この恋が叶うとは思わなかった #4 参加
家に帰るなり、携帯にメールが来た。
メールなんて珍しいな、と思いながらメールを見ると相手は雫だった。
一応喋るような仲にはなったので、連絡先を交換してみたのだが、お互い一切話すことがなく着信はないままだった。
「なんのようだろ。」
メールは高校生らしい絵文字もないシンプルな文章であった。
どうやら、昼食時の頼翔たちのグループに入りたいそうだ。
「そんなの俺に言われてもなぁ…」
「『別にいいと思う。頼翔に聞かなきゃわからない。」っと。」
知弘はメールを送信した後すぐベッドに倒れ込み仰向けで、天井のゆらゆら揺れる電球を眺めた。
「雫が来たら頼翔は絶対びっくりするよな。」
それは明確なことだった。
翌日の昼食の時間、頼翔や琴葉がいつもの通り知弘のあたりにブラブラとやって来た。
「なぁ、知弘聞いてくれよ、俺今日箸忘れちまって割り箸なんだよ。」
「それがどうした。」
「どうしたもこうもないだろ、あの木臭い割り箸だぞ。最悪だ。」
彼は木の匂いがする木材製品は苦手なのだ。
「そんなの、持って来ない自分が悪いんでしょ。」
「なんだと、こっちは重大なんだよ!」
何もないより割り箸があるだけマシだと思うのだが、そんなことを言ったら火に油を注ぐことになる。
「「ふん!!」」
両者ともそっぽを向いてしまい、何も言わなくなった。
『マズいな、この雰囲気は…」
知弘がそんな事を思った時、救世主が現れた。
雫である。
「あの…」
そっぽを向いていた2人は一斉に雫の方を向いた。
「「え、雫さん!?何か様?」」
「私もその輪の中に入れてもらえないかと…」
「いや、別に大歓げう、大歓迎だよ。」
即答したわりには惜しい所で噛む頼翔の癖はやめてほしい。
「どうぞ座って、知弘の隣は嫌だろうからこっち来なよ。」
「おい。それは酷いぞ。」
さらっと悪口を言ってきた。
「そうですね、私もそう思ってました。」
「雫!?」
「そりゃ正しいな。ハハハ。」
今日はなぜか2人のペースに巻き込まれている気がする。
「嘘ですよ、面白い方たちで安心しました。」
そう言って雫はにわかに微笑む。
後ろからものすごい視線がこちらを向いている気がする。
それは知弘たち、いや、2人は人気者なので知弘本人への嫉妬の目線か。
それとも雫へのラブコールか。
前者でない事を祈る。