____ 儚い 。
・こちらは小説選挙に出すものとして作ったので、実際の方々とは何も関係ありません。ご理解ください。
__________
それは、ある夜の話。
時計が10時を回った頃、突然にその話は始まった。
「ねえ、知ってた?」
そう言って、僕の方を振り返った彼女に、僕は「何が。」と返す。
すると、彼女は微かに表情を緩め、
「クラゲって、死ぬときは溶けて消えちゃうんだって。」
__何の脈絡もなく、そんなことを言ってきた。
突然のことに、何も答えることも出来なかった。
「そうだね。」とか「へえ。」とか、何かしら答えられたはずなのに。何も言えなかった。
「だからね、わたし、クラゲになりたいんだ。」
そんな彼女の願いを、僕はただ黙って聞いていた。
そう思わない?と彼女が問う。
「僕、は思わないかな、…。」
「…何で?」
少し驚いたようにして、再度問いかけられる。
「え…何で、って、なんとなく、?」
特に理由もなかった僕は、”良いと思う”と言えばよかったのに、なぜかそれを脳内が拒否した。
「でも、クラゲって2年とかしか生きられないんだよ。
…人間って、結構嫌な終わり方ばかりするでしょ?でも、クラゲは綺麗で、それでいて儚い終わり方なの。」
うっとり、としながら話す彼女。
なぜ、そんなにもクラゲにあこがれるのだろう。
確かに、嫌な終わり方をする人間は沢山いる。
おおよそ大半がそうだろう。
でも、僕は、沢山一緒に時間を重ねて愛を求め、求められ。
そのようにして終わる方が良い。
彼女の話を聞いていて、そう思った。
「…まあ、何でもいいけどね!」
終わり終わり!と言いながら手を叩き、話を切り上げられる。
まだ聞きたい事はあったが、ここで終わりにしておいた。
「ゴメンね。急にこんな話して。」
そう笑った彼女の顔が無理しているように見えた、気がした。
時計は11時30分を指していた。
__________
次の日、朝起きると、彼女がどこにもいなかった。
お揃いで買った服も、アクセサリーも、全て、生活のまま残っているのに。
そんな中、彼女という大切な存在だけがなくなっていた。
僕しかいない部屋に、テレビの音が響く。
『昨日、午後12時頃__県__市の海辺で、高校生くらいと思われる女性の___。』
聴覚のどこかで、言葉を拾っている。
『女性はなぜか軽装でいて___。』
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)