ELGAMA #1 プロローグ
ここは、プレク村。
ピルミの中で1番と言っても過言ではないほど平和な国だ。
だが、どこにでも悪者はいる。
ピルミの北端に位置するレスボラには、真帝王が住むと言われている。
その昔、ある帝王が「真」の力に目覚め、真帝王になった。
前とは比べ物にならないほどの強大な力を持った真帝王は、次々と他の国を占領していった。
真帝王から他の国民を守るため、エルガマの守護神はレスボラと他の国の境に強力な結界を張った。
神の結界には真帝王も逆えず、真帝王の野望は崩れた。
そして、特に怠け者が多いピルミは、徐々に戦いというものを忘れ、戦力は非常に弱くなっていった。
そんなプレク村に生まれた少年、レイスは、のどかに暮していた。
「母さん、これ、採ってきたよ。」
レイスは、畑から採ってきた作物を自慢げに母に見せた。
「あら、ありがとうレイス、そこに置いておいて。」
母は嬉しそうにニッコリ笑って言った。
今年は豊作である。
こんなに採れるなんて滅多にないことだ。
去年の(※1)ラ・ビエンダの24デラごろは、ずっと不作だった。
だが、レイスの母は今からずっと昔の(※2)テンテルよりはまだ採れたほうだと言っていた。
テンテルの時はまだレイスは生まれてなかったため、詳しくは知らない。
「ねぇ母さん、テンテルの頃ってどんな感じだったの?」
どんな環境だったのかが分かれば、不作の理由が分かるかもしれない。
「テンテルの頃は、いろんなことがあったのよ…(※3)ボウアの反乱もあったし、気象がおかしくなもなったのよ、畑仕事どころじゃないでしょ?だから採れなかったのよ。」
それを聞いてレイスは納得する。
それは確かに畑どころではない。
「ほら、もう寝なさい。明日も収穫があるのよ。」
だいたい、作物は夜に採ることが多い。
明日は朝に採らないと品質が悪くなる作物なのだ。
明日の収穫、楽しみだな。
**
そして、その翌日。
プレク村は、収穫で賑わってはいなかった。
プレク村は、燃えていた。
真帝王が、侵略してきたのだ。
結界が張られているはずなのに、入れなかった、はずなのに。
それでも、真帝王は入ってきた。
誰も勝てない、真帝王が。
こののどかな村に、争いを知っている者はいない。
親はいなくなった。
レイスは1人だった。
どこに行っても、逃げ惑う者だけだ。
遠くに、微かな人影が見えた。
そして、その人影はこちらに来る。
青い目がキラリと光り、そこでレイスの意識は途絶えた。
〈用語解説〉
(※1)(※2)ラ・ビエンダ24デラ&テンテル…エルガマ大陸の時代を分けるときに使う単位。
古い物から、ジェリス→テイウル→オプオン→テンテル→ラ•ビエンダ、の順になっている。
(※3)ボウア…簡単に言うと巨人みたいな生物。テンテル54デラ〜62デラの間、ボウア達は自分たちへの人々の扱いについて反乱を起こした。
2話↓