ELGAMA #8 エリント

5 2021/12/06 16:47

「なんのつもりだ?あんなに傷を受けていながら立ち上がるとは。」

エリントが言う。

 彼の目に、自己はないだろう。

虚ろで、目の奥の光が消えている。

 

「なんで黙ってるんだ?なにか言えよ。」

エリントが腹を立たせて言うが、レイスはそれでもなにも言わなかった。

「ふぅん、そんなに僕に殺されたいんだ、安心して、きっと地獄に落としてあげるよ。」

エリントはよろよろとした動きで剣を構えた。

 エリントが剣を少し振ると、剣にたちまち火がついた。

レイスが構える間もなく、エリントは剣を振りながら飛びかかってきた。

 レイスは即座にドラゴンを操り、レイスの前にゆらゆらと漂わせる。

 エリントはそのままドラゴンを斬ろうとしたが、カーンという音がなり剣は弾かれ、エリントは空中で大きくのけ反った。

「っ!思ったよりも硬いじゃないか。」

 レイスはドラゴンに問いかけた。

________なにか必殺技みたいなのはないの?

《ないわけではない。アケラルフラッシュだ。だが、威力が高すぎる、あの少年ごとき、消し飛んでしまうだろう。》

[消し飛ぶ]、その言葉を聞いて、レイスはたじろいだ。

あいつは敵だ、あいつは敵だ、と何度も何度も自分に言い聞かせた。

 だが、どうしてもその技を打つ気にはなれなかった。

いくら敵でも、殺すことはできなかった。

________殺さない程度に打てないの?

《少し端の方になら、当たっても重傷で済むだろう。》

________なら、そこが当たるように狙うよ。

《難しいが、できないことはない。》

 レイスは意識を集中させた。

エリントは攻撃を仕掛けに来ていた。

 上手くタイミングを狙わなければいけない。

少しでもズレたら、エリントの命はないだろう。

 エリントがジャンプする。

レイスには、世界がスローモーションになったような気がした。

 エリントが剣を振り下ろしながらゆっくりと降下してくる。

________今だ!

レイスの背後にいたドラゴンが、口から極太のアケラルフラッシュを発射した。

エリントが目を見開いた、そして、ビームに飲まれ、見えなくなった。

 少し中央に寄ってしまったようだ。

 ビームは真っ白で、近くにいるだけで溶けてしまいそうなくらい熱かった。

レイスは、膝から崩れ落ちた。

 やってしまった、殺してしまった。

タイミングが合わなかった。

 極太のビームは、今尚止まることなく、まるで1本の糸のように奥に続いていた。

ビームが消えたとき、エリントのいた辺りは、すっかり黒焦げていた。

 エリントは、倒れていた。

眠ったように、穏やかに。

顔の所々は草の墨で汚れ、服も所々焦げていた。

 敵だった、たしかに、彼は敵だった。

だが、殺してはいけなかった。

《仕方がない、生物はいずれ死んでしまうものだ。レイス、其方は悪くない…》

ドラゴンが静かに語りかけるが、レイスの心は落ち着かなかった。

 そのとき、レイスの頭に疑問が浮かんだ。

何故、草も服も焦がすような光線に当たって、体に異変はないのだろうか。

 皮膚だって所々焼け落ちる筈だ。

そのとき、エリントの服のポケットから青い光が出てきた。

 その光はエリントの体の上を飛び回り、体に浸透していった。

エリントの体がピクッと動いた。

そして、むくりと起き上がった。

 傷も癒えている。

レイスが唖然として見ていると、エリントは、レイスの方を振り返った。

「やぁ、レイス。」

そして、元気にこう言った。

「な、なんで、ビームに当たったのに…」

「あぁ、ビームかい?たしかに、当たった、痛かったよ。僕は一回死んじゃったもんね。クフツユの加護があってもね。」

エリントの言葉の中に意味が分からないものが少なくとも2個あった。

「死んだのに、生き返ったの?その、クフツユで?」

「あぁ、クフツユを持っていると、受けるダメージを軽くしてくれるんだ。炎に当たっても焼けなくなったり。そして、死んじゃっても生き返れる。」

そんなに強いものがあったのか、とレイスは驚く。

「でも、君のその光線…アケラルフラッシュだったかな、は強すぎた。クフツユの効果でダメージを軽減しておきながら殺されたからね。」

そこで、レイスはある疑問に気づく。

 なぜ、エリントは敵同士で、しかも殺された相手にこんなにも教えてくれるのだろうか。

「君、なんでそんなに教えてくれるの?しかも、殺したのに。」

すると、エリントは怪訝そうに顔をしかめて言った。

「君、『本気で』殺そうとした訳じゃないだろ?君が角度を調節して、死なないように打ってくれたのも分かってる。」

「それで、なんかこういう弱い者いじめするってのも飽きたしさ、たまには裏切っても仕事をサボってもなにも問題はないよ。」

レイスは「問題だらけでしょ。」と突っ込みそうになったが、やめた。

「ほら、早く行こうぜ。」

「え?どこに?」

エリントはわざとらしくため息をして言った。

「真帝王のやつに1発仕返ししに行くんだろ?ギャフンと言わせてやろうぜ。」

さっきの態度とはものすごい違いだ。

「えっでも君は真帝王戦恐団なのにそんなこと言っていいの?」

エリントはニッと笑って言った。

「なんか、面白そうだしさ、君について行くことにしたよ。別にいいだろ?君1人じゃエルガマから移動することもできずに死んじゃうよ。」

「いいけど別に…」

レイスは前を走って行くエリントの背中を追いかけて走り出した。

9話↓

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その他2021/12/06 16:47:31 [通報] [非表示] フォローする
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2: 俄雨 @niwakaame 2021/12/08 23:21:24 通報 非表示

エリント意外な思考の持ち主だった


>>2
仲間になりました


4: 俄雨 @niwakaame 2021/12/10 22:33:16 通報 非表示

>>3
裏切りとか、これから増えるであろう仲間とか、わくわく


>>4
どっちだろうねw


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