《春総選挙》本心を隠す嫌いな春
「本心を隠す嫌いな春」
もう春になる。
私は今年の春が嫌いだ。
「今年」だから嫌いなのだ。
「ゆうな~!」
親友の茜が私を呼ぶ。
出そうな涙を引っ込めて明るく話す。
「いよいよ引っ越しちゃうんだね。」
「うん。私も引っ越したくないけど・・・。」
「東京から岐阜なんて遠いよ~。」
我慢をしていたのに、涙がぽろぽろ出てきて止められない。
茜も同じように泣き叫ぶ。
そう。
中学1年生で親友になって中学生活を共にした私たちは、今年の春で離ればなれになってしまう。
「引っ越しても、私のこと忘れないでね。」
「うん!もちろん忘れるわけないじゃん。」
念を押すと、茜は晴れ晴れとした顔になった。
「忘れるというか、連絡つないでるんだから忘れるわけないじゃん!」
「それもそっか!」
「遠慮しないで連絡してね。私も連絡するから。」
「もちろん!あっ、そろそろ時間じゃない?」
「うん。本当だ。」
そろそろ本当のお別れの時間。
「ゆうな~。そろそろ行くよ。」
お母さんが私を呼ぶ。
「本当に私のこと忘れないでね。」
「忘れないって。その言い方、茜が引っ越すみたい。」
「だって~。ゆうながいるといないで、全然違うんだもん。」
「あら、茜ちゃん。お見送りありがとう。今までありがとうございました。」
「いえいえ。私もゆうなに出会えて、本当に良かったです。」
お母さんに律儀に挨拶されて、茜も律儀に挨拶し返す。
と、お母さんがこちらを向く。
「さぁ、本当にいかないと飛行機に遅れるよ。」
「うん。茜、今まで本当にありがとう。着いたら連絡するね。」
「ありがとう。じゃあ、バイバイ。」
「うん。バイバイ。」
お母さんに連れられて、駅に向かった。
「よし!」
気合を入れる。
はぁ~。
本当は”今年の春が大好き”。
やっと茜から離れられた。
正直言って、茜のこと嫌いだった。
自己中で、束縛がすごくて、自分勝手な茜。
離れようと思えばいつでも離れられるけど、茜以外に友達がいないからやめておいた。
私の心には、新生活のわくわくに向けて爽やかな風が吹き始めていた。
正直、茜なんて人物を忘れてしまいそうなぐらい。
~終わり~
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