空想小説「青鬼」 第47話 味付け担当は絶対やらない人
氷河「もう夕暮れか。早いねぇ。」
氷河は窓を横目に呟いた。
闇氷「冬の方が日照時間短いだろ。」
氷河「マジレスはやめんさい。夏なのに早いなって事だよ。」
卓郎「楽しく過ごしゃ1日はあっという間だよな。」
美香「戦ってても1日はあっという間じゃない!」
たけし「そりゃ美香なら戦い三昧でも時間は早いだろうけどさ…」
ひろし「私達は戦いとは無縁な分不慣れですから逆に長く感じるのですよ。」
美香「そんなに慣れない?」
ひろし「慣れません。」
たけし「た、戦いなんて慣れねぇよ…!」
卓郎「俺も美香ほど慣れてはねぇな…」
氷河「自分は慣れた。屑は容赦なく斬れるからね。」
闇氷「敵を倒すのに慈悲なんざいらなくね?あ、私も慣れた。」
3人は慣れない様子の中、氷姉妹はさらりと慣れた様子で言った。
たけし「ふ、2人共適応力高すぎだろ…」
氷河「でも暑さには慣れない。」
闇氷「いきなり眩いのは目がやられて無理。」
氷河「要は自分らも慣れない事ぐらいあるから無問題だよたけしさん。」
たけし「お、おう…」
そんな話をしていると、遠くから水刃さんの声が聞こえてきた。
水刃「今から料理の下拵えするけど手伝うって子はいるー?」
氷河「あーやりますよ水刃さん!皮剥きとか野菜切ります!」
闇氷「食材を切る作業ならやる。味付けとかは絶対やんねぇからな。」
美香「私も切るわー!」
卓郎「じゃあ俺は野菜炒めとかやるぜ!」
ひろし「私もそうしましょう。指示があれば別の作業もやります。」
たけし「俺もそうするぜ…!」
そうして皆で一緒に水刃さんの元へ向かった。
水刃「あら、皆来たの?」
闇氷「人手が多いに越した事はないだろ。でも味付けだけはぜってぇやらんからな。」
美香「さっき向こうでも言ってたけど…なんでなの?」
美香が理由を聞くと、闇氷は嫌な事のように目を細めて言った。
闇氷「昔炒め物の味付けしようとして分量分からなさすぎて味が濃すぎてとんでもない事になったから。んで塩胡椒振ろうと思ったら強すぎて中身全部ぶちまけたから。」
卓郎「あー…」
闇氷「っていうか目分量とか適量ってなんだよ!?せめて大さじ小さじとかで教えろよ!?」
氷河「アーソレワカルワー」(−▽−)
キレる闇氷の隣で氷河はなんかぱーって感じの顔で便乗した。
水刃「まぁーそれは…長く料理してたら分かる勘…みたいなもの…かな?」
闇氷「じゃ長年料理してない奴はそんな勘ないから爆散しろっての!?」
氷河「何故に爆散!?」
たけし「爆散というより撃沈の方が合ってるんじゃないのか…」
水刃「まぁまぁ、まずは簡単な味付けからね!そこから頑張っていこっか?」
闇氷「…とりあえず野菜切る。」
闇氷は不機嫌な声でナイフを出すとまな板の方へ向かっていった。
氷河「なんだい…ご機嫌斜め30度だなぁ…」
卓郎「もっと不機嫌になったら角度は50°とかみたいに大きくなるのか?」
氷河「いや適当に言っただけだけど…」
『正確には確か剣のケンジャキの台詞のはずだけれども…』
「まぁ早く切ろうぜ!」
たけし「氷河がニコニコ顔でナイフ持ってたら何か怖いんだけど…」
氷河「なんでぇさー…別に自分ニコニコ顔で敵斬るサイコパスじゃないんだから…さぁさぁ、何を切るんですか、水刃さん?」
水刃「大体は私が終わらせたから、後はカボチャを角切りにしてもらおうかな?」
氷河「任 せ て 下 さ い」
美香「力仕事なら十八番よ!」
闇氷「切り終わったけど。」
やる気を見せる2人の前に角切りにしたカボチャを入れたボウルを持って奥から現れた。
美香 氷河「ゑ!!?」
闇氷「主がカボチャを角切りにするってのを聞いたから即終わらせた。」
卓郎「でも切ってる音もしなかったぞ…!?」
闇氷「おい、私の結界をお忘れか?お前ら全員の視覚聴覚を誤魔化してやったってだけの話だ。」
卓郎「あ、幻影結界…」
美香「もー闇ちゃんずるいー!!私も切りたかったのにー!!」
美香は闇氷の肩を掴んでしっちゃかめっちゃかに揺らした。
闇氷「待て待て待て待て!!今揺らすな!!カボチャが落ち」
言い切る前に闇氷の腕からボウルが滑り落ちた。
闇氷「あ゙!!」
氷河「まずっ…」
ハクモ「あぶなーい!!」
地面に落ちる寸前にハクモが風を巻き起こし、全てをボウルの中に入れた後、まな板の上に降ろした。
ハクモ「もー、美香お姉ちゃん!しょくざいもってる人をゆらすなんてなに考えてるのっ!」
美香「えー…だって私だって野菜切りたかったのに闇ちゃんが全部やっちゃったんだもの…」
ハクモ「それは闇お姉ちゃんもわるいけど、しょくざいをおとしちゃったらだめになっちゃうでしょ!」
美香「はい…」
ハクモ「闇お姉ちゃんも、1人でおやさい切らない!みんなで切るの!」
闇氷「チェッ…」
ハクモ「おへんじは?」
闇氷「はぁ…はいはい、わーったよ…」
ハクモ「はい、は1回だよ!」
闇氷「…は――い……」
ハクモ「もー…」
ひろし「では、後はどうしますか?」
水刃「うーん…頼むのは下拵えだけだったし…」
氷河「他の野菜は?」
水刃「私が全部やっちゃった…後残ってたのがカボチャだけで…」
美香「えー!?もうないの!?」
水刃「力仕事はあまり得意じゃなくて、中々切れないからカボチャだけ手付かずだったの…」
ひろし「じゃあ今までどうしてたんです?」
水刃「1人で頑張って斬るか氷河ちゃんや闇氷ちゃんに頼んだり…」
氷河「水刃さーん、自分らに頼むのはいいですけど、数十日前までいなかったのにどうやって頼むって言うんですかー?」
氷河がジト目でそう言うと水刃さんは少し考えた後、はっとなって補足を付け足した。
水刃「え?…あ…、そりゃあ、1人の時は1人で頑張って切ってたわよ?でも今はひろし君や美香ちゃん達もいるから頼っちゃおっかなーって…」
たけし「さっきの言い方じゃまるで氷河と闇氷はここに定住してるとも捉えられちまうからな…!」
闇氷「はっ、流石にそんなわけねぇじゃねぇかよ。」
氷河「仮に自分らがここに住んでるとしたら青鬼や殲滅軍がいる最早無法地帯と言っても過言ではないここに皆を連れてこないよ。」
美香「うーん…まぁ今現在なんとかなってるしいいんじゃない?」
卓郎「呑気だな、美香…」
水刃「まぁまぁ、後は大丈夫!皆は部屋で待っててもらえる?」
美香「むー、なんだか消化不良だわ…」
水刃「ごめんって美香ちゃん!機嫌治して?ね?」
美香「………」
水刃「うーん…ね、ねぇ卓郎君、美香ちゃんの機嫌を治す方法ってあるかな…?」
水刃さんは膨れっ面な美香を宥めようと卓郎に案を求めた。
卓郎「そうっすねー…得意料理出してみたらどうっすか?」
水刃「得意料理?んー…そうなってくると…よし!じゃあちょっと和風な料理にシフトチェンジしよっか!」
ひろし「シフトチェンジと言いますと…元は何を作る予定だったのですか?」
水刃「作ろうかなって思ってたのはカボチャのスープだけど、私の得意料理は…その…和風系料理だから、煮付けに変えようかなって。」
たけし「何で言うのを躊躇ったんだ…?」
水刃「その料理名を今言っちゃ面白くないでしょう?まぁ美味しいと思うから、向こうで待ってて!」
水刃さんはそう言うと皆を居間に連れていき、台所へ戻っていた。
美香「水刃さん、何を作る気なのかしら?」
たけし「和風って言ってたし…ご飯味噌汁焼き魚とかか…?」
卓郎「いやー…得意料理にそれはちょっと弱くないか?」
たけし「確かに…」
闇氷「和風なら麺類とかもじゃね?」
ひろし「確かにそうですね。」
氷河「麺類かぁ…それなら饂飩かお蕎麦がいいなぁ…」
美香「氷ちゃん麺類好きなの?」
氷河「うん、麺類は好きさね〜釜玉饂飩もいいし、つけ蕎麦も素麺もいいし〜パスタとかだったらたらこパスタもいいね〜♪」
闇氷「お前ホント好きだよな麺類…」
氷河横目にそう呟くと氷河は闇氷に顔を向けた。
氷河「そう言う闇氷も麺類好きじゃん。明太釜玉嬉しそうに食べてたのは誰さ?」
闇氷「姉さんだろ。」
氷河「いやまぁ自分も明太釜玉好きだけど!闇氷も嬉しそうに食べてたじゃんか!」
闇氷「知るか。」
氷河「なーにを言うとう!証拠写真あんだかんなー!」
氷河はスマホの画面を見せた。そこには美味しそうに釜玉饂飩を食べる氷河とどことなく笑って明太釜玉を食べる闇氷の姿があった。
美香「あ、闇ちゃん可愛い!」
たけし「美味しそうに食べてるな…」
闇氷「はあぁ!?おまこの写真誰が撮ったんだよ!!?」
氷河「リアだけど。」
闇氷「リアって誰だ…ってあぁ、あいつか…あの野郎次会ったら一発どついてやる…」
卓郎「そのリアってのは誰なんだ?」
卓郎が問うと、闇氷は少し不機嫌気味に話した。
闇氷「リアってのはまぁ…関わって4、5年くらいの腐れ縁の奴だな。」
美香「どんな子なの?」
氷河「えーと…ごめん、画像無いや…」
美香「口頭でもいいから教えてよ!」
闇氷「美香のくせにそんな言葉知ってんだな…」
それを聞いた美香はムスッとした顔になった。
美香「ちょっとー闇ちゃん、それどういう意味?」
闇氷「お前に脳筋イメージがついてただけだ。」
たけし「あながち間違いじゃねぇな…」
美香「たーけーしー??どういう意味かしらぁ〜??」
卓郎「そういう事してるからだと思うぞ、美香…」
美香「(´・ω・`)ショボーン」
氷河「まぁまぁ、話を戻して…年は14、15くらいで、容姿は…えーと…」
氷河が容姿を思い出そうとしていると襖がスッと開いた。現れたのはお盆をメイドのように指で支えている水刃さんだった。
水刃「待たせたわね!出来たわよ!」
ひろし「それは…蕎麦ですか?」
氷河「蕎麦キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
氷河が蕎麦を見た途端目を輝かせて歓喜した。
美香「良かったわね氷ちゃん!氷ちゃんの好きなお蕎麦じゃない!」
卓郎「得意料理ってまさか…蕎麦なんですか!?」
水刃「そう!お蕎麦が得意料理なの!一応饂飩も行けるわよ?」
氷河「蕎麦でオネシャス!!」
闇氷「姉さんハイテンションで性格ぶっ壊れてんな…」
ハクモ「たのしいならもーまんたいもーまんたい、だよ!」
闇氷「お前どっから無問題って言葉覚えたんだ…」
水刃「さぁさぁ、皆席について!皆で食べましょうね!」
氷河「はーい!」
氷河はルンルン上機嫌状態で机に向かっていった。それを見たひろしはぽつりと呟いた。
ひろし「…氷河がああも暗い性格になる前はこのような性格だったのでしょうか。」
卓郎「多分なー。ほんとはあんな感じで小さな子供みたいに笑って、無邪気で明るい子だったのかもなー…」
氷河「ほーら皆、早ぅ早ぅ!折角の蕎麦が伸びちまうぜー!」
卓郎「っと…あーそうだな!皆、行くぞ!」
ひろし「…そうですね。」
皆は氷河の元へ行き、皆で水刃さんの蕎麦を楽しそうに食べた。
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闇氷「…お前私の眼帯はどうした?」
霞「あ゙…忘れてた☆」
闇氷「おい」
霞「すみません…これで許して?」(´・ω・`)ショボーン
闇氷「それで喜ぶのはごく一部だよこのリア主が!!」
霞「ワーン(´TωT`)」
マリオ「うーん…仲間の負担を減らすのも闇氷なりの思いやりなのかね。」
ダークマリオ「真相は本人しか知らない。」
>>6
闇氷「戦場じゃどこぞの愚姉がやらかすからな。それの腹いせ兼ねて姉さんの出番取っただけだ。」