ELGAMA #7 光雑法
丸腰でも構わなかった。
とにかくエリントに危害を加えたかった。
レイスはエリントに向かって飛びかかった。
エリントは即座に反応し、すぐさま剣を構えた。
剣が振り下ろされるが、レイスはかわした。
あまりにも上手く避けれたために、レイスは顔をニヤつかせた。
それが油断だった。
エリントが次に振り下ろした剣も、当たるギリギリで避けた。
________なんだ、強そうだったけど、大したことないじゃないか______
すると、エリントは、少し変わった構え方をした。
今までは、両手で剣を持ち、前に向かって傾けた構え方だった。
だが今は、両手で剣を持つことに変わりはないものの、目を瞑り、前に剣を傾けることはせず、逆に額に当てるような構え方をしていた。
そして、斬るときの剣の方向が縦ではなく、横になっていた。
レイスは、振り方が変わっただけで、後ろに下がればなにも問題はないと判断した。
レイスは気付かないうちに、重大な油断をしていた。
________もしかしたら当たっても大丈夫なのではないか?_____と。
いつもならこんなに油断することはない。
気を抜くこともない。
ましてや当たっても大丈夫、なんか思ったことはない。
だが、レイスはエリントの挑発に完全に乗ってしまっていたのだろう。
エリントの攻撃を、レイスはただじっと見るだけだった。
普通の攻撃だと思った。
だが、レイスに近づくなり、剣は燃え上がる炎を纏った。
溶けそうな温度を間近で感じたレイスは、攻撃の恐ろしさに気づき、避けようとした。
だが、時すでに遅し、炎の剣はレイスの横腹に勢いよく当たった。
熱かった、まるで横腹に火がついたようだった、というか、ついた。
剣の衝撃もあり、レイスは草原に転がった。
草の匂いが鼻を伝った。
「バカだねぇ、なんで避けなかったんだい?君、(※1)光雑法を知らないんだろう?難しい原理だから、平和主義でおバカさんなピルミ人は理解できないんだね。」
エリントは嘲笑しながら言う。
エリントの言う通りだった。
________エリントの作戦にまんまとハメられたのだ____
「痛いだろう?熱いだろう?今僕が楽にしてあげるよ、きっと両親のもとに行けるよ?」
レイスは後ずさった。
「そして、か弱いか弱いプレク村人たちのもとにも、ね。」
エリントはこれでもかと剣を振り上げた。
剣の先に雷電が迸るのが見えた。
エリントは、冷たい顔をしていた。
冷酷で、その眼はどこか、レイスへの降り積もる殺気へと満ち溢れていた。
エリントが剣を振り下ろす。
ヒュッという音と共にパチパチという雷電の音が耳を劈く。
レイスは目をギュッと閉じた。
________死を覚悟して。
そのとき、
剣の音とは違う、ヒュッという音が聞こえ、カランカラン、となにかが落ちる音がした。
恐る恐る目を開ける。
目の前でエリントと睨み合っていたのは、白い体表にエメラルドグリーンの角を生やしたドラゴンだった。
「こ、これは…」
エリントが唖然としてドラゴンを見つめていた。
「ア、アケラ、ル…まさか…そんな……」
エリントは先程から一変、絶望に満ちた表情を浮かべていた。
「(※2)アケラル…このドラゴンが?」
レイスは呟いた。
これが、真帝王の探していたアケラルなのだろうか。
「後継者がお前だということは、お前を倒して、真帝王さまのところに持っていけば、どんなに喜ばれることか!そして、真帝王さまはアケラルの力を使って、エルガマ大陸を全てレスボラに統一されるのだ。」
エリントは目の前のドラゴンを見て目を輝かせていた。
________止めなければいけない、必ず_____
レイスは意識をドラゴンに集中させる。
すると、ドラゴンは語りかけてきた。
《あの少年は、忠誠心という殻を被った洗脳にかかっている。》
________じゃあ、どうすればいいの?敵だからって見逃せないよ。
《それは、レイス、君次第だ、救うこともできるが見逃すこともできる。どうしても見逃さないといけないときは必ずある。》
________いや、見逃さない、いくら心の奥深くだからって、真帝王のせいで傷つくなんてことさせない。
ドラゴンの静かに吹き出すような声が聞こえた。
《それは、もっともなご意見だな。》
レイスは目を開けた。
レイスの心には、勇気が満ち溢れていた。
〈用語解説〉
(※1)光雑法…光は、目に見えない粒の集まりで出来ている。光のあるところには必ず光と光が交わるところがあり、光と光の粒同士が擦れることによって、全ての物体を作り出す物体(ツフリオン)の素ができる。ツフリオンの素(フルオニウム)を割り、ツルギオンという成分と合わせると、ツフリオンになる。ツフリオンは衝撃を与えると衝撃の与え方に対応した物体に変わる。一度変わったものは戻らない。これらを【デリオウスレンの変化】という。光雑法はこれを利用して炎などを作り出して攻撃する方法だ。
(※2)アケラル…ピルミのプレク村に古くから伝わる、秘伝の力。白きドラゴン【アケラル•ヒュレルクアン•ドラゴン】を召喚し、操って攻撃する。使うほど威力は弱くなる。
〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
😅デリオウスレンの変化をもっと知りたい人がいたらこちらに(笑)↓
https://tohyotalk.com/question/240839
(´・ω・`)理科60点の中1男子が空想の世界で原理を作っちゃったっていうw
〈〈〈〈〈〈〈〈〈注意〉〉〉〉〉〉〉〉〉
この原理は実在しませんので、そこんとこよろしく。
ちなみに真帝王は(マテイオウ)と読みます。
レイスっていう名前は、消しゴムの英語名「イレイサー」を「イレイスァー」にして「い"レイス"ァー」になって、決まりましたw
スルは鉛筆の英語名「ペンスル」の「スル」です。
あとがきは書いてみたかったから書きました〜。
次回も頑張って書くんでよろしく!
8話↓
あとがき嬉しい派♪
そうだよね、最初からキメテくるより油断しちゃったりしつつ成長してくんだよね…っ
そしてドラゴン来たぁ!
>>10
ちょっと山場になって来てるからね。
あ、そういやいつから入れ替わったか次話で答え合わせするけど、分かった?