幸せとか不幸とか 3話
走馬灯を見た。
誰かが私に優しく笑顔をむけた記憶はなかった。
見えたのは私を迷惑そうに見る親と、ずぶ濡れになった私を嘲笑う人達だった。
走馬灯って感動こんな感じなんだ。
ピッピッピッ…
目が覚めた。
信じてなかったけど天国ってあるんだ。
いや、地獄かな。
体中が痛い。
…まさか。
体を無理矢理起こした。
ああ、私死ねなかったんだ。
ここは病院だろう。
つくづく付いていない。
あの高さでは死ねないものなんだな。
せめて記憶喪失にでもなっていたら。
ふと、右を見ると机の上に置いてある四枚の手紙と花瓶。
手紙には【安藤さんへ】【雪へ】など書かれていた。
差出人は学校で最後に見た人達だった。
小学生の時の記憶を思い出す。
教師が来た瞬間、私達仲良いですよと言わんばかりに急に抱き着いてきたさっきまで私に爪を立てて傷を付けた人達。
大人がこんなのに騙されるなんて。
手紙を破り捨てた。
花瓶を見た。
下に紙がある。
──雪へ──
早く目を覚ましてほしいな。その時は一緒に買い物でも行こうね。
──お母さん、お父さん──
その瞬間、花瓶が割れる音がした。
───飯?なんであると思ってんの?
───ちょ、邪魔。消えてくんない
もう嫌だ。嫌だ。
───うっわ安藤じゃん、最悪~
───死ねば?
色んな声が1度に聞こえてくる。
病室の窓へ向かう。
頭が朦朧する。
早く、早く。
その時、扉が開く音がした。
「安藤さん!?」
生まれてきてしまって、
『ごめんなさい』
また、意識を手放した。
【続く】
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