『東方風神録』のストーリーについて解説(現人神の東風谷早苗という生贄枠)
前回の https://tohyotalk.com/question/842604 の続き
元ネタである史実(守矢一族の血統)と、彼女がなぜ幻想郷でここまでやるのかについて深掘り。
推しの早苗の可愛らしさの裏にあった、数千年にわたる「神の血を引く人間の、あまりにも重すぎる政治的呪いと生存戦略」。
元ネタのリアルの歴史から風神録、そしてその後の作品で見せる狂気まで、イチから網羅して解説する。長くなるけど東方信者の愛で読んで
「東風谷」の正体と、数千年間諏訪を支配した守矢一族
まず、早苗の名字「東風谷(こちや)」と、設定上の元ネタである実在の氏族「守矢(もりや)氏」の話。
ここを知ることで、早苗の立ち位置のグロいエグさが一気に解像度高くなる。
実在する「神長官の守矢氏」と「勝者(タケミナカタ)と敗者(洩矢神)」の話
実際の諏訪大社では、タケミナカタの末裔とされる「諏訪氏」がトップの最高神職の大祝(おおほうり)に就いた。だけど、大祝は「生神(神そのもの)」として扱われたため、政治や実際の祭祀の実務を自分でやることができなかった。
そこで、実務の全権を握り、裏で諏訪大社を実質的に支配し続けたのが、敗者である洩矢神の末裔「守矢氏(神長官)」だったんだよね。
ミシャグジ様を降ろせる唯一の血統、なぜ守矢氏がそんな特権を持てたかというと、諏訪の土着神であり最大の祟り神である「ミシャグジ様」をワイルドカードとして握っていたから。諏訪大社の重要な儀式では、守矢氏のトップ(神長官)が呪術を使ってミシャグジ様を大祝(生神)に「降ろす」ことで、初めてその大祝は神としてのパワーを得られた。つまり、勝者である諏訪氏も、守矢氏が協力を拒めばただの人間になってしまう。これが数千年間、敗者であるはずの守矢一族が干されずに、特権階級として生き残れた理由。
じゃあ、なぜ早苗の苗字は「守矢」じゃなくて「東風谷」なのか。実は、実際の守矢氏の歴史の中で、一族の分家や関係者に「東風谷」や「守矢」にインスパイアされた名前が存在する。ZUNはこれをあえてちょっとずらして「東風谷早苗」にした。つまり早苗は、現代風の苗字を名乗ってはいるものの、その肉体には「数千年間、中央の神(神奈子の元ネタ)と騙し合い、妥協し合いながら、呪術と政治のバランスを保ってきた守矢一族のガチの血」が流れてるんだよね。
「現人神(あらひとがみ)」という名の、最高に都合のいい政治的生贄
早苗の肩書は「祀られる風の人間」であり、「現人神(人でありながら神でもある存在)」。
これが神奈子と諏訪子の二柱にとって都合のいい「政治的パーツ」だった。
冷戦の終止としての早苗神奈子(外来の侵略神)と諏訪子(土着の地主神)は、ビジネスパートナーではあるけど、本質的には「殺し合った敵同士」。
外の世界で信仰が落ちぶれていく中、二柱の間の空気は最悪だったはず。
そこに、諏訪子の血を引く人間の子供(早苗)が、生まれつき「奇跡を起こす力」を持って現れた。神奈子からすれば、早苗は「かつての宿敵(諏訪子)の血筋でありながら、自分を信奉してくれる巫女」。これによって神奈子は、諏訪子へのコンプレックスや警戒心を和らげ、早苗を通じて諏訪の信仰をコントロールできた。
逆に諏訪子からすれば、自分の名前や存在が歴史の闇に忘れ去られていく中で、早苗は「自分の血と奇跡の力を現代に残す、唯一の直系の子孫」。早苗が守矢神社にいる限り、神奈子も諏訪子を完全に無視することはできない。二柱の「親の同盟」の結成結果として、ギスっていた二柱の神様は、「この早苗っていう才能のある、現人神の女の子をどうやって食わせていくか(消滅から救うか)」という共通の目的でガチッと団結することになった。早苗は、自分が二柱の神様を信仰して操っているつもりかもしれないけど、システムとしては「二柱の超巨大な神の確執を繋ぎ止めるための、最高に尊くて残酷な『生贄(依代)』」として機能してるんだよね。
悪気のないサイコパスと言われる常識の破壊
ここからが風神録本編以降の早苗のヤバさ。早苗は「外の世界の常識」を幻想郷に持ち込んだと言ったけど、その動き方が戦慄するレベルでエグい。
「郷に入っては郷に従え」の完全拒否、普通の人間が幻想郷に移住したら、まずは博麗霊夢や八雲紫といった「幻想郷の支配者」に挨拶して、そこのルール(調和や結界の維持)を学ぶはずだけど、早苗は違った。
「外の世界のロジック(市場独占・破壊的イノベーション)」でそのまま殴り込んできた。
簡単に流れを言うと
ステップ1(威嚇):
博麗神社にいきなり行って「廃業しろ」と脅す(5面)。
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ステップ2(寝返り):
霊夢に負けたら、一瞬で「あ、幻想郷は暴力(弾幕)がルールなんですね!」と理解し、落ち込むどころか「じゃあ、次はもっと強い勢力(妖怪の山)と組みます」と即座に方針転換。
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ステップ3(利権の囲い込み):
山の天狗や河童に、外の世界の「科学」や「産業」の知識を流し込んで、守矢神社をトップとした経済同盟を結成。博麗神社を完全に孤立させた。
「妖怪退治」という名の、ただのエンタメ感覚風神録の後の作品(地霊殿や星蓮船など)で、早苗は自機(プレイヤーキャラ)として妖怪退治に乗り出すんだけど、その時のセリフが狂ってる。
霊夢や魔理沙にとっての妖怪退治は「異変解決」や「仕事」だけど、早苗は「これが幻想郷の妖怪退治ですか!テレビで見たヒーローみたいで不謹慎だけど楽しいです!」みたいなノリで、笑み浮かべながらガチの神力をぶち込んで妖怪を爆破してる。
幻想郷の妖怪たちからすれば、これまで「人間と妖怪のプロレス的なバランス」で生きてきたのに、外の世界の価値観を持った生真面目なサイコ女子高生が、「悪い妖怪は退治しなきゃ(ピュアな正義感)」で容赦なく殺しにくるわけだから、恐怖でしかない。
東風谷早苗というキャラの深み
東風谷早苗は「数千年の神話の呪いを背負わされた悲劇のヒロイン」でありながら、「外の世界の冷徹なビジネス脳と、ピュアな暴走力で、幻想郷の既存のパワーバランスをぶっ壊した最凶のインベーダー(侵略者)」なんだよ。
神奈子と諏訪子という、過去の遺物として消えかけていたロートル神を両脇に携え、
「うちらの神様、最高にカッコいいからみんなも信仰しなよ!従わないやつは神の奇跡(物理弾幕)で分からせるね!」を地で行くスタイル。この「悪意が一切ない、純粋な善意による侵略」こそが、東方風神録、そして守矢神社という組織の最高に濃くてエグい魅力かも。
(追記:前回裏取りで調べるときに見たサイトのURL載せてみたけど、ぶっちゃけ読むときに邪魔だと思ったのでやめました)

