夏の迷い子は不思議な出来事にあう

1 2025/06/09 23:57

「⋯あれ、こんな夏の日にどうしたのかな。」

「⋯迷子になった?」

「へぇ⋯親御さんとはぐれてしまったのか。」

「それで宛もなく歩き続けて俺を見つけたのかい。」

「それは災難だったね。」

「んー⋯ここ、外は危ないからなぁ。」

「なんでって?」

「⋯人を喰う化物が、うようよしてるからだよ」

「⋯おっと、そんなに怖がらないでよ。」

「からかっただけさ。」

「⋯でもまぁ、実際人を喰う化物がいるのは事実だからなぁ。」

「俺を見つけて君は運がいいね。」

「俺を見つけなかったら⋯もしかしたら化物に喰われてたかも」

「⋯いや、こういう上からなのはよろしくないね。」

「今のは忘れて。」

「ん?早く家に帰りたい?」

「まぁ、確かになぁ⋯」

「早く帰りたいよなぁ⋯」

「でも、ここから街までは相当時間がかかる。」

「君今すっごく疲れて疲労困憊でしょ?」

「そんな状態だったらいざ化け物に襲われた時逃げ切れないよ。」

「⋯野宿の知識はない?」

「そっかぁ⋯」

「⋯じゃあ⋯」

「⋯あっはっは、そんな顔しないでよ。」

「流石の俺でも理由なく人を見殺しにする非情な奴じゃあないよ。」

「行く宛がないなら宿においでよ。」

「此処にある唯一のお宿さ。」

「俺、そこへの近道知ってるよ。」

「連れてこっか?」

「⋯どこにあるの、って?」

「意外とすぐ近くにあるもんだよ?」

「君が視えてないだけで。」

「よーし、じゃあ目を瞑ってて。」

「俺が目ぇ開けていいって言うまで、開けちゃいけないよ。」

「さぁ、俺が手を引いてあげる。」

「⋯⋯⋯」

「…よーし、目ぇ開けていいよ。」

「ほら、もう着いた!」

「どうだ、驚いたか?」

「⋯何?ゲームキャラみたい、って?」

「あっはっは!鋭いねぇ。」

「まぁ、『ほら、もう着いた』も『どうだ、驚いたか』もとあるキャラのセリフだからなぁ。」

「さ、ここでしばらく休んでおいでよ。」

「ゆっくり休んだら、君の街に帰ろうじゃないか。」

「⋯俺の名前?」

「ふふ⋯さーね。」

「知ったとて、俺の事なんてすぐ忘れてしまうさ。」

「全てが夢のように、ね」

「さぁ、玄関の戸をくぐって。」

「…何?眠たいの?」

「あはは、いっぱい歩いたから疲れちゃったんだろうね。」

「…しょうがないなぁ。俺が寝床に運んだげるよ。」

「…君はよく頑張ったね。よくここを見つけられたものだよ。」

「俺から君に1つ、贈り物をしようか。」

「ん?今は見なくていいさ。」

「君の手に握らせとくね。」

「さ、ゆっくり寝なよ。」

「次に目が覚めれば、きっと、」

⋯迷い子が次に目覚めた所は、自室の寝床の上だったという。

その子が経験した不思議な出来事は、何1つ覚えていなかった。

…ただ、違うことが1つ。

手の中には、小さな青い桜のキーホルダーが入っていた。

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その他2025/06/09 23:57:13 [通報] [非表示] フォローする
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迷い子の不思議な出来事。

夢か現か、どちらなんだろうね?

⋯一応夏っぽい服を描いたつもりです。ハイ。


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