているのに。

そんな中、彼女という大切な存在だけがなくなっていた。

僕しかいない部屋に、テレビの音が響く。

『昨日、午後12時頃__県__市の海辺で、高校生くらいと思われる女性の___。』

聴覚のどこかで、言葉を拾っている。

『女性はなぜか軽装でいて___。』

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その他2024/06/03 13:23:39 [通報] [非表示] フォローする
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