[小説]夏色 第二話「困惑と兄」

6 2022/03/12 19:06

一話:https://tohyotalk.com/question/302835

「おかえり、海空」

凪が本から少し顔を上げてそう言った。

まるで何も無かったかのように。

その様子に海空は混乱した。

私、家から逃げ出した・・・んだよね?

最早海空ですらさっきの出来事は夢ではなかったのかと疑う位、凪は冷静だったのだ。

「ね、ねぇ貴方は一体・・・」

「ん?俺?俺は凪。今日から海空の”お兄ちゃん”にあたるよ」

”お兄ちゃん”・・・?お母さんが言っていた通りだ・・・

慣れない言葉に動揺している海空に気づいたのか凪は本をパタンと閉じて

「俺の事はまだ”お兄ちゃん”って思わなくていいよ。海空が俺の事を兄だと認めてくれるように頑張るから」

と優しい笑みを浮かべそう言った。

「・・・私も貴方を兄と呼べるように頑張るね」

そうたどたどしく答えた海空は凪が嬉しそうにしていることには気付きはしなかった・・・

「お母さんは、どこに行ったの」

「海空を探しに行った。けど入れ違いで帰ってきたんだ」

入れ違い・・・?ってことはお母さんはまだ私を探してるってこと・・・?

そのうち警察でも呼ばれたらどうしよう

と、自然と不安を抱いてしまう。

「ど、どうするの?お母さんに伝えないと」

と慌てる海空に対し、凪は全く動揺せずむしろ冷静に首を横に振った。

「すぐ帰ってくるって、もう晩飯食べようよ」

「え・・・でも・・・」

海空は不安そうな表情で凪を見つめた。凪は冷蔵庫から食材を取り出したりしている。

ガチャ

すると凪の言った通り、両親が帰って来たのであった。

「はぁ・・・警察に電話をかけようかしら・・・あっ!海空⁉」

母は形相を変えて海空に駆け寄ってきた。

「お母さ・・・」

「ごめんなさい・・・」

海空は目を丸くし驚きを隠せない様子だった

「貴方にもちゃんと言わなくちゃね。新しい家族の事」

そう言って母は海空を優しく抱きしめた・・・

続く

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タグ: 夏色 二話 困惑

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その他2022/03/12 19:06:51 [通報] [非表示] フォローする
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凄い。 続き楽しみ


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