『東方風神録』のストーリーについて解説(記紀神話の瓊瓊杵尊の天孫降臨から神奈子と諏訪子が幻想郷移住計画するゲーム本編まで)
風神録の本質は、数千年にわたる「中央政権(天津神)vs 地方勢力(国津神)」の侵略・政治闘争の歴史の再現であり、かつ、現代の科学(超合理主義)によって居場所を失った神々の「生存をかけた泥臭いビジネス戦略」の物語なんだよね。
神話の源流から風神録本編までの地続きのストーリーを4つのフェーズに分けてガッツリ解説する。
長くなるけど、これ読んだら東方風神録の詳しいストーリーがわかるからぜひ。
日本書紀の出雲の国譲り
まずは風神録までの最深部にある、日本神話最大の侵略劇。
高天原(天津神)の天照大御神(アマテラス)の血統である天津神たちが、外の世界(地上/出雲)を豊かに治めていた大国主神(オオクニヌシ)ら「国津神」に対して、「これからはうちら(瓊瓊杵尊/ニニギノミコト)が治めるから土地だから立ち退いてくんね?」って交渉を吹っかけたんだよね。これが「国譲り」。 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155592390
ただここまで色々あって長いから省くけど、まともな交渉が進まないから、天津神側は最強の軍神・武甕槌神(タケミカヅチ)を地上に送り込んだ。それに大国主はビビって「息子たちに聞いてくれ」と引退をほのめかす。
https://note.com/otakatu/n/n0b1d2585339f
ここで「舐めんな!」と千引の石を片手で持ち上げて武甕槌に挑んだのが、大国主の息子である建御名方神(タケミナカタ)。
……なんだけど、結果は惨敗。武甕槌に腕を掴まれてツララに変えられ、さらに引き千切られて文字通りボコボコにされた。
タケミナカタは命からがら逃げ出して、最終的にたどり着いたのが「科野国の州羽(現在の長野県・諏訪湖)」だった。
https://xn--u9ju32nb2az79btea.asia/shinto4/shrine10.html
https://seesaawiki.jp/toho-motoneta_2nd/d/%B1%CC%CC%F0%BF%DB%CB%AC%BB%D2
悲惨な敗戦契約追いつめられたタケミナカタは、武甕槌の剣を前にして「もう二度とこの諏訪の地から出ません!天津神の命令にも従いますから殺さないで!」と命乞いをして服従を誓う。
https://seesaawiki.jp/toho-motoneta_2nd/d/%B1%CC%CC%F0%BF%DB%CB%AC%BB%D2
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155592390
これが八坂神奈子のモチーフである建御名方神の歴史。
諏訪におけるもう一つの侵略と擬似的な和解
命からがら諏訪へ逃げてきたタケミナカタ(神奈子)だけど、じゃあ諏訪も先住民(縄文時代から続く土着の民)と、彼らが祀る神がいた。これが洩矢神(モリヤノカミ=洩矢諏訪子)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A9%E7%9F%A2%E7%A5%9E
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155592390
鉄と藤の第二次諏訪大戦諏訪の支配権をかけて、外来の神(タケミナカタ)と、地主神(洩矢神)の戦争が勃発する。
洩矢神(諏訪子)当時としては最先端の「鉄輪(鉄の武器)」を持って迎え撃つ。
タケミナカタ(神奈子) 「藤の枝(植物の呪術的な力)」でそれを腐らせる、あるいは無力化して勝利する。
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/shahouRenew/backNumber/h2202/htmls/p04.html
https://suwa-tabi.jp/news/5968/
武力ではタケミナカタが勝った。だけど、重大な問題が起きた。諏訪の人間たちは、縄文の昔から「ミシャグジ様」という祟り神をめちゃくちゃに恐れ、信仰していた。そのミシャグジ様を唯一コントロールできるのが、敗北した洩矢一族(諏訪子)だけだったんだよ。タケミナカタが洩矢を一掃してしまうと、制御を失ったミシャグジ様が祟りまくって、諏訪の土地が滅んでしまう。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155592390
https://seesaawiki.jp/toho-motoneta_2nd/d/%B1%CC%CC%F0%BF%DB%CB%AC%BB%D2
そこで勝者(タケミナカタ)はある政治的ディールを提案した。
「俺がトップの神(諏訪明神)として君臨する。ただし、実際の祭祀や実務は洩矢一族(神長官・守矢氏)に全部任せる」
これによって、神奈子は「勝者」として諏訪大社の上社に祀られ、諏訪子は「裏の支配者」として祭祀を牛耳るという、奇妙な二重統治体制が完成した。
ZUNのキャラデザインで「勝者が敗者の象徴(蛇=ミシャグジ)を身に纏う構造」なのはまさにこれ。神奈子が蛇のモチーフや注連縄を持つのって、現地の人間に対して「ほら、お前らが恐れてるミシャグジ(蛇)は俺の管理下にあるから安心しろよ〜」というアピール、つまり『政治的パフォーマンス』
https://suwa-tabi.jp/news/5968/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A9%E7%9F%A2%E7%A5%9E
https://seesaawiki.jp/toho-motoneta_2nd/d/%B1%CC%CC%F0%BF%DB%CB%AC%BB%D2
現代社会での絶望「信仰の喪失」
それから数千年の時が流れ、現代(外の世界)。
神奈子と諏訪子は、過去の因縁を乗り越えて、諏訪の地でそれなりにうまくやっていた。しかし、彼らに人類史上最大の敵が襲いかかる。
それが「科学の発展」と「合理主義」問題。人間が自然を恐れなくなり、奇跡を信じなくなると、神はエネルギー源である「信仰」を失う。かつて中央神話に挑んだ軍神(神奈子)も、縄文から諏訪の土地に君臨していた絶対的な祟り神(諏訪子)も、現代人にとってはただの「古い神社の観光資源」や「歴史のデータ」に成り下がってしまった。
このままいけば、二柱とも信仰が完全にゼロになる、という神様としてのカウントダウンが始まったんだよ。
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/shahouRenew/backNumber/h2202/htmls/p04.html
https://note.com/otakatu/n/n0b1d2585339f
https://seesaawiki.jp/toho-motoneta_2nd/d/%B1%CC%CC%F0%BF%DB%CB%AC%BB%D2
東方風神録本編「生き残りをかけた幻想郷へのビジネス移住」
ここでようやく、ゲーム『東方風神録』の本編に繋がる。
「過去の因縁?知るか、生き残るぞ!」
かつて侵略し、侵略された二柱だけど、共通の絶望を前にして強固な同盟を結ぶ。
「外の世界がダメなら、妖怪や神話がまだ本物として機能している『幻想郷』に、神社ごと引っ越せばよくね?」
これが守矢神社の幻想郷移住計画。過去の恨みも全部二の次。完全に「信仰を取り戻すためのビジネスプラン」としての決断。
そして博麗神社への営業(恐喝)
幻想郷に移住した守矢神社(神奈子・諏訪子・早苗)だけど、新参者が効率よく信仰を集めるにはどうすればいいか?手っ取り早いのは、幻想郷の信仰の窓口である「博麗神社」を傘下に収めることだった。
だから東風谷早苗は博麗神社にやってきて
「うちらのバックにはガチの神様がついたから、お前んとこの神社、守矢の支部にしてやるよ(意訳:信仰の利権をよこせ)」と、ヤクザまがいの営業(脅し)をかけた。
そして本編の弾幕ごっこの真実
これにブチ切れた博麗霊夢と、おもしろ半分でついていった霧雨魔理沙が妖怪の山を登り、守矢の面々をぶちのめしに行くのが『東方風神録』のストーリー。
神奈子や諏訪子は、プレイヤーに対してガチで殺しにきているわけじゃない。スペルカードルール(弾幕ごっこ)という安全な枠組みの中で、「うちらの神威(パワー)と諏訪の歴史をエンタメとして見せつけてやるから、これを見て信仰しろよ!」という、極めてド派手な「新規参入宗教のPR活動という、デモンストレーション」をやってるだけなんだよね。
まとめ
『東方風神録』の何がそんなに面白いかって、かつて中央(瓊瓊杵尊や武甕槌)に敗北してすべてを失い、地方(諏訪)で権力争いと妥協の末に生き残ってきた神奈子と諏訪子が、現代の科学という時代の荒波に再度敗北しかけ、それでもなお「幻想郷」という新天地で泥臭く、たくましく生き残ろうともがいている泥臭さにあるんだよね。 http://www.tomiokahachimangu.or.jp/shahouRenew/backNumber/h2202/htmls/p04.html
https://note.com/otakatu/n/n0b1d2585339f
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155592390
https://suwa-tabi.jp/news/5968/
神話の時代から続く「敗者の歴史」の延長線上に、あのゲームの1面から6面、そしてExtraステージの弾幕がぜんぶ綺麗に繋がってるんだよ。
マウンテンオブフェイスは神奈子の「山を背負ってきた神としてのプライド」だし、ネイティブフェイスは諏訪子の「誰が何と言おうと私はこの土地の原初の神だ」という意地そのもの。
「生き残るためなら過去の敵とも手を組むし、新天地のルール(弾幕)にも一瞬で適応してやるよ」っていう、神様たちのめちゃくちゃ冷徹で、かつ生命力に溢れたサバイバルストーリー、それが東方風神録の真実

