アニメ『ゼーガペイン』テレビ放送版はおもしろい?つまらない?


ほぼ全話視聴
漫画は知らん
ゲームも知らん
小説も知らん
映画も見てない
端的に、ゲームありき
一応、人類同士の対決の体裁だが、ほぼ敵方であるガルズオルムは異星人的描写で徹底
しかも人体らしさを有するのは復元体の2人だけ
その他の敵性存在は全て量子サーバーのAIにより指揮される大量の大型機械体、といった設定
この明らかな、いかにも前時代的な善悪二元論の形を採った理由は、これが放送されている最中に発売された、メディアミックス展開の1つである、Xbox360用アクションゲームへの視聴者層の誘導にスムーズであるとの判断が、プロジェクト企画段階で固められたからかと思われ
なので、26話と、やや深掘りするには物足りない放送ターム故なのもあろうが、敵方も含めた、キャラの人となりや機微を描く文芸的完成度は低い
この点、レベルファイブがアニメ、ゲームの両得をそれまでのシリーズ以上に意識して仕上げたガンダムAGEにおける、ゲーム販促皮算用ありき故のアニメ本編への悪影響、という点でほぼ重なる
特に、敵方大将ナーガがもはや独自の体を持たず量子サーバー内データ化、しかも幻体化した人類すべてに遍く関わる存在、という曖昧設定
一応終盤に他のキャラ、特に担任のクラゲに擬態して、キョウらセレブラム相手に所信を述べ説いた場面を設けてはいたが、それはホントにかいつまんだ考えのみ
彼の生い立ち、成長、交際、キャリア、思想形成という、マッドサイエンティスト化の変遷への言及、また、それを描いたクロニクル映像がほぼ皆無だったので、これだけ?としか思えず
この総データ化計画に賛否を示した関係者は多かったはずなのに、それらの存在、発言内容も全て省略
おまけに復元体の2人もいかにも悪魔的相貌で言動も粗野
敵方の機械体もいかにもな毒々しさ
まんまゲームの敵キャラ、敵機設定
期待した、セレブラム、ガルズオルム間の理性的折衝も皆無
見る側が納得できる、交渉決裂の推移描写も無く、ただただ戦わせたいだけにしか映らなかった
もう一方のキョウら、セレブラム側の描き方は、比較すれば丁寧だが、それでもかなり雑な描き方で、視聴者側がかなり頭の中で補完してあげないと成立しない粗雑さ
その筆頭がシズノで、自分が実在しない、データ以外の何者でもない人工幻体である事を知らないで育った事、
そして、どうやってその事実を知り得たのか解らんが、ショックのあまり、シズノがキョウの近くで泣き崩れている場面しか描いていなかった
隠蔽された出自に、矛盾や違和感を覚える事が重なり、最後に決定的証拠に触れる、その過程をホントに潔く省略
たぶんキョウも一緒に行動してあげたんだろうなぁ、とか、全部見てる側のこっち任せ
形はどうあれ境遇の違いゆえに結ばれぬ悲恋の、そもそも論の部分
ここは作品のバックボーンとなる、かなりの見せ所なんじゃないの?と、呆れた次第
他にも、愛するリョーコのために全力で行動するキョウのありように憧れ、自分も、と、最期の出撃前に想いを寄せていたキョウにキスをする、ルーシェンの描き方の雑さや、そのシーンの後の、ゼーガ操縦席で吹っ切れた高揚を覚えながら、アビスから舞浜サーバーを死守するルーシェンの、文芸的に疑問を感じる無粋なセリフ
話にも聞いていなかった初対面のアークとは実質1日だけ、敵方シンとは数回しか接触していないのに、亡くなるや大号泣のリョーコ
「え、そうなの?」くらいの反応が妥当かと
中学の水泳部の大会で不正を犯す審判
そんなのいるか?
で、それを殴る主人公
その暴力沙汰で失格になった他のメドレーリレーメンバーの、高校に上がってまで続けるイミフイジメ
他にも挙げたらキリなし
なんもかんも雑
ふた昔も前だと流石に牧歌的だったんだなぁ、と
とりあえず人間を描くこと自体が雑なので、そこにどんな御大層な設定が加わろうがグダグダなのは補正されない
ホントのホントのところでは殆どの視聴者が解るわけのない量子力学を作品全体の御神体と崇める世界観設定
イェルを筆頭に、メジャー所ではなく、聞いた事もないマイナーな神話・伝説・地理にまつわるネーミングや設定を無理くり引っ張り出してきて引用する、安直な難解度ブースト策
この解りづらい2大要素を贅沢な分厚い衣として、その実貧相な人間ドラマというタネに纏わせ隠蔽する、退店後の客に口コミでコキ下ろされるイカサマ天麩羅商法
あー、またこの誤魔化し方かぁ、と、あーあ感で落胆させられる、ジャパニメーションの代表的な類型の1つ
セカイ系の啓蒙家エヴァ放映から、そしてWindows95発売から10年余り
セカイ系は爛熟期を迎え、ITのテクニカルタームも浸透したこの時期に、ガイナックスにロボットアニメの覇権を奪われたサンライズが仕掛けた、奇しくもエヴァと同じく全26話のセカイ系作品
ミステリ要素における焦らしまくりの小出しのネタバラシ
しかもテレビ版だけでは全くの説明不足、最終話放送後の考察厨による侃侃諤諤頼みの投げっぱエンド
サルベージ、という香ばしい懐かしさ
ゲンドウは生徒会長シマ
培養槽でのクローン育成
コレガ、ココロ?
etc.…
と、「神話の権威の威を借る狐」要素以外にもほぼ同じの、セカイ系通常運転モード
異なるのは主人公がウジウジ内省ではなく昭和系直情径行快活タイプな所か
あと、ロボットは3DCGで見ていて疲れるし、何の動きをしているのか解りづらく、しかも大してスタイリッシュでもない
それと、メインキャストの声優陣が当時ほぼ新人ばかりで、悉く演技が壊滅的な所
殊にリョーコを演じた花澤香菜はなんで当時これでヒロインやれてんのか謎
主役のキョウ演じた浅沼晋太郎も酷い
声優ビジネス隆盛の先行投資として電通が強く押した人選なのかな、と思うけど、完成度を上げたい職人魂もあるサンライズにとっては、自分達が苗床扱いされたようで、忸怩たる思いも強かったのではないかな
この点、芝居の安定した声優を揃えたエヴァと対極
とにかく、ほぼ量子力学の難解性で力押しする、「つっこませねえぞ」感丸出しで説得力を持たせようとする姑息な作品なので、見ていて解らないから一応調べるこっちとしては、本当に疲れる作風
正直、やめて欲しい制作姿勢
まぁ、ご都合、適当なつまみ食い程度の拝借利用だなぁ、という描写ばかりだと、殆どの視聴者は思ったんだろうけど
ともあれ、「どうだ!俺たち、勉強してるだろ!?」のイキリ設定厨に堕すよりも、人間を丁寧に描いて、ストーリーの展開の面白さで正々堂々と勝負して欲しい、というのが忌憚のない感想
あと、戦闘時のスーツのボディコンシャス具合で萌え豚釣ろう、ってのも同じ
大きく開脚させる搭乗姿勢とか、わざわざ股の前に小さいパーテション設けるとか、後ろからのケツプリ画角、カレンよろしくの斜め下方から見上げた連山画角とか…
キューティーハニーなデザインの時点でてへぺろ作風だし
それ無しでも面白けりゃ見ると思うけどね
あと、哲学用語か
ただ、これもホントに齧る程度
そして最後は幸若舞の「敦盛」でダメ押し
これは元ネタの平家物語の内容というより、好んでよく演じていた、現代もアイコンとして強力な訴求力のある信長の権威を拝借したかっただけでしょ?
なんだかみみっちいんだよね、こういう引用の姿勢
ホントに敦盛の文言が必須だと思うんなら、こんな直喩でも、濁した暗喩でもなく、自分達で咀嚼して嚥下して消化して昇華させた自分達のコトバでさりげなく叙述しなよ
その方が響くんだから
本当は必要でもないし、出来ないんなら、ハナからやめときなよ
自信が無いんだなぁ、と、マイナス評価でしか受け取られないから
オーラスのグラス内の草が飲み込まれたであろう描写は、余韻として悪くないと思うよ